短期大学
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短期大学(たんきだいがく)とは、修業年限(卒業までに最低限在学する年数)を2年または3年とする大学のことである。短大(たんだい)と略されることが多い。学校教育法では、「第六十九条の二第二項の大学」が正式な名称であり、それ以外の大学の修業年限は4年(ただし、特別の専門事項を教授研究する学部及び夜間において授業を行う学部については4年を超えてもよく、医学を履修する課程、歯学を履修する課程、薬学を履修する課程のうち臨床に関係する実践的な能力を培うことを主な目的とするものまたは獣医学を履修する課程については、修業年限は6年)としている。
修業年限が4年の大学に併設されている短期大学については、その校名に短期大学部(たんきだいがくぶ)という名称が使われることがある。ただし、法令上において「短期大学」と「短期大学部」は、同一に扱われ、両者とも1つの独立した学校として扱われる。
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[編集] 概要
短期大学は、深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成することをおもな目的としている(学校教育法第69条の2第1項)。
法的には大学の一種とされ、戦後の学制改革により戦前からの旧制専門学校が新制大学に移行する際に、大学設置基準に満たない学校が出たために暫定の制度とされたが、1950年に「当分の間」とされながらも制度化され、事実上恒久化された(90年代になって「当分の間」でなくなる)。1950年開学の短期大学は公立17・私立で132、合計149校となっている。1951年より名古屋工業大学短期大学部・京都工芸繊維大学工業短期大学部・九州工業大学短期大学部・長崎大学商科短期大学部の国立短期大学が4校設置された。
修業年限が4年の大学(法令上は、「大学(短期大学を除く)」と表され、「四年制大学」という用語は存在しない)と同一である事項も多いが、異なる事項もある。修業年限は2年または3年である。修業年限が3年の短期大学には、看護短期大学、衛生技術短期大学などがある。また、修業年限が4年の大学には学部・学科が置かれるのに対して、短期大学には学科のみが置かれる。
発足当初から短期大学に置かれている主要な学科は、英文学、日本文学、保育学、教養などの学科を中心とし、勤労者向けの夜間の経済学、工学の学科もあった。1990年代から、看護学、昼間の工学、福祉学の短期大学も増えてきた。
置かれている学科の専攻分野の性質もあり、短期大学は女子の進学先というイメージが強く、現在も依然として女子学生の比率が高い。しかし、1990年代後半から男子の学生も、わずかではあるが増えつつある。現在、日本で唯一の男子短期大学として東洋食品工業短期大学包装食品工学科が兵庫県川西市にある。なお、過去には関西大学短期大学部商工経営科I部・II部(募集は1950~1955年度まで)のように男子学生のみの短期大学もあったようだ。
1985年に男女雇用機会均等法が制定され「一般職」と「総合職」という二つの形態が生まれると、短期大学は女子の役職である「一般職」に就職しやすいためにバブル期には女子の進学先の定番となった。平成六年には在学者数がピークを向えたが、女子の高学歴化による四年制大学志向から年々在学者数は減少している。よって最近は女子短大が共学化したり、共学の四年制大学に移行する場合もある。
なお短期大学の卒業者には、2005年度よりこれまでの準学士の称号から、短期大学士の学位が授与されている。
[編集] 今後の短期大学
学生数の減少で、高等教育においては、大学崩壊、大学倒産などが警戒され始め、短期大学ではその懸念が特に強い。日本の短期大学を今後どのように発展させるかが、文部科学省の中央教育審議会大学部会などでも話題になり始めている。アメリカ合衆国のコミュニティ・カレッジが、現行の日本の短期大学にその性質がよく似ているので、それに類した、教養や資格取得のための短期の一般教育や専門教育を行い、卒業者の大学への編入学枠を広げるという方向性についてなどが検討されている。
なお、1990年代に増加した、看護学、工学の学科の短期大学は看護師取得に必要な要件の変更や工場技術者の資質向上へのニーズから通常の大学の学科への改組が相次いでいる。
近年、廃止になった短期大学には下記のようなものがある。
- 2001年度
- 2002年度
- 道都大学短期大学部
- 東洋大学短期大学
- 神奈川大学短期大学部
- 長岡短期大学
- 洗足学園魚津短期大学(富山県魚津市)
- 愛知淑徳短期大学
- 岡崎学園国際短期大学
- 四日市大学短期大学部
- 甲南女子大学短期大学部
- 近畿大学青踏女子短期大学(和歌山県和歌山市)
- 広島県立保健福祉短期大学
- 熊本音楽短期大学
- 熊本学園大学短期大学部
- 2003年度
- 駒澤大学苫小牧短期大学
- 仙台白百合短期大学
- 清真学園女子短期大学(茨城県鹿嶋市)
- 明の星女子短期大学(埼玉県さいたま市)
- 国士舘短期大学
- 慶応義塾看護短期大学
- 東京女学館短期大学
- 武蔵野美術大学短期大学部
- 東京理科大学諏訪短期大学
- 新潟大学医療技術短期大学部
- 岐阜大学医療技術短期大学部
- 山口大学医療技術短期大学部
- 名古屋明徳短期大学
- 同志社女子大学短期大学部
- ノートルダム清心女子短期大学
- 長崎ウエスレヤン短期大学
- 2004年度
- 天使女子短期大学
- 尾道短期大学
- 北海学園北見短期大学
- 酒田短期大学
- 山形県立保健医療短期大学
- 神奈川県立衛生短期大学
- 神奈川県立栄養短期大学
- 玉川学園女子短期大学
- 東京経済大学短期大学部
- 関東学院女子短期大学
- 山梨英和短期大学
- 七尾短期大学
- 金城学院大学短期大学部
- 宝塚造形芸術大学短期大学部
- 大阪短期大学
- 聖母被昇天学院女子短期大学(大阪府箕面市)
- 徳山女子短期大学
- 神戸女子大学瀬戸短期大学
- 広島中央女子短期大学
- 香川県明善短期大学(香川県高松市)
- 北九州短期大学
- 2005年度
- 2006年度
など
大学に併設される短期大学部の募集停止の場合は、修業年限が4年の大学への改組や新設学部・学科となる場合が多い(ただし、家政系の学科などは継承されずに消滅するケースも目立つ)。他方、私立で短期大学単独の学校の場合には、閉校は事実上の倒産を意味するなど、近年、短期大学には大きな変化が訪れている。また、中国人労働者の違法入国斡旋機関となっていた酒田短期大学(山形県酒田市)には、設置者である学校法人に解散命令が出された。
[編集] 短期大学についての補足
一人っ子が増えたことにより、自分の子供を都市部の大学に出したくない家庭も増えたことと、共学化や工学系の学科が増えたことから、地方の短期大学の中には志願者が微増したところもみられるが、全体的には志願者は減っている。
また、かつては国立の短期大学である筑波技術短期大学があったが、修業年限が4年の大学に昇格し、筑波技術大学となった。そのほか、国公立の短期大学が併合や合併、修業年限が4年の大学に昇格した場合も過去に多く存在する(新制大学参照)。また、医療技術の高度化による教育の拡張により、国立大学付属の医療技術短期大学が医学部の保健学科などに改編する場合や、修業年限が6年の大学として昇格する場合が目立つ。
最近は、大学への編入学に力を入れている短期大学もある。また、有名私立大の付属や同系統の短期大学(立教女学院短期大学や青山学院女子短期大学、上智短期大学など)には、編入学の推薦入学枠が用意されている場合がある。また、短期大学の専攻科に進学する者もいる。近年、大阪体育大学短期大学部、弘前福祉短期大学、大阪健康福祉短期大学、日本歯科大学東京短期大学、さらに、2006年に開学した福井医療短期大学のように、専門学校からの格上げによるものも少なくない。東京福祉大学短期大学部のように、既設の大学に併設されたユニークな短期大学もある。2007年には従来の豊田学園医療福祉専門学校看護学科を発展改組して岐阜保健短期大学看護学科として開学する予定。
[編集] 短期大学への発展改組予定のあった学校について
大阪府内の歯科技工士専門学校が短期大学に移行される計画が持ち上がっていたようだが、依然延期されている状態である。滋賀医療技術専門学校は、2007年度を目途に短期大学への移行計画が持ち上がっていたが、2008年度を目途に大学昇格に変更された。
[編集] その他
旧制高等学校も学制改革直前、「ジュニア・カレッジ」として、短期大学に相当する学校としての存続を模索したが、GHQに認められず頓挫した。学制改革後、大学への編入学が1990年代まで制限されたため、旧制高等学校復活ともいえる専門教育準備のための一般教育系学科の短期大学の設置はなく、わずかに学芸学部の2年課程や専門課程を欠いた医学基礎教育課程の設置が見られた程度である。
[編集] 関連項目
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[編集] 参考文献
- 『昭和62年度全国短期大学高等専門学校一覧』(文部省高等教育局技術教育課監修)
[編集] 外部リンク
前段階の学校 | 現学校 | 次段階の学校 |
短期大学 2年制 or 3年制 18歳以上から2年間、3年間 |
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同段階の学校 | ||
注1: 高等専門学校の専攻科は含まない。 |