国鉄ED79形電気機関車
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ED79形電気機関車(いーでぃー79がたでんききかんしゃ)は、津軽海峡線用として1986年から製作された交流用電気機関車である。
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[編集] 概要
青函トンネルを有する津軽海峡線区間の専用機として計画され、運用の置き換えで捻出されたED75形700番台から改造された。改造経費節減のため、本務機用の0番台と改造箇所を最小限に抑えた補機専用の100番台が設定された。
連続勾配12‰の青函トンネルを走行するため、ブレーキ管圧力制御装置を追加し、抑速装置として交流回生ブレーキを搭載、屋根上に抵抗器を設置する。このため、制御装置は種車の磁気増幅器+低圧タップ切換器からサイリスタに換装されている。常時高湿度環境への対策として、外部機器の絶縁強化や、運転台側窓のアルミサッシ化もなされた。走行装置は110km/h運転対応のため、歯車比を1:4.44から1:3.83に変更、これによる粘着引張力の減少分は軸重を16.8tから17tに増大させることで補った。主電動機は動輪側の支え軸受けをコロ軸として転がり抵抗を減少させたMT52Cである。保安装置は海峡線専用のATC-L型を搭載するが、補機専用の100番台は本線で先頭に出ない側(1エンド側)のATC設置を省略し、ATC受電器のみを2エンド側に設置する。
1989年には貨物列車増発のため50番台が製作された。これは改造によらず、0番台とほぼ同一の仕様で新規に製作された車両で、単機での運用も可能である。2007年現在、JR発足後に製造された唯一の交流電気機関車でもある。
[編集] 形態区分
- 0番台(1~21)
- 総数21両がED75形700番台から改造された、本形式の基本番台機。100番台と異なり、改造種車は後期の車両に集中している。改造箇所の名義は土崎工場(現・東日本旅客鉄道(JR東日本)秋田総合車両センター)・苗穂工場・大宮工場(現・JR東日本大宮総合車両センター、JR貨物大宮車両所)の各工場となっているが、東芝などの車両メーカーに工事を委託した車両も存在する。外部塗色は赤2号。外観上は屋根上の抵抗器とアルミサッシ化された運転台側窓が目立つ。全機が北海道旅客鉄道(JR北海道)函館運輸所青函派出所に配置され、津軽海峡線の青森-五稜郭・函館間で、旅客列車には単機で、貨物列車には100番台などとの重連で運用された。現在の定期運用は旅客列車のみで、寝台特急「カシオペア」・「北斗星」・「トワイライトエクスプレス」、急行「はまなす」などを牽引している。
- 100番台(101~113)
- 貨物列車を重連で牽引する際の補助機関車として使用するため、総数13両が土崎・苗穂・大宮の3工場でED75形700番台から改造された。改造種車は前期の車両に集中している。屋根上の回生ブレーキ用抵抗器は非装備、制御装置も種車の磁気増幅器+低圧タップ切換器をそのまま搭載する。常に重連の函館側に連結して運用するため、運転台の側窓改造は函館側(2エンド側)のみ施工され、青森側(1エンド側)の運転台は種車のままである。保安装置は、本線運転で先頭となる函館側の運転台にATC受電器のみを設置する。ATC装置本体は設置されず、単独で海峡線の走行はできない。外部塗色は赤2号。全機がJR北海道函館運輸所青函派出所に配置され、0番台との重連で貨物列車の牽引に充当されたが、2006年3月のダイヤ改正で運用がなくなった。
- 50番台(51~60)
- 津軽海峡線の貨物列車増発に対応するため、1989年に東芝で10両が新製された。0番台とほぼ共通の仕様で製作されたが、前面窓がわずかに傾斜し、ツララ切りを装備する。最高速度は100km/hと0,100番台よりも低くなっている。台車は一体圧延車輪を使用するDT129T。津軽海峡線青森信号場-五稜郭間の貨物列車牽引に重連で運用される他、過去には東北本線宮城野貨物駅までの定期運用や、単機で旅客列車に充当されたこともあった。外部塗色は車体がコンテナブルー+白、運転席の側扉は赤2号、床下機器は灰色。2000年に五稜郭駅構内での衝突事故のため56号機が廃車され、現在は9両が日本貨物鉄道(JR貨物)五稜郭機関区に在籍する。
[編集] 現況と動向
本形式は本線運転の際、必ず2エンド側のパンタグラフを上げて走行する。重連総括制御は0番台+100番台のみならず、0番台または50番台が最低1両含まれれば可能な構造で、実際に50番台+0番台の重連で運用されたこともある。検査は苗穂工場が担当し、工場入場時は札幌近郊でも本形式を見ることができる。配置区から苗穂工場までの回送は非電化区間を通るため、ディーゼル機関車に牽引される。
1998年からは「ドラえもん海底列車」牽引のため、「ドラえもん」のキャラクターイラストが描かれた車両が存在したが、2002年12月以降は781系電車に置き換えられ、全機が元の塗装に戻されている。2002年12月の東北新幹線八戸開業による列車体系変更で快速「海峡」の運用がなくなり、新型のEH500形の運用拡大や、2006年3月ダイヤ改正ではJR貨物からの運用受託が解消され貨物列車の運用もなくなり、余剰による廃車が始まっている。
0番台は2004年度に2・16号機が、2005年度に5・8・17号機が廃車され、2006年4月現在13両が在籍するが、1・15・19号機は保留車である。5号機は廃車後、JR貨物に売却された。100番台は2006年3月ダイヤ改正で運用がなくなり、2006年4月現在で在籍する3両はすべて保留車扱いで、2006年度中の廃車が決定している。すでに廃車となった105、111号機などはED76形の部品取り用として九州に回送されている。
[編集] 主要諸元
- 全長:14300mm
- 全幅:2800mm(0,100番台)、3079mm(50番台)
- 全高:4199mm(0番台)、4280mm(50番台)、3878mm(100番台)
- 運転整備重量:68.0t
- 電気方式:交流20kV、単相50Hz
- 軸配置:B-B
- 台車形式:DT129T、DT129U
- 主電動機:MT52C×4
- 1時間定格出力:1900kW
- 1時間定格引張力:12160kg
- 制御方式:重連総括制御、変圧器無電弧タップ制御、タップ間連続制御、弱め界磁制御、他励インバータ制御(0番台)
- ブレーキ方式:EL14AS増圧装置、抑速回生ブレーキ
- 最高運転速度:110km/h(0,100番台)、100km/h(50番台)
[編集] 関連項目
- 旧型機関車
- B・D型機(貨物用) - EB10 / AB10 - ED10 - ED11 - ED12 - ED13 - ED14 - ED15 - ED16 - ED17 - ED18 - ED19 - ED23 - ED24
- D型機(旅客用)- ED50 - ED51 - ED52 - ED53 - ED54 - ED55(計画のみ) - ED56 - ED57
- F型機(貨物用)- EF10 - EF11 - EF12 - EF13 - EF14 - EF15 - EF16 - EF18
- F型機(旅客用)- EF50 - EF51 - EF52 - EF53 - EF54 - EF55 - EF56 - EF57 - EF58 - EF59
- H型機 - EH10
- アプト式 - EC40 - ED40 - ED41 - ED42
- 私鉄買収機
- ED20 - ED21 - ED22 - ED25 - ED26 - ED27 - ED28 - ED29 - ED30 / ED25II - ED31 - ED32- ED33 / ED26II - ED34 / ED27II - ED35 / ED28II - ED36 - ED37 / ED29II - ED38 - ケED10 - デキ1(旧宇部) - ロコ1(旧富山地鉄) - デキ501(旧三信) - ロコ1100(旧南海)
- 開発史 - 日本の電気機関車史
[編集] 関連商品
Nゲージ鉄道模型として、関水金属(KATO)・トミーテック(TOMIX)より0番台が、マイクロエースより0番台+100番台重連セット、50番台重連セットが発売されている。