教員の職階
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
教員の職階(きょういんのしょっかい)とは、学校において具体的に教員が担当する職の名称のことである。
教員の職階(職位)については、主に学校教育法(昭和22年法律第26号)によって定められている。教員の職階の体系には、大きく2種類あり、就学前教育・初等教育・中等教育を行う学校においての体系と、高等教育を行う学校においての体系がある。
目次 |
[編集] 就学前教育・初等教育・中等教育
この制度がとられる学校を列記すると、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校である。主な職階は、教頭、教諭、助教諭、講師であり、また授業を単一で行うことはないが、実習助手が含まれる場合もある。
- 教頭
- 教頭(きょうとう)とは、校長(園長)を助け、校務(園務)を整理し、および、必要に応じ、児童・生徒の教育、または、幼児の保育をつかさどる学校職員のことである(学校教育法第28条第4項・第28条第5項・第81条第4項など)。教頭は、校長に事故があるときはその職務を代理し、校長が欠けたときはその職務を行なう。教頭になるには、一定年数以上の教育の経験などがなければならない。副校長と称されることもある。
- 主幹 首席
- 東京都においては主幹、大阪府においては首席を置いている。学校教育法に無いが教育委員会が定めている。教師集団のリーダーであり、管理職を助ける役目をする。特に昨今激務となっている 教頭職の援助支援、校務の新たなる社会的変革によって生じた渉外活動などを担当する。それになるには、一定年数以上の教育の経験などがなければならない。教育委員会による試験もある。ただし管理職ではない。
- 教諭
- 教諭(きょうゆ)とは、児童・生徒の教育、または、幼児の保育をつかさどる学校職員のことである(学校教育法第28条・第81条第6項など)。教諭は、正規教員であり、各学校の種別に対応する教員免許状の普通免許状または特別免許状を有していなければならない。教育や保育をつかさどることを主たる職務とし、学校の管理運営上必要とされる校務の分掌も職務としている。
- 助教諭
- 助教諭(じょきょうゆ)とは、教諭の職務を助ける学校職員のことである(学校教育法第28条第10項など)。助教諭は、臨時教員であり、教員免許状の臨時免許状を有していなければならない。第二次世界大戦後間もない時期は、教員の数が足りず、積極的に用いられたが、その後教員を希望する人が増えたため、現代ではほとんど見られない職階になった。
- 講師
- 講師(こうし)とは、教諭又は助教諭に準ずる職務に従事する学校職員のことである(学校教育法第28条第11項など)。常時勤務に服する講師(常勤講師)と常時勤務に服さない講師(非常勤講師)に分けられ、講師は臨時教員であり、公立学校の講師なら1年を超えない期間の契約で勤務する。常勤講師は、普通免許状、特別免許状、臨時免許状のいずれかの教員免許状を有していなければならない。非常勤講師も同様の免許が必要だが、特別非常勤講師の場合は教員免許状がなくてもなることができる。
- 養護教諭
- 養護教諭(ようごきょうゆ)とは、幼児・児童・生徒の養護をつかさどる学校職員のことである(学校教育法第28条第7項など)。学校の保健室などを担当する教員である。養護教諭は、正規教員で、教員免許状の養護教諭の普通免許状を有していなければならない。
- 養護助教諭
- 養護助教諭(ようごじょきょうゆ)とは、養護教諭の職務を助ける学校職員のことである(学校教育法第28条第12項など)。養護助教諭は、臨時教員であり、教員免許状の養護助教諭の臨時免許状を有していなければならない。
- 栄養教諭
- 栄養教諭(えいようきょうゆ)とは、児童・生徒の栄養の指導及び管理をつかさどる学校職員のことである(学校教育法28条第8項など)。栄養教諭は、正規教員であり、教員免許状の栄養教諭の普通免許状を有していなければならない。
- 司書教諭
- 司書教諭(ししょきょうゆ)とは、学校図書館の専門的職務をつかさどる職のことである(学校図書館法第5条第1項)。司書教諭は、通常の教諭をもってあてられ、その教諭は、大学などで開講される司書教諭の講習を修了した者でなければならない(学校図書館法第5条第2項)。
- 実習助手
- 実習助手(じっしゅうじょしゅ)とは、実験または実習について、教諭の職務を助けることを職務とする学校職員のことである(学校教育法第50条第3項)。実習助手の配置については、法律である学校教育法上は任意設置であるが、文部科学省令である高等学校設置基準によればこれを置かなければならないとされている。教員免許状は必要とされないが、学校の規模や事情によって、教諭、講師らと同じく教員の一人として数えられることもある。
[編集] 高等教育
この制度がとられる学校を列記すると、大学、大学院、短期大学、高等専門学校である。 主な職階は、教授、准教授(助教授)、講師、助教、助手である。 私立大学では、助手より下位に相当するアシスタントとして副手なる職員がいるところもあるが、これは文部科学省に正式に届けられた教員ではない。
- 副学長
- 副学長(ふくがくちょう)とは、学長の職務を助ける学校職員のことである(学校教育法第58条第4項)。一般的に、教授もしくは専任事務職員の中から選ばれる。なお、法令に規定はないが、高等専門学校に副学長の制度に準じた副校長(ふくこうちょう)がおかれることもある。
- 学部長
- 学部長(がくぶちょう)とは、学部に関する校務をつかさどる学校職員のことである(学校教育法第58条第5項)。各学部の教授の中から選ばれる。教授の昇格職ではなく、教授という地位にある人の中から持ち回り的に選任されるのが普通である。学長の委任を受けて、訓告、停学、退学の懲戒処分を学生に対して行うことがある。学部を置かない高等専門学校にはない職階。短期大学は学部を置かないため学科長といわれる。短期大学部の場合短期大学部長と呼ばれる役職が置かれることがある。これらも学長の委任を受けて、停学ないし退学処分をくだすことができる。
- 大学院部長、研究科長や研究科委員長などもおおむね同様の権限を有していることが多い。
- 教授
- 教授(きょうじゅ)とは、学生を教授する教育職員のことである。特に大学(短期大学を含む)の教授は、学生への教授に加えて、学生の研究の指導や、教育や学術振興のための研究にも従事することとされている(学校教育法第58条第6項・第70条の7第4項)。大学の教授には、法令に規定されている3種の職務のうち、1つしか担当しない場合もあれば、複数を担当する場合もある。世間では高校までの教員を教諭、大学の教員は教授と呼ぶと勘違いされていることもあるが、教授は地位名称であり職種名称ではない。
- 准教授
- 准教授(じゅんきょうじゅ)とは、優れた知識、能力及び実績を有し、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事することを職務とする教育職員のことであり、日本では平成19年4月1日より正式に導入された。
- 助教授
- 助教授(じょきょうじゅ)とは、教授の職務を助けることを職務とする教育職員のことである。世界的に見て例の少ない職階であること、若手研究者の研究の障害となりがちなことを理由に平成19年3月31日をもってこの職階は姿を消した。
- 講師
- 講師(こうし)とは、教授又は助教授に準ずる職務に従事する教育職員のことである(学校教育法第58条第10項・第70条の7第6項)。一般的に専任の講師は、教授、准教授に次ぐ職位であり、人事上は准教授と専任講師が同じカテゴリーに属する扱いとなる(職階上は差がある)。また、専任講師は、教育や研究の事情に応じて、直接教授の職務を助ける場合もある(講座制を採る大学が少なくなった今日では表向きは稀である)。
- 講師には、専任である講師(専任講師)と専任でない講師(非常勤講師)がある。名前は似ているが職務内容は大きく異なり、准教授に準ずる仕事(研究や校務)をする専任講師に対し、非常勤講師は授業のみを担当し、拘束時間も授業時間のみである。
- 非常勤講師は基本的に年契約のパート労働者で、賃金も低賃金のため(これは元々他大学から学生に必要な教授をいわば無償に近いボランティアととして受け入れる形で始まったため)、昨今では私立大学文系や教養科目を中心に人件費圧縮の手段となっている。博士の学位取得者が過剰になったこともこの傾向に拍車をかけており、大学関係者の間では大きな問題となっている。一方で、国公立大学の法人化に伴う経営合理化や、私立大学の営利重視の運営などが原因で、非常勤講師の削減に動く大学も増えており(その分は専任教員の過剰な負担となる)、学位を持ちながら非常勤講師で生計を立てている者の立場を脅かす恐れがある。同時に学生の授業の選択肢が減ることから、大学本来の教育力の低下を招く危険性も否定できない。
- 助手・助教
- 平成19年3月31日までは、助手とは学校教育法上「教授及び助教授の職務を助ける」ことが職務であり、暗黙の了解として所属組織の運営が円滑に行われることを補佐することも業務としていた。しかし平成19年4月1日より学校教育法の一部改正により、「学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する」ことを職務とする助教と、「所属組織の教育研究の円滑な実施に必要な業務を行う」職務とする(新しい意味での)助手の二種類に分割されることとなった。
- 助手は、かつては博士の学位を取得することにより(あるいは業績を積むことにより)、講師以上に昇格することが多くの大学で慣例化していたが、最近は特に理系学部においては助手の採用段階で博士の学位を要求されることが多く、さらに任期付き採用の事例も増えている。また、実験を伴わない私立大学の文系学部では助手を雇用しない場合が常である。在職中に業績があがらず、任期切れに伴い解雇される事例もまれに発生している。一方、解雇にはならないものの、定年まで助手のまま昇格できない、いわゆる万年助手となる事例は国公立大学では少なからず存在するが、これは採用時に学位を要求されなかった時代の産物である。つまり現代では、助手から講師以上に昇格できるかどうかが、大学教員として生き残れるかどうかの明暗を分けるともいえる。このことは、博士の学位取得者が増えている現状では、成果主義に則った一見フェアな制度のように見えるが、講師以上の職階で任期制度が普及していない現状では、単なる若者いじめ、あるいは低賃金の助手の使い捨てにつながる危険性が指摘されている。
[編集] 高等教育における職階制度の問題
高等教育での職階制度は、教育研究機関の教育組織の中に強い階級制度をもたらす。学部長などの重要な役職に就くには、ほとんどの場合教授でなければならない。また、講座制をしいている場合は、それ以外に研究活動と教育活動の両面で教授が大きな権限を持ち、教授の能力や人格が講座の活動の成否や所属する教員と学生の人生までをも大きく左右する。教授は下位の教員に対して人事権を持つので、上司である教授との人間関係のトラブルが原因で、人事上の不当な扱いを受けるケースも数多く存在する(『白い巨塔』はそれを描いた小説)。なお、教授に昇格する条件のほとんどは、研究業績(それも論文の数など、質より量で量られることが多い)であり、教育者としての評価や人間性は無関係であることが多い。なお、中等教育以下では、公立の場合、教員のほとんどが教諭であるため、深刻な階級問題は存在しない。