松井孝典
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松井 孝典(まつい たかふみ、1946年3月7日 - )は、静岡県周智郡森町出身の惑星科学者、理学博士。
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[編集] 略歴
1970年東京大学理学部地球物理学科を卒業、1976年、東京大学大学院理学系研究科地球物理学専攻博士課程修了。東大助手、助教授を経て1999年東京大学大学院新領域創成科学研究科教授。
1986年英国の科学雑誌「ネイチャー」に海の誕生を解明した「水惑星の理論」を発表し世界の地球科学者から注目を集めた。地球物理学者の上田誠也や地質学者の鎮西清高ら他の地球科学者とともにNHKで放送された『地球大紀行』の制作に関わり、特に松井は企画段階から参加した。日本の惑星科学の第一人者。
[編集] 石原慎太郎ババア発言に対して
石原慎太郎は「ババア発言(文明がもたらした最も悪しき有害なものはババア)」は、松井の「おばあさん仮説」を出所と主張しているが、松井は「石原氏の発言を見ると、私の言っていることとまったく逆のことだからね。私はこういう言い方はどこでもしたことはないし、おばあさん仮説という理論を私はいろんなところで話しているから、それを見てもらえば分かるでしょう。」(月刊『自然と人間』2003年2月号)と述べている。実際、松井の理論は、ヒトの女性が生物としては例外的に生殖可能年齢を超えて生存することで「おばあさん」が集団の記憶装置としての役割を果たし、そのことで文明の誕生が可能になった、さらに結果としてヒトの文明が地球環境を蝕む結果をももたらしているというものである。確かに「おばあさん」の存在が地球環境を蝕んだことを論じてはいるが、それは人類文明の発展は「おばあさん」によって可能になり、その文明が地球環境を蝕んでいるという逆説的現実を表現したものに過ぎない。また、この発言に対して損害賠償を求めた裁判の判決の中でも東京裁判所は、発言が松井の説ではなく石原個人の見解であると認めたが、判決後もなお石原は松井の説を紹介しただけと主張しているがその論拠は不明である。
[編集] 著作
[編集] 著書
- 『惑星探査と生命・惑星の表面』(恒星社厚生閣 現代天文学講座 1979年)
- 『パノラマ太陽系』(講談社 ブルーバックス 1981年)
- 『青い惑星・地球』(講談社 ブルーバックス 1982年)
- 『惑星への旅』(日本放送出版協会 1985年)
- 『水惑星はなぜ生まれたか』(講談社 ブルーバックス 1987年)
- 『地球進化論』(岩波書店 1988年)
- 『地球・46億年の孤独』(徳間書店 1989年)
- 『サンサーラ地球・宇宙・人間』(徳間書店 1989年)
- 『地球=誕生と進化の謎』(講談社 講談社現代新書 1990年)
- 『宇宙誌』(徳間書店 1993年)
- 『150億年の手紙』(徳間書店 1995年)
- 『地球惑星科学入門・太陽系のなかの地球』(岩波書店 岩波講座 地球惑星科学I 1996年)
- 『地球生命35億年物語』(徳間書店)
- 『地球進化探訪記』(岩波書店 岩波科学ライブラリー)
- 『地球・宇宙・そして人間』(徳間書店)
- 『いま、いのちを考える』(梅原猛、河合隼雄との共著、岩波書店)
- 『松井教授の東大駒場講義録』(集英社新書)
[編集] 訳書
- 『身近な地球科学』(J.ネーゲンダンク著 講談社 1980年)
- 『プラネット・アース』(ジョナサン・ワイナー著 旺文社 1986年)
- 『われらの太陽系 3・水星のすべて』(パトリック・ムーア著 朝倉書店 1986年)
[編集] 監修書
- 『宇宙はこうなっている』(徳間書店 1993年)
その他多数の著書・訳書・監修書がある。