小田急2100形電車
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小田急2100形電車(おだきゅう-がたでんしゃ) とは、小田急電鉄がかつて保有していた通勤形電車の1形式。制御装置から趣味的及び会社内部でABF車[1]と呼称されていた。
目次 |
[編集] 概要
小田急電鉄2100形電車 | |
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営業最高速度 | 95km/h |
設計最高速度 | 95km/h |
編成定員 | 260(100)人 |
全長 | 35140mm |
全幅 | 2800mm |
全高 | 4090mm |
編成重量 | 59.7t |
軌間 | 1067mm |
電気方式 | 直流1500V |
編成出力 | MB-146-CF 93.3kW×4=373.2kW(1M1T) 全負荷速度(全界磁/弱界磁)62/74km/h・牽引力2180/1870kg |
駆動装置 | 吊掛け式(歯数比:56:27=1:2.07) |
制御装置 | 直並列複式制御器(ABF) |
ブレーキ方式 | 電磁自動空気制動機(AMMR-L/ACMR-L) 手用制動機 |
保安装置 | なし |
1954年に車体・台車の軽量化を図った車両としてデハ2100形とクハ2150形の2両固定4編成が製造され、編成重量は59.7tと2200形の61.0tと同等である。逆に制御・制動装置についてはさらに検討をすることとして従来と同様の装置を採用しており、外観は2200形などのABFM車と区別がつきにくいものとなっているが、機器類は従来のものを踏襲しており、運用上もABF車に分類される。
[編集] 仕様
[編集] 車体
- 車体は従来あった窓上下の帯をなくしたノーシル・ノーヘッダーかつ張上げ屋根の近代的なものとなり、窓も990mm幅の大きなものとなった。窓扉配置が当時の関東私鉄の18m標準のd1D(1)2D(1)2D(1)のロングシート車である。
- 2101、2102の編成は川崎車輛製、2103の編成は日本車輛製造製、2104の編成は東急車輛製造製であり、2101、2102の編成は屋根のRが深く、2103、2104の編成はドアが軽合金製であるなどの差異があった。
- 窓枠は正面・側面とも木製で正面については後のHゴム支持化後も枠が残り、外付けの標識灯とともにABFM車との識別点となっていた。
- 車体外観は後のABFM車と同等であるが、扉間隔が70mm長く、逆に窓幅が10mm、扉間のロングシートの長さが30mm短く、天井高さは40mm低いなど詳細については異なる部分があり、定員も異なる。
- 室内も新技術を採用し、車内の壁の吹き寄せは塩化ビニール鋼板張り(川車製2編成)とアルミデコラ張り(日車・東急車輛製各1編成)の2種類があり、塗装もその後の標準となる薄緑系のものとなった。また、室内灯は1700形に引続き交流蛍光灯となっていた。
[編集] 制御器・主電動機・台車
- 制御器、主電動機は1900形などと同じABFとMB-146-CFの組み合わせであり、ギヤ比も変更なく2.07であった。
- 台車は軽量化を図った住友金属工業FS-14軸バネ式鋳鋼台車を使用して軽量化を図っていた。
- ブレーキ装置は従来のM三動弁によるAMMブレーキから中継弁を付加してブレーキ力を増加させたAMM-Rとなり、方式こそ自動空気ブレーキであったが個別の部品単位では一新されており、2200形以降で採用されたHSCへのステップとなっていた。
- 補機は末期の時点では、電動発電機がクハ2150形の奇数車にCLG-107BCが2台[2]と電動空気圧縮機がデハ2100形にD-3-Fが1台ずつ搭載されいていた。
[編集] その他
- 車体色は登場時の茶色一色から、1963年以降ABF車が旧特急色となった際に旧特急色なり、最終的には1969年以降に現行の塗装となっている。
- この車両はSE車のための各種試験にも使用され、1956年には警笛の試験が、1957年にはクハ2151でディスクブレーキの試験が行われた。
- 順次正面行先表示幕の取付や正面窓のHゴム支持化、側面窓のアルミサッシ化、扉の交換などの更新が行われ、1969年にはATSの取付(全車)と、2101・2103・2152・2154の前照灯の2灯化が行われたが、ABFM車と異なり正面種別表字幕は最後まで取付られなかった。
- 比較的早い時期から2101、2102の編成と2103、2104の編成で編成を組んでおり、中間が棒連結器となっていた他、電動発電機もクハ2150形の奇数車に2台まとめて搭載されるなど固定編成化がなされていた。
[編集] 運行
2100形単独または他のABF車と組んで2~8連で全線で使用され、シートにカバーをつけて準特急として使用されることもあった。晩年には開業したばかりの多摩線でも使用された。
[編集] 廃車
1975年に廃車され、主電動機が4000形に、台車がデニ1000形とデニ1300形にそれぞれ転用された。
[編集] 譲渡
デハ2104とクハ2153、2154の車体などが西武車両で改造の上、三重県の三岐鉄道へ譲渡されたが、1990年~1991年に全車廃車となった。
[編集] 注記
- ^ ABFは三菱電機の直流電車用自動加速形制御装置の形式名で、本来は三菱電機の提携先であるアメリカ・ウェスティングハウス・エレクトリック(WH)社製制御器の形式名に由来し、A:自動加速 B:低圧操作電源 F:弱め界磁を示す。
- ^ それぞれAC200V・2.5kVA、DC100V・1.5kW。
[編集] 関連項目
- 小田急電鉄の車両 (■カテゴリ) ■Template ■ノート
- 特急用車両
- ロマンスカー専用車両
- 一般用車両(吊り掛け駆動車)
- 一般用車両(高性能車)
- モノレール
- 非旅客用車(事業用車)