JR貨物EF210形電気機関車
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EF210形は、1996年に登場した日本貨物鉄道(JR貨物)の平坦路線向け直流電気機関車である。愛称はエコパワー桃太郎。
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[編集] 概要
従来の直流区間標準機EF65形は経年35~40年に達する車両が増加し、更新工事で延命を図ってきた。本形式はEF65形の後継機として、また、東海道・山陽線系統の1300tコンテナ貨物列車運転拡大に充当する目的で開発された。
かご形三相誘導電動機をGTO素子VVVFインバータで制御するシステムはEF200形と同一であるが、コストダウンのため、本形式は1台のインバータで2台のモーターを制御する1C2M方式とされ、出力は30分定格の概念を初めて採用し、定格出力は3,540kW(30分)として設計された。これらの対応により、性能はEF200形に比べ控えめではあるが、東海道本線関ヶ原付近の連続勾配10‰の運用が可能となり、EF66形との共通運用もできる。
JRの機関車で初めて愛称が採用され、公募の結果「岡山機関区に所属する省電力大出力機」であることから「ECO-POWER桃太郎」と命名された。
[編集] 形態区分
- 試作機(901)
- 新鶴見機関区に新製配置され、各種試験に供された。1997年8月に岡山機関区へ転属。量産機とは車体側面1エンド側のルーバー形状や、屋根昇降ステップの位置が異なる他、運転席側窓がやや小さく、運転台周りの塗装パターンが若干異なる。側面のナンバー表示は向かって右の助士席側扉付近にある。モーターは製造時FMT3形(565kW)であったが、2005年3月に量産化改造によりFMT4形を搭載している。同時に歯車比も量産車と同一になった。パンタグラフは下枠交差式のPS22D形。
- 0番台(1~18)
- 1998年7月~同年11月に三菱電機・川崎重工で製造された、本形式の量産機。
- モーターをFMT4形(565kW)に改良、これは以降の新型電気機関車にも標準装備される。走り装置は歯車比を1:4.44から1:5.13に変更、台車軸距は2600mmから2500mmに短くされた。側面のナンバー表示は向かって左の運転士席側扉付近に移された。愛称決定後、「桃太郎」のロゴマークが助士席側窓下に描かれる。パンタグラフは下枠交差式のPS22D形。全車が岡山機関区に配置されている。
- 100番台(101~)
- 2000年3月以降、三菱電機・川崎重工で製造中の改良機。
- VVVFインバータをIGBT素子式に変更し、制御システムも1台のインバータで1台のモーターを制御する1C1M方式とされた。外観上、0番台とは側面の採光窓・ルーバーの数や配置が異なる。本区分の製造中に愛称が決定し、「桃太郎」のロゴが側面中央に描かれる。109号機以降はパンタグラフをシングルアーム式のFPS-4形とし、関節部は車端側に向けて搭載される。
- 2007年3月末現在、101~109号機・114・115号機・126~131号機の18両が岡山機関区に、110~113号機・116~125号機の14両が新鶴見機関区に配置されている。
[編集] 現況と動向
本形式は新製以来東海道・山陽線で使用される他、東北・高崎線方面、瀬戸大橋線を経由し高松貨物ターミナル駅までの運用があり、番台による区別はなく、全機共通で運用されている。なお、予讃線の超狭小トンネル対策がされていないため箕浦駅以西への乗り入れはできない。
2006年度は6両の増備が行われ、6両全てを岡山機関区に集中投入した。
このうち、127号機は新製直後の2006年9月上旬、西湘貨物~東京貨物ターミナル間で1300t列車牽引試験を7日間行った。
[編集] 主要諸元
(カッコ内は901号機)
- 全長:18,200mm
- 全幅:2,887mm
- 全高:3,980mm (3,963mm)
- 機関車重量:100.8t
- 軸配置:Bo-Bo-Bo
- 定格出力:3,390kW(1時間)3,540kW(30分)
- 定格引張力:20,300kgf(1時間)
- 定格速度:59.5km/h(1時間)
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