陽電子頭脳
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陽電子頭脳(ようでんしずのう、positronic brain)とは、アイザック・アジモフのSF小説を起源とする架空の技術装置であり、人間に認識できる意識を不特定な方法で形成する、ロボットに搭載された頭脳(コンピュータ)の中枢である。陽電子脳(ようでんしのう)とも訳されている。
各作品から断片的に得られる技術的詳細は下記の通りである。
- プラチナ・イリジウムのスポンジ状合金にランダムに発生する陽電子を用い、脳としての機能を有する。
- 基本回路設計はロボット工学三原則に準拠しており、その条項によって活動が制限され、人間との関りに重要な役割を果たしている。
- アルファ線やガンマ線などの放射線には人体以上の脆弱性を示す。これは放射線粒子により回路中の陽電子が一掃されてしまう為である。
- 図らずも前述のロボット工学三原則に反する行為をしたり、二律相反のジレンマに陥った際は、機能を停止したり、一部機能に障害が発生する場合がある(言語が不明瞭になったり四肢の動作に支障が出るなど)。
- 記憶容量は膨大で、『鋼鉄都市』などに登場するR・ダニール・オリヴォーは、全ての記憶を半永久的に維持しているにも関わらず(本人は「自分は物を忘れる能力が無い」と述べている)、一万年の永きにわたり最初の頭脳のままで稼働し続け、その後もさらに複雑な頭脳に交換・再記録する事で全ての記憶・能力を維持し続けた。
一般に架空の高度なロボットの頭脳としては「電子頭脳(electronic brain)」が用いられていたが、アジモフが自身の最初のロボット小説を執筆した1939年‐1940年には、陽電子(positron)はまだ新しく発見されたばかりの粒子であり、「電子の」(electronic)からの類推で"positronic"と言う語を作り用いることは、通俗科学小説に新時代的な魅力を与えた。
また、新スタートレックにも、陽電子頭脳を搭載したデータ少佐が登場する。