天然ガス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
天然ガス(てんねんガス)とは、天然に産する有機ガスで化石燃料のひとつ。
目次 |
[編集] 概要
主成分はメタンで、他にエタン、プロパン、ブタンなどを含む。産地によって異なるが水分、二酸化炭素、硫化水素などの不純物を含む。自動車、火力発電所などの燃料や工業製品の原料に利用され、燃焼したときの二酸化炭素排出量は石油より少ない。10~15m³のガスから1L程度のガソリンが採取できるものを湿性ガス(wet gas)、そうでないものを乾性ガス(dry gas)と呼び区別する。
身近なものでは、都市ガス12A・13Aである。
2002年末現在、世界の天然ガスの確認可採埋蔵量は約155.8兆立方メートル(5501兆立方フィート)といわれており、国別には旧ソ連が一番多く、イラン、カタールなどがそれに続く。 今後採鉱が盛んになることで、確認可採埋蔵量の増加が期待されている。
天然ガスはガス田で生産されるか、油田において石油随伴ガスとして副産される。深海底に存在するメタンハイドレートは、採掘技術が確立されていないため現時点では未利用資源に留まる。
輸送方法には大別して2つある。1つがパイプラインによる気体での輸送で、1930年代頃からアメリカで行われており、現在ではロシアから東欧へ、北アフリカから南欧への天然ガス輸送に使用されている。そしてもう一つがLNGタンカーによる液化天然ガスの輸送で中東や東南アジアから日本への輸送に多用されている。
なお、LNG船の海難事故は極めて少なく、大規模なガス爆発やガス漏洩を含む環境破壊事故は一度も発生していない。
[編集] 液化天然ガス (LNG)
液化天然ガス(LNG, Liquefied Natural Gas)とは、天然ガスを-162℃に冷却し液体にしたもの。LPGと異なり常圧で液体である。体積は気体の1/600しかない。輸送・貯蔵を目的として液化される。
LNGを利用するためには、ガス井、パイプライン、液化プラント、LNGタンカー、受け入れ設備、気化設備などLNGチェーンと総称される一連の設備が必要である。
産地により、成分は異なるが、主成分はメタンである。
用途としては都市ガスや化学工業の原料、火力発電所の燃料などに利用される。LNGによるガス焚きの火力発電は各電力会社の主力となりつつあり、東京電力は東事業所の中核発電所である袖ヶ浦火力発電所に東京ガスと共同で大型のLNG受け入れ施設を建設した。その主要な設備は三菱重工が建設した巨大な地下式断熱LNGタンクである。また副次的に冷熱を利用した業務用冷凍庫が存在する。
天然ガスを液化する際には前段として脱硫・脱水等をおこなうため、LNGを燃料として燃焼させた時には硫黄酸化物の排出がまったくないという点は特長といえる。
またその他の特徴として、揮発性が高く常温では急速に蒸発し、常温では空気よりも軽いので大気中に拡散することが挙げられる。
この点では、常温では空気より重く低い場所に滞留しやすいプロパンやブタンガスに比べて安全性が高いが、主成分であるメタンの地球温暖化係数は、「21」と大きいため、大気放出は避ける必要がある。
[編集] LNG受け入れ基地
- 東新潟基地(東北電力)
- 港基地(仙台市ガス局)
- 根岸基地(東京ガス・東京電力)
- 扇島基地(東京ガス)
- 東扇島基地(東京電力)
- 袖ヶ浦基地(東京ガス・東京電力)
- 富津基地(東京電力)
- 袖師基地(静岡ガス)
- 知多LNG共同基地(東邦ガス・中部電力)
- 知多基地(中部電力)
- 知多緑浜基地(東邦ガス)
- 四日市基地(東邦ガス・中部電力)
- 川越基地(中部電力)
- 泉北I基地(大阪ガス)
- 泉北II基地(大阪ガス)
- 姫路製造所(大阪ガス)
- 姫路LNG(関西電力
水島基地
[編集] 圧縮天然ガス(CNG)
圧縮天然ガス(CNG, Compressed Natural Gas)とは、高い気圧で圧縮された天然ガスのこと。環境に優しい自動車の燃料として注目を浴びるようになった(詳細はCNG自動車の項を参照)。
[編集] 天然ガスをめぐる紛争
- インドネシア: アチェ(アチェ独立運動)
- イエメン、エリトリア: ハニーシュ群島紛争
- ボリビア国内: ボリビアガス紛争
- 日本、中華人民共和国: 東シナ海ガス田問題
- ロシア、ウクライナ: ロシア・ウクライナガス紛争