川谷拓三
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川谷 拓三(かわたに たくぞう、本名:仁科 拓三(にしな たくぞう)、1941年7月21日 - 1995年12月22日)は、俳優。高知県安芸市出身。A型。
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[編集] 来歴・人物
特に、任侠物での体あたりの演技は評価が高く、映画史上に確かな軌跡を残した。愛称は、「拓ボン」。悪役を演じた俳優で組織される「ピラニア軍団」の一人。仕事を選ばずにすぐ喰らいつく所から、同じ大部屋役者だった室田日出男らとともに「ピラニア軍団」と呼ばれた。長男仁科貴も俳優、長女仁科扶紀も女優である。妻の母は戦前の女優・岡島艶子。
1959年に美空ひばり主演「ひばり捕物帖 振り袖小判」で死体役としてデビュー。以降、通行人・殺され役などエキストラ的存在でしばらく苦しい時代を過ごす。特に死体役は多く、「仁義なき―」での役も含め後に「3000回殺された男」という評を得るまでになる。1960年代後半ごろから鶴田浩二の付き人となり、彼の主演映画で端役ではあるが必ず印象に残るチンピラを演じている。特に1972年「日本暴力団・殺しの盃」では岩尾正隆とともに冒頭、賭博場荒らしのシーンでぶっ飛んだチンピラを好演。刺されても撃たれてもなかなか死なずにのたうち回る演技(その分長く映るから)で印象を残す。
島田紳助司会のテレビ番組でもノーカット放送され、目に涙を浮かべながら思い出を語っていた。その後鶴田とはギャラの事や70年代半ばのピラニア軍団設立等の事で絶縁状態となるが、自身の死の数日前収録されたこの人この芸 鶴田浩二の司会を単独で務め、目に涙をためながら鶴田との思い出話を語った。この日収録スタジオで吐血しながらも収録に挑んだ芸人魂は凄まじいの一言。死んだ鶴田と自身の死が近いことに涙したものだと思われる。1972年に亡くなった川谷の兄が鶴田の大ファンで、死の数日前鶴田は川谷の兄の見舞いに同行しており、生涯「鶴田先生」と深作欣二は彼の恩師であった。
壮絶で体当たりの演技は「仁義なき戦いシリーズ」(菅原文太主演)などで次第に頭角をあらわし遂にポスターに名前が載るようになる。後に深作作品には欠かせないの存在となる。飲み屋で会った萩原健一から「俺、貴方のファンなんです。今度一緒に仕事しましょう」と声をかけられ、本人は半信半疑だったが、一週間後萩原から連絡があり「前略おふくろ様」に出演。「拓ボン」の愛称とともに、その笑顔からお茶の間の人気者に。また山城新伍との共演の「どん兵衛」のCMシリーズは、やりとりの面白さから10年以上のロングランとなった。
ピラニア軍団が注目され1976年、「河内のオッサンの唄」で映画初主演。続いて「河内のオッサンの唄 よう来たのワレ」、「ピラニア軍団 ダボシャツの天」に主演。
1979年、「さらば映画の友よ インディアンサマー」に主演。
1982年から1年間は、金八先生の後継として1年も続く連続ドラマ「3年B組貫八先生」に主演。
俳優として順風満帆に頭角を現していく様は東映大部屋俳優仲間の心の支えになった(後の名斬られ役、福本清三の著書から)が、心無い者からは疎まれもした。また、東映ニューフェイスでなかったが為、スターとなっても、その扱いは良くなかったらしい。
ただ、その笑顔に見られる明るさと、自分の苦労に裏打ちされた上下を問わない懐の深さでより多くの者が慕い、彼を支えていった。彼もまた、そのように振舞い、喜ばれることを心がけていたようである。それだけに、どん兵衛CMシリーズで共演し、当時『クイズ世界はSHOWbyショーバイ!!』などの出演で人気の絶頂にあった山城新伍に対しては、そのやさしい部分に多大な感謝をしながらも、時折見せる傲慢、不遜な態度に対し、厳しい批判をすることもあった。
その後も映画やドラマなどで存在感ある俳優として活躍していたが、肺ガンを患い、1995年12月22日、54歳の若さで死去。
ダウンタウンとは「ダウンタウンDX」で共演し、そのシャイで謙虚な人柄に意気投合(ダウンタウンの2人が「仁義なき-」の大ファン)、愛用の品を2人に譲るなど、深く親交を交わした。
また、死の直前に行われたTBS「オールスター感謝祭」にも出演、「やったろうやないけ」の掛け声の下、ミニゲームの競泳にも参加するなど、多くの出演者を呑み込む大活躍を見せ、司会の島田紳助を「川谷さんが死んでしまう~」と言わせるほど、感動させた(紳助も「仁義なき-」や、「河内のオッサンの唄」で川谷のファンであった)。
とにかく役者魂の凄まじさは半端でない。実際本物のやくざに因縁を吹っかけ、事務所に連れて行かれたこと数知れず、現代やくざ・血桜三兄弟で日本最初の火達磨役者であり、撮影中死にかけたこともある。
[編集] 出演映画
- 「旅に出た極道」
- 「仁義なき戦い 広島死闘篇」
- 「仁義なき戦い 代理戦争」
- 「県警対組織暴力」
- 「トラック野郎 望郷一番星」
- 「新仁義なき戦い 組長最後の日」
- 「トラック野郎 突撃一番星」
- 「首領を殺った男」
- 「ドカベン」 - 殿馬一人役
- 「河内のオッサンの唄」シリーズ -主演
- 「ダボシャツの天」 - 主演
- 「はるか、ノスタルジィ」
[編集] テレビ出演作
- 大都会 闘いの日々(1976年、日本テレビ・石原プロ) - 24話「急行十和田2号」ゲスト出演
- 黄金の日日(1978年NHK)杉谷善住坊役
- 新・座頭市 第3シリーズ(1979年、フジテレビ) - 5話「ふたおもて蝶の道行」
- 煙が目にしみる(1981年NHK)中々プロ棋士になれない奨励会員
- 3年B組貫八先生(1982年 TBS)神崎貫八役
- 山河燃ゆ(1984年、NHK大河ドラマ。共演:松本幸四郎 (9代目)、三船敏郎、津島恵子、柏原芳恵)川辺庄平役
- 火曜サスペンス劇場「密漁夫婦」(共演:泉ピン子。1986年、日本テレビ)
- スクールガール・セレナーデ 桂華學女小夜曲(共演:浅野温子、菊池桃子、三上博史、久我美子。1988年、日本テレビ)
- 風よ鈴鹿へ(1988年、TBS)千石清一役
- 花嵐の森ふかく(共演:若村麻由美、阿部寛、財前直見、大空眞弓。原作:高樹のぶ子。1988年、日本テレビ)
- 乱歩賞作家サスペンス「暗い光」(1989年6月、関西テレビ放送・東映)刑事役
- 歴史誕生「地球を測った男」(1991年、NHK)伊能忠敬役
- ドラマ新銀河・魚河岸のプリンセス(1995年4月~5月、NHK)
- 歴史ドキュメント・桜田門外の変(1993年、NHK)関鉄之介役
- 國語元年(NHK)
- 月なきみそらの天坊一座(NHK)旭日齋天坊役