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陳水扁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

陳水扁
Chen Shui-bian

中華民国第5代総統
任期: 2000年5月29日

出生日: 1950年10月12日
生地: 台湾台南県官田郷
政党: 民主進歩党
配偶: 吳淑珍 


陳 水扁(ちん すいへん)は中華民国政治家台南県官田郷に生まれ台南客家の後裔を自称する。2000年に中華民国第十任総統に初当選し、2004年には2期目の選挙にも当選し、現在在職中。かつては台北市議員、立法委員、台北市市長、民主進歩党主席などを歴任した。

陳水扁は中華民国で住民の直接選挙により選出された2番目の総統であり。初めての民進党から選出された、台湾の本土化運動を推進する立場からの総統である。そのため中華民国独立志向を有しているため、中華人民共和国との緊張関係を発生させた。

中華民国では出身が貧しい農家に生まれ、自らの努力で総統に上り詰めたばかりか、中華民国の民主主義と主権独立を保護していることを評価する勢力と、言動不一致の政策能力に欠如した人物と評価する勢力が拮抗している。

陳水扁
簡体字: 陈水扁
繁体字: 陳水扁
ピン音: Chén Shuǐbiǎn
注音符号: ㄔㄣˊ ㄕㄨㄟㄅㄧㄢ
ラテン字: Ch'en Shui-pien
発音: チェン・シュイピェン(北京語)
タン・ズイビイン(閩南語)

目次

[編集] 通称

通称の「阿扁」であるが、「阿」は台湾語で人名の前に付与し親近感を表す文字であり、「阿扁」との通称が国民との親近感を演出している。これにより中華民国の各種メディアでは陳水扁政権を「扁政府」と称すこともある。

[編集] プロフィール

[編集] 出生

陳水扁は1950年に台南県官田郷の小作農家の家庭に生まれた。出生直後は家族は無事に養育できるかの不安が強く、そのため出生届は1951年2月18日に初めて提出された。幼少時より学業成績が優秀であり、農漁会奨学金を得て小学校を卒業することが出来た。1969年国立台南第一高級中学を卒業し、台湾大学商学部へと進学した。

[編集] 弁護士

しかし法学に対し関心を有すようになったため商学部を休学し、翌年再度受験に挑戦し、台湾大学法学部に首席の成績で入学した。大学3年の1973年、成績主席で司法試験に合格し「学士律師」となった。なお、商学部時期は中国国民党の入党経験があったにも構わず、法学部再入学の際、薦められため一度入党事実を隠して中国国民党へ再入党。中国国民党の入党経歴はのち、人に知らないようと隠されていたが、07年、国民党の旧文書により、陳水扁からはじめ、呂秀蓮謝長廷游錫堃・邱義仁などの入党事実が発見した。

1975年、同じ小・中学校に通っていた呉淑珍と結婚、海商法を専攻していた陳水扁は翌年華夏海商法事務所の弁護士となり、長栄海運の常任顧問弁護士を担当した。

[編集] 政界進出

1979年に発生した美麗島事件が陳水扁が政界に進出する契機となった。美麗島事件の被告弁護団に参加した陳水扁は主犯格とされた黄信介の弁護を担当し、党外活動(反国民党運動)に従事するようになった。1981年台北市市議会議員選挙に立候補し、最高得票で当選、台湾民主化運動の先駆者鄭南榕が創刊し、作家である李敖が出資する自由時代系列雑誌社の社長に就任した。当時の雑誌社のスローガンが「100%の言論自由を!」であった。

1985年、議員辞職した陳水扁は台南県長選挙に出馬するが落選した。この選挙運動中に夫人である呉淑珍は国民党の陰謀説もある自動車事故に遭遇し下半身不随となった。この事故で陳水扁の知名度は大幅に向上、多くの民衆の支持を得る契機となった。

1986年、蓬萊島雑誌事件で国民党立法委員馮滬祥から名誉毀損で告訴され懲役1年(後に8ヶ月)の判決を受けた。この事件で在野から裁判に対する非難の声が高まったが、陳水扁は判決後控訴しないことを宣言し服役した。同年、呉淑珍が立法委員に当選し、翌年刑期満了で出獄した陳水扁は弁護士活動を再開する傍ら、呉淑珍の政策秘書として活動を再開した。1987年民主進歩党が結成されると、中央常務委員に就任。1989年に立法委員に当選すると、民進党議員団幹事長となり、1992年には2期目を務めている。

陳水扁が立法委員を務めた期間、国会での質問が評価されまた「国防組織法」を提出するなど積極的に活動し、1993年7月にはアメリカの雑誌『ニュースウィーク』中華民国国会の風雲児として紹介されている。

[編集] 台北市長

1994年、台北市長の初めての直接選挙が実施されると陳水扁は謝長廷を破り民進党の公認候補として台北市長選に出馬した。当時の国民党公認候補黄大洲であったが、当時国民党から一部勢力が分裂し新党を結成、趙少康を公認に立てていたため、国民党票が二分され、結果、陳水扁は市長に当選した。

中華民国の国民衆は首都の市長となった陳水扁の政治手腕と、民衆に近い政治センスに高い評価を与え、高い支持率の下、台北捷運の建設、下水道を初めとする治水事業などを実施し、また既得権益に打撃を与える清廉さで、支持率は76%を記録した。しかし1998年の台北市長選では2期目を目指す陳水扁に対し、国民党は民衆の支持率が高い馬英九を擁して出馬、僅かに馬英九に及ばず落選した。

[編集] 総統選出馬

台北市長選落選後の1999年、陳水扁は外国歴訪の所謂「学習之旅」に出発し、2000年の総統選挙に照準を合わせた活動を開始する。また帰国後は中華民国台湾島全ての309郷鎮を訪問し、今後の政策運営のための地盤作りを行なった。そして同年7月、民進党候補として総統選挙への立候補を正式に表明した。

李登輝(右)
李登輝(右)

陳水扁はイギリス労働党の改革をモデルとし、中間左派の「新中間路線」を政策主軸とした。この時、陳水扁は総統選当選の可能性を認識しておらず、将来の政治活動進捗の準備期間として認識していた。そのためメディアを通じ自叙伝『台湾之子』を出版して自らの紹介を行い、自己の政治主張と理念、中華民国の未来について述べていた。

2000年の選挙では国民党の分裂が発生した。国民党党員であった宋楚瑜が国民党内部の指名選挙で連戦に敗れ国民党候補として指名されなかったため、連戦に対するネガティブ活動を行い、連戦側もそれに対抗するなどスキャンダルが続いたことで、民進党への支持が高まり陳水扁は以39.3%の得票率で総統に当選、5月20日に第10代総統に就任した。これは国民党出身の李登輝から民進党への政権交代であり、半世紀に及び国民党支配体制を選挙によって終焉させたことを意味している。

[編集] 中華民国総統

[編集] 総統第1期

陳水扁が総統に就任する以前、中華民国では国民党から民進党への政権交代の必要性が叫ばれていたが、実際に政権交代すると半世紀に及ぶ国民党支配の影響力が大きく、政権運営に支障を来たした。例を挙げれば国民党党財産問題では政府財産と国民党財産の区分が明確でない、またまた核四問題では、当初建設に反対していたが、国民党及び親民党より罷免決議案が提出され、その結果陳水扁が譲歩し、建設続行を表明するなど独自色を薄める結果となった。

陳水扁政権後各方面から政策実行能力などで批判が発生した。特に民進党結党時のメンバーからの批判が注目される。民進党主席の地位を争い、敗北した結果離党した前主席の許信良、党宣伝部主任、報道官の陳文茜などが反陳水扁勢力の代表であり、2000年の総統選後に反陳水扁を開始した。陳水扁は野党勢力を結成させた民進党政権を確立したが、政権奪取後は党内の反対派の意見を抑圧しているとの批判を受けるようになった。

2002年9月、軍公教待遇改革問題で10万人の教師がデモを行い、数ヵ月後に農民、漁民などが政府が発表した農漁会改革に反対し大規模なデモにつながり、行政院農業委員会主任委員の范振宗及び財政部部長である李庸三の引責辞任に発展した。陳水扁は中央機構のメンバーを大幅に入れ替えた。国民党体制の改革を目標としたこの措置も、反対派からは政治経験が豊かな国民党系メンバーに代えて、経験に乏しい民進党系メンバーを登用したことが政局運営の真空を発生させたと批判の対象となっている。

[編集] 総統第2期

2004年の総統選挙
2004年の総統選挙

2004年の総統選挙では、国民党と親民党が選挙協力を行い泛藍陣営を結成したことで当初優勢と考えられていたが、投票前日の3月19日に情勢の大変化が生じた。3月19日、陳水扁呂秀蓮が台南で民衆の応援に応えながらパレードの最中、銃撃を受けて負傷するという暗殺未遂事件(三一九槍撃事件)が発生した。

この事件は社会的に大論争を巻き起こし、選挙結果にも大きな影響を与えた。投票結果それまで優勢と思われていた泛藍陣営の連戦候補であるが、結果得票率0.2%の僅差で陳水扁が当選した。銃撃事件に関しても自作自演とする泛藍陣営に対し、泛緑陣営(民進党、台湾独立連盟など)はその疑惑を全面否定、まや投票日に大量の治安関係者を動員したことで投票に影響を与えたことから泛藍陣営は投票集計のやり直しを要求するなど中華民国の社会に大きな影響を与えた。

銃撃事件に関しては鑑定専門家の李昌鈺をアメリカより帰国させ調査させ、陳水扁の銃創は拳銃によるものであるとの鑑定結果を提出、残された弾丸より犯人捜査が行なわれた。その後被疑者として陳義雄が特定されたが、被疑者は既に死亡しており真相は未だに不明である。政府は2006年3月、陳義雄の家族に対し事情聴取を実施している。

また得票率差0.228%という結果に対し、連戦は選挙無効、当選無効を訴えてデモを組織、総統府前では連日泛藍陣営支持者による集会が組織された。これに対し司法は数ヶ月に亘る真理を行い、2004年11月4日午後4時2分に連戦の訴えを退け、陳水扁の当選有効が確定した。

[編集] 両岸関係と外交政策

両岸関係と外交政策では、陳水扁は中華民国独立の傾向が強い人物であるが、5月20日の就任演説で「四つのノー、一つのない」の原則を打ち出し、任期中の中華民国独立に繋がる国号変更などは行なわないことを明言した。

経済問題では中華民国民間企業より中国大陸(中国共産党政府および中華人民共和国)との三通を実行し、両岸貿易促進が熱望されていたが、陳水扁は中華民国の安全保障の必要性から中国大陸への経済依存度を低下させるため、政府は積極的に両岸交流を推進すべきでないという立場を採った。中国大陸進出に代わる政策として「南向政策」を発表、中華民国企業に対し東南アジア諸国への投資を要望した。2006年元旦に「積極開放、有效管理」から「積極管理、有效開放」への転換を明言した。

中国大陸との距離を置く陳水扁は2006年春節の演説では国家統一綱領国家統一委員会の廃止の可能性及び国際連盟に「台湾」名義での加盟申請に言及、「台湾独立派」の賛同を獲得した。しかし国統綱領と国統会の廃止は、「四つのノー、一つのない」で表明した「一つのない」の内容に違反するものであり、泛藍陣営からは強烈な批判が出された。またアメリカ合衆国国務省は1月30日のレポートで陳水扁の春節発言に対しアメリカ政府は「一つの中国政策は変更されない」と現状維持の要望を表明した。2006年2月27日、陳水扁は国統会の停止、国統綱領の運用停止を発表、中国共産党からの強い反発を受けている。またこれらの政策決定過程で修正が繰り返されたことから、台湾独立派からは対応の甘さが批判の対象にもなっている。

[編集] スキャンダル

2005年8月、高雄捷運における陳哲男のスキャンダルが表面化する。前総統府統府秘書長陳哲男が業者の招待を受けて海外旅行したというものであり、清廉さを謳った陳水扁政権にとって初めての打撃となった。立法委員の邱毅更によるスキャンダル追究が続き、台湾メディアで長期に亘る焦点とされた。

2006年5月25日、陳水扁の娘婿である趙建銘のスキャンダルが表面化する。台湾土地開開発公司の不正取引に関する内容であり、台湾地院は証拠隠滅の恐れがあるとし身柄拘束の上、接見禁止を決定した。また呉淑珍夫人に対しても太平洋崇光百貨の商品券及び株券供与の疑惑も浮上し陳水扁の政局運営に重大な被害を与えた。

陳水扁退陣を求める紅衫軍
陳水扁退陣を求める紅衫軍

2006年5月31日、陳水扁は「三つの決定(自清、革新、権力移譲)」と「一つの決心(有言実行、初志貫徹)」を発表、職権を除き与党の運営や選挙活動から手を引くと宣言した。

2006年11月3日、呉淑珍夫人が検察当局から総統府機密費1480万台湾ドルを私的流用していたとして、汚職と文書偽造の罪で起訴された。起訴によって、陳総統の退陣を求める声が、野党や中間層だけでなく与党民進党内部からも噴出し、民進党の友好政党である台湾団結連盟は、総統罷免案が提出された場合賛成する意向を表明し、陳総統は窮地に追い込まれている。こうした中で陳総統は、11月5日に記者会見を開き、機密費の私的流用疑惑を否定した上で、裁判の一審で呉淑珍夫人に有罪判決が出た場合総統を辞任する意向を表明したが、与野党・世論の不信を払拭するまでには至っておらず、陳総統の進退は予断を許さない状況にある。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

先代:
李登輝
中華民国総統
2000年 -
次代:
先代:
黄大洲
台北市長
1994年-1998年
次代:
馬英九
先代:
謝長廷
民主進歩党党主席
2002年-2004年
次代:
柯建銘(代理)
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