小田急10000形電車
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10000形電車(10000がたでんしゃ)は、小田急電鉄の特急形車両(ロマンスカー)。愛称は「HiSE(High-decker/High-grade/High-level Super Express)」。1988年度鉄道友の会第31回ブルーリボン賞受賞。
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[編集] 概要
小田急開業60周年記念車両と21世紀に通用する次世代特急形車両として、1987年(昭和62年)に11両1編成(11両)、1988年(昭和63年)に11両1編成(11両)、1989年(平成元年)に11両2編成(22両)がそれぞれ製造された。7000形「LSE」の基本的構造を踏まえながら、展望席以外の部分が床面の高いハイデッカー構造を採用した。第1・第3編成は日本車輌製造、第2・第4編成は川崎重工業がそれぞれ製造を担当した。
なお、小田急ロマンスカーといえば「展望席」を連想する者が多く、2001年ごろより50000形「VSE」の登場までは、「小田急ロマンスカーのイメージリーダー」として、広告等にも使われていた。
[編集] 車体構造
編成構成はMT比9M(電動車)2T(付随車)の連接式11連である。3100形「NSE」・7000形「LSE」に引き続き「展望席」を設置し、展望席前面の傾斜角度を37°までにすることにより、シャープなイメージを醸し出している。
[編集] 外観
従来の小田急ロマンスカー(オレンジバーミリオンとシルバーグレーに白色帯)と一線を画した「パールホワイトとワインレッド(オーキッドレッド)」の車体塗装を採用した。7000形「LSE」についても、後年車体更新を施工した際にこの塗装に変更した。列車愛称表示器は、両先頭車の扉上部に移された。
[編集] 車内
前述したが、床面の高いハイデッカー構造を特徴とする。7000形「LSE」に対して41cmアップ(2ステップ分)となっている。 座席はリクライニング機構の採用が見送られたものの、形状や硬さを見直し、新宿~箱根湯本間1時間25分の旅を快適に過ごせるレベルに仕上がっている。具体的には、7000形「LSE」の簡易リクライニングシートをリクライニングさせた状態で固定しているもので、新宿駅などで7000形「LSE」と10000形「HiSE」が並ぶと、その差が分かる。
しかし、最終的な座り心地より「リクライニング機構があるかどうか」を重視する向きも多く、そういう意味では同年代に登場したJRや私鉄他社の特急車両と比較すると見劣りするのは否めない。その一方で、2次車では座席背面に収納式テーブルが設置されており、特に通路側席の居住性を評価する意見もある。
日本車輌製の編成は座席モケットの色が1~3・9~11号車は赤色系、4~8号車は青色系となっており、逆に川崎重工製の編成は1~3・9~11号車は青色系、4~8号車は赤色系となっている。展望席は、1次車は青色と赤色の座席が両方とも設置されていたが、2次車ではどちらか一方となっている。
昭和末期から平成初期にかけて製造された車両ではあるが、座席の壁面テーブルの下に栓抜きが設置されている。(当時既に飲料は缶や栓抜き不要で開栓できるものが主流になっていた)
また、売店や便所の設置箇所は7000形LSEと同じであるが、当時の最新の設備を装備していた。「走る喫茶室」のオーダーエントリーシステムも、そのうちの一つであった。
小田急電鉄では初めて、「ラジオ受信システム」が採用された。
[編集] 車内案内
- 座席定員:432名
- 号車番号/設備他
- 1/運転室(2階)・展望席(14席)・禁煙席(32席)・車掌室
- 2/禁煙席(44席)
- 3/禁煙席(28席)・車内販売カウンター
- 4/禁煙席(32席)・男女共用洋式便所・男子小便専用便所・公衆電話
- 5/禁煙席(44席)
- 6/禁煙席(44席)
- 7/禁煙席(44席)
- 8/禁煙席(32席)・男女共用和式便所・男子小便専用便所
- 9/禁煙席(28席)・車内販売カウンター
- 10/禁煙席(44席)
- 11/運転室(2階)・展望席(14席)・禁煙席(32席)・車掌室
なお、2007年3月17日まで、6~8号車は喫煙席であった。
[編集] 車内設備改良工事
1999年(平成11年)に、車内設備改良工事が実施され、空気清浄機の設置と便所の処理方式を循環式から真空式に変更した。また、2001年(平成13年)には、便所内にベビーベッドを設置した。
[編集] 運用
30000形EXEの登場した1996年(平成8年)3月以降、7000形と共通の運用に就いている。したがって時刻表の車両欄には「L/H」が表記されている。
10000形「HiSE」はハイデッカー構造のため、交通バリアフリー法の施行に伴い、それに適合させる為のバリアフリー工事もハイデッカー構造が仇となって困難な事や(同様にハイデッカー構造であるJR東日本251系電車(スーパービュー踊り子)は、デッキの多目的室で対応している)、車体更新時期が迫っていた事もあって、50000形「VSE」の運行開始を機に3編成が運用離脱した。離脱した編成のうち、2編成(10021F・10061F)が長野電鉄へ、残り1編成(10001F)が予備車として長期間運用を離脱していたが、現在は復帰している。
[編集] 長野電鉄への譲渡
前述したが、50000形「VSE」との入れ替えで運用を離脱した3編成のうち、2編成が2005年8月12日付けで長野電鉄に譲渡された。
2編成は、愛知県豊川市の日本車輌製造豊川製作所にて、4両編成に改修され、長野電鉄1000系という形式となり、2006年12月9日より、長野線長野駅~湯田中駅間の特急「ゆけむり」にて運転を開始した。これにより現在特急に運用されている2000系を置き換える。
なお、詳しくは、長野電鉄1000系を参照。
ちなみに、小田急の特急形車両としては、2300形、3000形「SSE」に続く譲渡例となる。但し、前者は通勤車両として譲渡された関係で実質的には2例目となる。
[編集] 長野電鉄譲渡に関する参考リンク
[編集] 歴史
- 1987年11月26日 第1編成(10001F)小田急線入線。
- 1987年12月4日 第1編成(10001F)竣工。
- 1987年12月16日 第2編成(10021F)小田急線入線。
- 1987年12月23日 第1編成(10001F)就役。
- 1988年1月1日の「初詣号」に使用された際には、深夜時間帯の運転であるにもかかわらず「走る喫茶室」の営業が行なわれていた。
- 1988年1月6日 第2編成(10021F)竣工。
- 1988年1月14日 第2編成(10021F)就役。
- 1988年9月11日 1988年鉄道友の会ブルーリボン賞受賞。新宿駅→小田急多摩センター駅間にて、受賞記念列車運行。
- 1989年6月19日 第3編成(10041F)小田急線入線。
- 1989年6月24日 第3編成(10041F)竣工。
- 1989年6月29日 第4編成(10061F)小田急線入線。
- 1989年7月4日 第3編成(10041F)就役。
- 1989年7月10日 第4編成(10061F)竣工。
- 1989年7月18日 第4編成(10061F)就役。
- 2001年4月24日~2002年3月 第4編成(10041F)が、「イタリアンエクスプレス」として運行され、イタリアの国旗をイメージした「赤・白・緑」のストライプを施した記念塗装となる。
- 2005年8月12日 第2・4編成(10021F・10061F)が、長野電鉄に譲渡される。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
小田急ロマンスカー |
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現行列車 |
「スーパーはこね」・「はこね」・「さがみ」・ 「えのしま」・ 「あさぎり」・ 「ホームウェイ」・ 「ニューイヤーエクスプレス」 |
現用車両 |
7000形「LSE」・ 10000形「HiSE」・ 20000形「RSE」・ 30000形「EXE」・ 50000形「VSE」 |
導入予定車両 |
過去の車両 |
1600形・ 1700形・ 1910形・ 2300形・2320形・ 3000形「SE」・「SSE」・ 3100形「NSE」・ キハ5000形・キハ5100形(御殿場線直通用) |