戦闘糧食 I型
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戦闘糧食I型(せんとうりょうしょくいちがた)は、自衛隊で使用されているレーション。通称「カンメシ」。
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[編集] 概要
自衛隊が創設された1954年から採用された缶詰タイプの糧食で、レトルトパウチ包装タイプの戦闘糧食 II型が出た現在でも耐久性や保存性の面で優れているとされ、陸海空三自衛隊で使用され続けている。メニューは大きなご飯缶(およそ二合入っている・通称「カンメシ」)一つと、おかず、たくあんそれぞれ一つ(通称「オカズ缶」)で構成されるのが一般的である。
[編集] 外見
通常、側面が緑色に塗られており、内容が黒字で書いてある。貯蔵用のもので、無塗装のものもある。特に訓練用のものや災害救助派遣では、無塗装の物が支給される場合もある。これらの缶は大きさが工夫され、一番大きなご飯の空き缶の中に小さなオカズ缶の空き缶を重ねて入れることで、ゴミの減量化に伴う隠蔽性の向上が期待されている。(後述)
今日、一般に出回っている缶詰はプルトップなどの簡単に開けられる物が多いが、このI型では航空機から投下する際の衝撃に耐えられるよう、あえてプルトップを採用しないようになっており、このため開缶には別途アーミーナイフに取り付けられた缶切りなどが必要である。航空機投下ではもちろんパラシュートを用いるものの着地の衝撃は大きく、汁物の入ったレトルトパウチでは耐えることが出来ない点も、II型にI型が取って代わられることの無い理由となっている。
また、銃剣など他の装備を缶切りに使うと、それらが本来の使い方ができなくなる損傷・破損を起こす可能性を回避するためと、個別に缶切りなどの道具を持ち運ぶ必要をなくすために、小さな缶切りが缶の縁に付いている(すべての缶に付いている訳ではない)。この缶切りは、カンメシ24個1ケースに付き4個ずつ・オカズ缶48個1ケースにも4個ずつ、プレス加工の簡単な缶切りが付属しているという。この簡易缶切りは一つで25個以上の缶が開けられる耐久性がある。
- ただこの缶切り、どうしても数が少ないことから取り合いになりやすいこともあり、隊員の中には自前の缶切りを携行する者もいるようだ。
[編集] 内容物
ご飯缶は、冷えた状態では米がβ化しており固いだけでなく栄養として消化吸収できないので、湯煎してα化する必要があるため、通常配給前に一度湯煎する。一度湯煎すればβ化するまで数日間は、そのまま食べることができる。ご飯缶は五目御飯や赤飯・鳥飯などのバリエーションがあり、日本人には相性の良いメニューであると思われる。
おかず缶も主に醤油風味の味付けで、和食が充実したメニューである。ウインナー等の洋食もあり、一般的にレトルトの戦闘糧食II型より評判は良い。特に、たくあんの缶詰は隊員達には好評で、演習終了後酒の肴としても食せるためカンメシの傑作との評もある。全体としての内容は、成人男性が運動を行った場合に必要なカロリー(約1,800kカロリー)を元に構成されている。
オカズ缶ではこの他、コンビーフや牛肉大和煮などというバリエーションがあり、この辺りは「メニューを充実させることで兵員の士気維持を図る」という他国レーションと同種の工夫が見られるが、特に米飯に特化したメニュー構成というのは珍しい。この他、乾パンなどのような別メニューも存在する。
[編集] 扱い
陸上自衛隊の演習などにおいては、食べ終わった後、基本的に潰してから埋める事になっている。これは、空き缶の数から部隊の規模を推測されるのを防ぐためである。
なお、演習で使用されたレーションの容器はその使用による損傷が腐敗の原因となるおそれがあるため、回収および再使用されることはない。
官給品であるため、部隊外への持ち出し(自宅への持ち帰りなど)は禁止されている。このため、一般に入手することは基本的にできない。
2005年にはJIS改正に伴い缶詰サイズも変更になったほか、従来型の上面と底面にあったリムが、底面のプレス加工板金への変更に伴い、より接合部の少ない(強度の増した)缶詰へと変更された。
[編集] その他
- 乾パンは透明色の袋に黒字で「乾パン」と書かれており、水飴が添付されている。金平糖は赤み掛ったピンク・黄色・青・白の4色で、香味はついておらず、単純に甘い。
- 野外炊事車(野外炊具)がある。