立直
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立直(りーち)とは、麻雀において、聴牌(テンパイ)を宣言する行為、および、その宣言によって成立する役(1飜)。
立直の宣言を行うことを、一般に「リーチする」「リーチをかける」のように表現する。
立直の宣言を行う際には、場に千点棒を出す(供託する)が、この点棒を立直棒(りーちぼう)と呼ぶ。
宣言後は、手持ち牌を入れ替えることができないなどの制限が付くが、和了したときに立直という役が成立するため、通常は点数が高くなる。また、立直を宣言することにより、一発や裏ドラなどのメリットがある(後述)ため、現代の麻雀では少しでも聴牌の確率・スピード(牌効率という)を高めて立直をかけようとする傾向が強い。
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[編集] 歴史
現在の中国麻雀に立直はない。立直の語源については、一説に、英語のreach(リーチ、手を伸ばす、到着する)の音訳で、アメリカ、イギリスなどの英語圏で生まれた役であるとも考えられる。「立直」の英語表記には日本語のローマ字による「riichi」やピンインによる「li-zhi」が用いられる。
本来、立直という役は、現在におけるダブルリーチと同じものであった。つまり、局の最初の打牌のときにしか宣言できないものであった。
時代が下るにつれて、局の最初の打牌でなくとも宣言できるというルール(現在のリーチ)が考案されたが、当初は「途中リーチ」と呼んで本来の立直(ダブルリーチ)と区別していた。この途中リーチのルールが戦後急速に広まった結果、途中リーチのほうを「立直」と呼ぶようになり、それと区別するためにダブルリーチという語が生まれた。
なお、立直(途中リーチ)があまりにも特徴的であるため、当時普及していたルール(現在もほぼ受け継がれている)を総称してリーチ麻雀と呼ぶようになった。
[編集] 条件
- 聴牌していること。
- 門前であること。すなわち、チー、ポン、明カンをしていないこと。
- 点棒を最低でも1000点持っていること。立直棒として1000点を供託するため。
- 立直を宣言した後、最低でも1回の自摸の可能性があること。すなわち、壁牌(山)の残りが王牌を除いて4枚以上あること。なお、ルールによっては、自摸の可能性がない状態での立直を認めることもある。ただし、海底における立直は認められない。
[編集] 手順
- 打牌する直前に「リーチ」と明瞭に発声する。
- 河に牌を捨てる。このとき、牌を横向きに置く。
- 立直棒を供託する(卓の中央に置く)。
この手順を満たすと、立直の宣言が成立する。かつてリーチ麻雀の初期の時代に「通らばリーチ」と宣言していたのは、リーチ時の打牌が通る(他のプレイヤーがその牌で和了しない)ことがリーチの成立条件であったからである。仮にこのときの捨て牌で他のプレイヤーが和了(ロン)した場合は、立直の宣言は成立しないため、立直棒は不要となり、リーチ宣言者の手元に戻る。なお、このときの捨て牌がポン、チーまたは明カンされた場合、プレイはもちろん続行するが、リーチが成立した印として次巡の捨て牌を横向きに置く習いである。
立直の宣言をした後、どのプレイヤーも和了できずに流局(荒牌)した場合、他のプレイヤーに手牌を開示して、聴牌していたことを立証する必要がある。もし、聴牌していなかったら偽リーチとしてチョンボ扱いとなる。
[編集] 制約
立直を宣言した後、そのプレイヤーには次のような制約が課せられる。
- 打牌の選択(手牌の入れ替え)ができない。つまり、和了する場合を除いて、自摸した牌をそのまま捨てなければならない。
- チー・ポン・カンができない。暗槓については認めるというルールも一般的であるが、その場合でも、待ちが変わる場合や、面子の構成が変わる場合のカンは認められない。
- 一見のシャンポン待ちであるが、のカンチャン待ちともみなせる。よって、この状況で立直をかけているとき、のツモで暗槓を行ってしまうと、のカンチャン待ちが消滅し、待ちが変わってしまうため、チョンボになってしまう。ただし、東の暗槓は面子構成が変わらないため、リーチ後でも認められる。
- 他のプレイヤーが和了牌を捨てたとき、もしくは和了牌を自摸した時に、故意・過失を問わず和了しなかった場合、その後は振聴(フリテン)扱いとなる。
- どのプレイヤーも和了できずに流局(荒牌)した場合、他のプレイヤーに手牌を開示して、聴牌していたことを立証する必要がある。もし、聴牌していなかったらチョンボとなる。
[編集] メリット
主なメリットは点数の向上である。
- 立直を宣言するだけで1飜の役が成立する。満貫未満の手であれば点数を2倍にすることに相当する。
- 他の役が成立していなくても(立直という役が付くので)和了できるようになる。
- 立直をかけて一巡以内に和了した場合には、さらに一発という1飜役が成立する。詳細は一発を参照のこと。
- 立直をかけて和了した場合、ドラ表示牌の下の牌もドラ表示牌として扱われる。これを裏ドラという。同様に槓ドラの下の牌もドラ表示牌(槓ウラ)とするルールも一般的である。裏ドラ(および槓ウラ)により、さらなる点数の上乗せが期待できる。ただし、和了するまでどの牌が裏ドラ(槓ウラ)になるかはわからないため、偶然性が高い。
- 聴牌していることを周知するため、対戦相手はそれを踏まえて打牌をする事が多い。オリ打ち(和了することを諦めて安全牌を切る)することも少なくない。そのため、相手の和了の可能性を少なくすることができる。
[編集] デメリット
- 聴牌していることを周知するため、対戦相手の打牌が慎重になり、ロン和了の可能性が低くなる。
- さらに、立直をかけてからしばらく和了できない場合、捨て牌が増えてしまい、対戦相手に多くの情報を与えてしまう。特に、立直後に河に捨てられた牌と同種の牌は、例え立直者の和了牌であってもフリテンのルールによりロン和了はできない。対戦相手にとって、立直者には確実に和了されない安全な牌となる。
- 打牌の選択ができないため、危険牌でも捨てなければならない。したがって、放銃の危険性が高まる。いわゆる「降りる」ことができない。
- 供託した1000点(立直棒)は、自分が和了しなかった場合には戻ってこないため、終盤などで順位争いに影響を及ぼすことがある。
[編集] 牌姿の例
以上の形では、で和了の形ではあるが、なにもしない状態では役が無いため、現行の一翻縛りのルールでは他家の打牌からはあがることはできない(自身のツモでは門前清自摸和という役であがれる)。しかし立直をすれば、立直という役がつくため他家の捨て牌からでもあがることができる。立直し、かつ自身のツモ牌であがった場合、少なくとも立直・門前清自摸和と二つの役が複合する。ただしこの牌姿ではかをツモることで一盃口、を刻子にすることで役牌のあがり役を付けることができるが、立直後それらの牌をツモったり、發を鳴く機会があったとしても手の内に入れる事は不可能なため、立直のタイミングには注意が必要である。
[編集] 立直のバリエーション
[編集] 引っかけ立直
立直を宣言した際に和了牌から3つ離れた筋(数牌を参照)にあたる牌が捨て牌に含まれる場合を引っかけ立直または引っかけという。これは立直をかけた以外のプレイヤーが両面待ちによる立直を想定した場合、3つ離れた筋にあたる牌が捨てられている数牌を安全牌として捨てやすくなるため(両面待ちの一方が捨てられているとなると3つ離れた筋の牌は振聴となり、ロンされることはない。)、つまり捨て牌に引っかかって和了牌を打牌しやすくなるため、立直を宣言した者にとってロンできる確率が上がるとされるためである。
[編集] 振聴立直
振聴の状態でかける立直を振聴立直という。基本的には通常のリーチと同じ扱いだが、振聴であるためにロン上がりができずツモで上がるしかない。なお、振聴立直を認めないルールもある。
[編集] 例
(自分の手牌)
(捨牌)
待ちであるを捨ててしまっているためリーチしても振聴立直となる。
[編集] 補足
- 4人とも立直をかけた場合、流局となる(途中流局を認めないルールでは、続行することもある)。
- 10000点棒や5000点棒しかない場合、それを立直棒とするが、他のプレイヤーが1000点棒に両替するのが一般的である。
- チョンボ防止のため、立直をかけた本人以外が和了した場合にも手牌を開示させるというルールもある。
- 立直後に理牌をすると、不正の疑いをかけられる可能性があるため、理牌を済ませてから立直を宣言するのが望ましい。
[編集] 転用
「立直」の語は以下に転用されている。
- パチンコで、図柄の変動によって大当たりを期待させるアクションを「リーチ」と呼ぶ。リーチ (パチンコ)を参照。
- ビンゴゲームで、ある1つのマスに印がつけば1列に印がそろうようになる状態を「リーチ」と呼ぶ。
- その他「落第にリーチがかかった」などと、ある状態が達成される寸前であることを「リーチ」と呼ぶ。
どちらも普通カタカナで書かれる。
[編集] 立直に関連のある役
[編集] 関連項目
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