夜来たる
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『夜来たる』(Nightfall)はアイザック・アジモフが1941年に発表した短編SF小説。アジモフの出世作であり、SF界の古典の一つと言われている。また同題の短編集、及びロバート・シルヴァーバーグによる長編版も存在する。
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[編集] 概要
6重太陽の惑星・ラガッシュで、日食によって2000年振りの「夜」の到来を迎えた人々の姿を描いている。
本作の基本アイデアは、アジモフのSF作家としての師であるジョン・W・キャンベルによる物である。当時アスタウンディング誌の編集長だったキャンベルは、アジモフにラルフ・ワルド・エマーソンの詩の一節「もし星々が千年に一夜のみ輝くなら、人々はいかにして神の都の存在を信じ、後世に語り継ぐ事が出来ようか」を読み聞かせ、これをモチーフにした短編を書く様に薦めた。
本作によって、それまで無名の若手作家のひとりだったアジモフは一夜にして一流作家の仲間入りを果たし、その後50冊以上のアンソロジーに納められた他、SF作品の人気投票でも常に上位に入るなど、SF界の古典として確固たる地位を占めている。
こうした評価に対してアジモフ自身は生前、弱冠21歳の時の作品が自身の最高傑作と言われる事に難色を示す一方で、自身の名義会社を「Nightfall Inc.」と名付けるなど、複雑な心境を覗かせていた(詳細は後述の短編集の本人の記述および巻末解説に詳しい)。
[編集] 短編集
1969年、同題の短編集が刊行された。巻頭の『夜来たる』はじめ20篇が納められている。
巻頭でアジモフ自身が語っている所に寄れば、最高傑作と言われる『夜来たる』以来、少なくとも文章技巧の点では当時より進歩している事を証明するために、それまで短編集に未収録だった短編群を執筆順に収めて比較できるようにした、との事である。そのため巻頭の『夜来たる』から巻末の『人種差別主義者』まで執筆時期に26年もの開きがあり、内容も異星人・宇宙戦争物やロボット・カーの話、TVの討論番組の最中に書かれた掌篇や医学専門誌に掲載された作品などバラエティに富んだ物となっている。
なお邦訳はハヤカワ文庫より『夜来たる』『サリーはわが恋人』の2分冊で刊行されている。
[編集] 収録作品
- 夜来たる Nightfall
- 緑の斑点 Green Patches
- ホステス Hostess
- 人間培養中 Breeds There a Man...?
- C-シュート C-Chute
- 正義の名のもとに In a Good Cause-
- もし万一… What If-
- サリーはわが恋人 Sally
- 蝿 Flies
- ここにいるのは― Nobody Here But-
- こんなにいい日なんだから It's Such a Beautiful Day
- スト破り Strikebreaker
- つまみAを穴Bにさしこむこと Insert Knob A in Hole B
- 当世風の魔法使い The Up-To-Date Sorcerer
- 4代先までも Unto the Fourth Generation
- この愛と呼ばれるものはなにか What is This Thing Called Love?
- 戦争に勝った機械 The Machine that Won the War
- 息子は物理学者 My Son, the Physicist
- 目は見るばかりが能じゃない Eyes Do More Than See
- 人種差別主義者 Segregationist
[編集] 長編版
1990年、ロバート・シルヴァーバーグによる長編版が出版された。アジモフのオリジナル短編をベースに主に前日箪と後日箪とを加えた物になっている。
[編集] その他
2000年のアメリカ映画『ピッチブラック』は本作の設定をベースとしており、当初はタイトルも『Nightfall』の予定であった。