非核地帯
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非核地帯(ひかくちたい、NWFZ - Nuclear Weapon Free Zone)とは、核兵器の開発・製造、実験、保有や使用、域内の輸送や持ち込みを条約により禁止した地域を指す。非核兵器地帯ともいう。
非核地帯を定めた条約では、上の内容に加えて核保有国が非核地帯への核兵器による攻撃や攻撃の威嚇を禁止する内容も含む。こちらは核保有国の条約参加(署名および批准)が必要であり、必ずしもすべての核保有国が参加しているわけではない。この意味では消極的な安全の保証(注:保障ではない)と表現される。例えば、南太平洋地域の非核化を定めたラロトンガ条約では、1996年になってイギリス・フランスが署名した。この直前の1995年にはフランスが南太平洋地域で核実験を行っている。また、2004年8月時点ではアメリカはラロトンガ条約を批准していない。東南アジア地域の非核化を定めたバンコク条約では核保有国である5大国の署名が行われていない。ここから、非核化を進めている地域の中でもその進行度の違い、また、核保有国の中でも非核化に積極的な国と消極的な国をある程度うかがい知ることができる。
北半球の大半の地域はまだ非核化されていない。
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[編集] 主な出来事
2004年までに非核化を進めている地域として、南極の他に、中南米(カリブ海諸国を含むラテンアメリカ)、オーストラリアを含む南太平洋、東南アジア、アフリカがある。
- 南極の軍事利用の禁止の他、南緯60度以南の地域におけるすべての核爆発及び放射性廃棄物の処分を禁止を定める。
- 東南アジアの非核化条約。1997年3月に発効。2004年時点ではまだ核保有国による署名が行われていない。
- アフリカ地域の非核化条約。2004年時点では未発効。
- 中南米、アフリカ、東南アジア、南太平洋の4つの非核地帯に属する90ヶ国以上が参加。
[編集] 各地域の条約署名・批准の動向
[編集] 南極
- 加盟国
- 当初12ヶ国。2004年9月時点で45か国が署名・批准。
- 核保有国
- 5大国も署名・批准。
[編集] カリブ海・中南米
- 域内の加盟国
- 域内の未加盟国
- 不明。
- 核保有国
- 5大国も署名・批准。
[編集] 南太平洋・オーストラリア
- ラロトンガ条約
- 域内の加盟国
- 太平洋諸島フォーラム加盟の16の国と地域(自治領)のうち13が署名、うち12が批准。トンガが未批准。
- 域内の未加盟国
- 核保有国
- 5大国も署名。2004年8月時点ではフランス、中国、イギリス、ロシアが批准。アメリカは批准していない。
[編集] 東南アジア
- 域内の加盟国
- 域内の未加盟国
- 不明。
- 核保有国
- 2003年4月時点では、5大国は署名していない。
[編集] アフリカ
- ペリンダバ条約
- 1996年調印、2004年8月時点では未発効。
- 域内の加盟国
- 1996年に42ヶ国が調印。2000年12月時点で50ヶ国が署名、アルジェリア、ボツワナ、ブルキナファソ、コートジボアール、ガンビア、ギニア、マリ、モーリタニア、モーリシャス、南アフリカ、スワジランド、トーゴ、タンザニア、ジンバブエの14か国が批准、2004年8月時点で批准国は19ヶ国。条約発効条件の28ヶ国に満たないため、この時点では条約は発効していない。
- 域内の未加盟国
- 不明。
- 核保有国
- 5大国も署名。2004年8月時点ではフランス、中国、イギリスが批准。ロシア、アメリカは批准していない。
[編集] 非核化されていない地域
核兵器開発・保有国、核兵器を配備している国、潜在的核開発国または核開発に関心を持っている国、核兵器搭載艦船・軍用機の立ち寄る国、核保有国の安全保障条約(いわゆる核の傘)の下にある国などいくつかに分かれる。
北米、西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、ロシア、中国、朝鮮半島・日本の極東地域、中央アジア、インド、中東地域、つまり、北半球の大半の地域である。北極も戦略原子力潜水艦が活動した戦略上重要な地域だったため、非核化されていない。