わが青春のアルカディア 無限軌道SSX
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わが青春のアルカディア 無限軌道SSX(わがせいしゅんのアルカディア むげんきどうエスエスエックス)は、1982年10月13日から1983年3月30日にわたり、TBS系[1]で全22話が放送された松本零士原作のSFアニメ。パソコンテレビ「gyao」にて2007年1月25日から3月8日にかけてインターネットで全22話が無料配信された。2007年4月1日より再配信中。
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[編集] ストーリー
イルミダス占領下の地球からアルカディア号で脱出したハーロック(S-00999)・大山トチロー(S-00998)とエメラルダス(X-00001)は、コードナンバーSSXとして全宇宙に指名手配され、イルミダス軍の攻撃を受けながらも、宇宙のどこかにあると信じる理想郷アルカディアを探して旅を続けていく。
[編集] 作品解説
劇場用アニメ映画「わが青春のアルカディア」のストーリーを受けて、その後の物語を描いたものであるが、松本色の強い劇場アニメの内容に比べ、かなり子供向けの内容になっている。 また、ハーロックとトチローがイルミダス軍の監視の目を避けながら、宇宙のどこかにあるという理想郷・アルカディアを求めて色々な惑星をアルカディア号で回っていくという展開から、「銀河鉄道999」の焼き直しという声も一部にはある。
ストーリーに関しては;
- ほとんど30分枠用に出来ているため、展開が非常に速く本質的な面白さが伝わりにくかったこと
- 無理やり30分枠に収めたため、ストーリがトントン拍子で全体的に台詞による解説が多かったこと
- 毎回ハッピーエンドとなる勧善懲悪的で、誰にでも理解できるようなストーリーなので余計に子供向けと受け取られたこと
などの理由により、この作品はあまりいい評価を得られてはいない。
しかしながら、レビの父であるベンツェル艦長に関するエピソードなどは実は奥が深い。さらに、トチローとハーロックのやり取り、トチローとエメラルダスの関係など、貴重で興味深いシーン、エピソードが多いのが大きな魅力である。
[編集] 打ち切り
松本SFアニメのブームが去ったこと、前述のように劇場版から作風が大幅に路線変更されたことに加え、「うる星やつら」(フジテレビ系、ただし一部系列局除く)の裏番組ということもあり、視聴率が振るわず結局22回で打ち切りとなってしまった。 打ち切りにより、「銀河鉄道999」のヒロイン・メーテルの登場(第1話でメーテルらしき女性のシルエットが出てくる)や、本作に登場するラ・ミーメの姉として「ハーロック」に登場したミーメがラ・ミーメと交代する形で登場することも、実現しなかった。
また、物語前半でトチローの体調が思わしくないと示唆する場面が度々あり、これは物語後半のトチローの死につなげるための伏線であるとみられるが、打ち切りのためかトチローの死はその直前にエメラルダス救出時に大量に浴びた宇宙線が直接の原因とされており、物語前半の伏線が無意味になってしまっている。
『無限軌道SSX』のオリジナルキャラクターの中にも後につながるエピソードがあるキャラクターがいた。イルミダス地球指令官が途中でクルーゲル将軍に代わり、解任された司令官の動向も描かれることなく終了してしまった。アルカディア号を受け入れた自由交易星を攻撃しないなど、この司令官はイルミダス人の中では横暴ではない一面を持っている人物だった。
また、ベンツェル艦長は初登場のとき、名前を名乗らず、ハーロックとの別れで『さらばだ、ハーロック』と言い、ハーロックは『また会おう艦長、また会おうデスシャドウ、男の海でな!』と答えている(このとき交信が途絶えているのかは不明)。[2] デスシャドウが二回目に登場するときこのシーンが改変されており、ハーロックの台詞が『また会おうベンツェル艦長、また会おうデスシャドウ!』となっていた。打ち切り前はベンツェルの登場機会が他にもあったことが示唆される。
そして、この打ち切りにより結局イルミダス軍の母星であるイルミダス星の実態やイルミダス人の全宇宙征服の目的などがまったく明かされないまま、ハーロックに力を貸す形でアルカディアの光の女神による得体の知れないパワーによってイルミダス母星が消滅するというご都合主義的なラストとなった。
[編集] ハーロックの描写
ハーロックがよく喋るため、従来のイメージに合致せず受け入れられなかった。 トチローとハーロックのやり取りを描くためにハーロックの台詞が多くなったとも考えられる。 ハーロックやトチローの台詞が多様されたのは、ヤッタラン副長などが登場しないこと、ハーロックとトチローが主人公であることというよりも、展開の速さを維持するためと視聴者の理解を助けるためであったと考えられる。 視聴者の理解を助けるように台詞を製作した意図は、初心者の理解を助け新たなファン層の開拓を狙ったものだと考えられるが、前述の裏番組によりその開拓には失敗し、さらに、この初心者に対する配慮によりハーロックに対する固定概念を持った視聴者の支持を失ってしまい不評となった。 そのため、ファンの間でもこのSSXは不評のようである。
しかし、ハーロックが若いことを考慮すれば、ある程度は納得でき、さらにトチローが死ぬ前は無口ではなかったとも解釈できなくもない。 ハーロックの振る舞いに関して、「宇宙海賊キャプテンハーロック」の漫画版にてミーメがトチローが生きていた頃のハーロックについては、「もっと陽気でほがらかだった、もっとよく笑った」、「トチローが死んでからは笑わなくなった」といった旨の発言をしている。
また、「クイーン・エメラルダス」の最終巻で語られる、彼女がトチローを探すきっかけになったトチローとその友人である”黒衣の戦士”(本作では名前は出ないが、トチローの親友となっていることからハーロックであることは間違いなく、1コマではあるが眼帯と頬の傷が確認できる。ただしコスチュームは黒地に白抜きのドクロの戦闘服にマントという格好ではなく、西部劇のガンマン風の服装で全身黒ずくめといったいでたちである)との出会いの場面では、「ハーロック」の頃よりはだいぶ気さくな感じに描かれており、むしろ「ガンフロンティア」のハーロックの感じに近い。(トチローからエメラルダスとのいきさつを聞いたときには、「えーっ!」と驚きの声をあげていたりもする)
『ハーロックは寡黙である』という固定概念を抱いているとファンでも『無限軌道SSX』中に描かれた若いハーロックの描像に気が付き難い。 『宇宙海賊キャプテンハーロック』では寡黙でカッコいいハーロックのイメージが強すぎてミーメが明かした『数少ない若いハーロックの描像』を見落としやすいのであろう。 本作『無限軌道SSX』のオープニングでトチローのサインに満面の笑顔でサインを返すハーロックが描かれている。 「999」劇場版やアニメ版「ハーロック」では、ニヤリと笑うシーンはあった。 これは、『宇宙海賊キャプテンハーロック』でのミーメの発言と一致する。
[編集] 用語集
- 髑髏の旗
- 骨になっても戦う意思を表わすためアルカディア号に掲げている旗。
- 瞬間交信装置
- 地上の電話と異なり、発信地点と受信地点の距離が非常に大きな宇宙の惑星間の無線では応答の時間差のない会話が不可能だとされていた。それを可能にしたのが瞬間交信装置である。無線のワープ航法のようなもので今までに数多くのエンジニアが実現を目指したが成功したものがいなかった。Mr.ゾーンが開発に成功したらしく、イルミダス占領軍地球警備局A-21(A-21ステーション)から200万光年以上離れた74惑星にいる恋人とこの瞬間交信装置を用いて愛の無線電話を披露している。瞬間交信装置は科学者としてのMr.ゾーンの能力の高さを示した。
- シーウルフ
- トチロー曰く『宇宙をまたにかけた強盗集団。残忍で凶暴な連中』。Ω座標K4で貨物船を襲っているところをアルカディア号に撃退された。
- デスシャドウ号
- かつてハーロックが乗っていたアドミナル級の戦艦。設計者はトチローで、集英社文庫のコバルトシリーズで脚本家の山浦弘靖によりノベライズされた小説版第1巻[3]で明らかにされているスペックでは全長286メートル、動力は次元流動型ヒート機関、武装は三連装エネルギービーム砲を三基装備するほか、ミサイル発射管を多数装備となっている。
- 劇場作品「わが青春のアルカディア」では、イルミダスの地球侵略の際にハーロックが艦長を務めており、デスシャドウ号艦長としての最後の任務は太陽系連合が植民惑星からの市民(主に地球からの移民者)の引き上げだった。先述の劇場作品冒頭において、イルミダス軍に利用させないためにハーロックがわざと無理な着陸をして戦闘不能にさせたが、本作にてイルミダス軍に修理され二回登場し、ハーロックを苦しめた。
- デスシャドウ号はハーロックの分身のようなもので、搭載されているコンピューターにはハーロックの戦法やそれに基づくアルゴリズム(思考手順)がインプットされている。一回目は艦長をレビの父ベンツェルが務めた。イルミダスはフルオート化を嫌っており、艦長などのポストに地球人やイルミダス人を配置する習性がある。ちなみに、このときのデスシャドウ号の修理にはMr.ゾーンは関わっていない。二回目の登場では、修理をMr.ゾーンが担当し、デスシャドウ号はフルオート化され乗組員のいない艦になっていた。[4]
- アルカディア号は苦戦を強いられたがベンツェルの活躍により難を逃れ、デスシャドウ号は惑星ヘビーメルダーに墜落した。後にトチローが本作と「銀河鉄道999」劇場版1作目で最期を迎えるのもこのデスシャドウになる。
- また、人格を瞬時に電子データに変換してアルカディア号の中枢大コンピューターに伝送するシステムを備えており、死期を悟ったトチローが本作ではデスシャドウ号内のベッドに横たわり、自らレバーを引いて自分の人格(魂)を伝送しているが、「999」劇場版1作目では機械伯爵の情報を聞きに訪れた鉄郎の手によって自分の人格を伝送してアルカディアの心となったとされており、詳細が異なる。[5]
- 『宇宙海賊キャプテンハーロック(原作)』で描かれている、ヘビーメルダーにあるトチローの墓近くに埋没している艦がこのデスシャドウであり、ハーロックの弁によればトチローと生涯を賭けた夢を追っていたときに乗っていた船らしい。
- 無限軌道
- パネル上の宇宙図で表示される、S座標クロスΣ座標軸を中心に広がっている空域。まだその果てを見極めた者が存在しないため、そう呼ばれる。タイトルはこの言葉とハーロック、トチロー、エメラルダスのコードネームの頭文字「SSX」をあわせたものである。
- 要塞SSX
- 無限軌道の上を周期的に回る、無人かつ全自動で宇宙船の修理ができる宇宙船ドック。ハーロックたちの切り札でもある。地球政府(太陽系連合軍)の依頼でトチローが設計・製作したものだが、配備前に地球がイルミダスに降伏したため、トチローが隠していた。通常は彗星に偽装しているが、指令信号を送ることにより軌道を変更させ、呼び出すことができる。
- SSXの最終回、地球でのイルミダス軍との交戦中にアルカディア号を敵艦の攻撃から守るためにアルカディア号の心となったトチローが呼び出し、盾としたために破壊された。
- 名の由来は、トチロー・ハーロック・エメラルダスの友情を記念して、指名手配コードネーム「SSX」を刻印したことによるものであり、最初は正式名称を決めておらず、トチローは「女神」と呼んでいた。
- なお、「宇宙海賊キャプテンハーロック」でも、小惑星に偽装した海賊島と第2海賊島・自動変形小惑星デスシャドウがあり、後者はSSXと同様の機能を有する。これらもトチローの手によるものである。
- 聖ワルキューレの火
- アルカディアの女王:光の女神がハーロックとMr.ゾーンに与えた。
- 永遠に燃え尽きることのない炎(超粒子の火)。
- 燃料に用いればイルミダスや人類の科学では不可能であった超亜空間航法が可能になり、Mr.ゾーンは武器に使用し地球を占領していたイルミダス軍を殲滅したが、ハーロックは地球再生のための平和利用を願い正に託した。
- (ハーロックが自分より若い世代に荒廃した地球の未来を託し、地球を去るラストはアニメ版「宇宙海賊キャプテンハーロック」のラストをなぞったものとなっている。)
[編集] スタッフ
- プロデューサー:松島忠、高見義雄
- チーフディレクター:勝間田具治
- チーフアニメーター:小松原一男
- 製作担当:大野清
- 進行主任:池上悟
- 脚本:松本零士(第1話は松本自ら脚本を担当)、山浦弘靖、星山博之
- 作画監督:荒木伸吾ほか
- 音楽:菊池俊輔
- 「菊池俊輔が音楽を担当すれば、番組もヒットする」と言われることもあるが、本作にはあてはまらなかった。
- 先にアニメ化された「宇宙海賊キャプテンハーロック」で主題歌、挿入歌などを歌った水木が本作も主題歌等を担当した。
[編集] キャスト
- ハーロック:井上真樹夫
- トチロー:富山敬
- 物野正:間嶋里美
- レビ : 鶴ひろみ
- エメラルダス:田島令子
- ラ・ミーメ : 山本百合子
- 有紀蛍:麻上洋子
- ベンツェル :田中康郎
- レオタード :藤田淑子
- Mr.ゾーン :古谷徹
- ドクター蛮:八奈見乗児
- 光の声(アルカディアの女王:光の女神):弥永和子
- ナレーター:野田圭一
そのほかのキャスト
(第一話)
- イルミダス艦隊指揮官:矢田耕司
(第二話)
(第三話)
なし
(第四話)
- 有紀悟郎:小林清志
(第五話)
- セルの少女:鈴木富子
(第六話)
なし
(第七話)
なし
(第八話)
[編集] 放送リスト
- アルカディア発進(1982年10月13日)
- 女艦長レオタード(10月20日)
- 戦闘空間の子守唄(10月27日)
- 宇宙の宝島伝説? (11月3日)
- 幽霊船セルの少女(11月10日)
- 登場!!大宇宙要塞(11月17日)
- X=エメラルダス (12月1日)
- 鉄の星の少年と母(12月8日)
- スパイはだれだ!?(12月15日)
- 星の海に雪が降る(12月22日)
- 響け自由の鐘の音(1983年1月5日)
- 心で操る・心の船(1月12日)
- 謎の黄金女神!? (1月19日)
- 謎の光はUFO? (1月26日)
- 死の海中で80分!? (2月2日)
- 宇宙で拾ったネコ (2月9日)
- 大竜巻!!交信不能 (2月16日)
- エメラルダス救出 (2月23日)
- マイコン惑星の怪 (3月2日)
- 開くか!!アルカディアの門が……(3月9日)
- 闘え!!トチロー 命果つるまで(3月16日)
- 母なる星 地球へ!!宇宙の勇者よ永遠に……(3月30日)
[編集] 脚注、その他
- ^ ただし、信越放送と北陸放送では放送されなかった。NTVの番組を放送していたからである。その一方で、フジテレビ系のはずの福島テレビとテレビ山口ではなぜか放送された。
- ^ このエピソードが収録されている第三話のエンディングのキャストではベンツェルのことを『デスシャドウ号の艦長』ではなくベンツェルと記述している。
- ^ この小説版は全2巻だが、TVシリーズの第11話に相当する部分までしかノベライズされなかった。
- ^ 漫画「クイーン・エメラルダス」では、エメラルダスがこうした自動化船(オートシップ)のことを無責任船と呼び、入ろうと思えばどこからでも進入できるといっている。ちなみにクイーン・エメラルダス号自体も意思を持つコンピューターにより完全制御され、フルオート化された自動化船であり、乗員は基本的にエメラルダス一人である。
- ^ 余談であるが、本作のトチローが最期を迎えるシーンは「999」劇場版の同シーンにトチローを描き加えたりして編集を加えたものであり、エメラルダスがトチローの死を感知するシーンは新規に描き起こされているが、ハーロックのほうはそのままである。また、本作ではデスシャドウ付近の上空からのアングルで死に瀕したトチローがデスシャドウ内に入っていこうとするシーンがあるが、これは実は「999」劇場版でデスシャドウ内に入ろうとしていく鉄郎である。鉄郎とトチローの帽子とマントは同一のもので、身長がほぼ同じなために同じ格好をしている場合、遠くから見るとほとんど区別がつかないため、作画の手間を省く上で利用しやすかったのであろう。
[編集] 関連事項
TBSテレビ系 水曜19時台後半 | ||
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メチャン子・ミッキー | 突撃HOTスタジオ! ※19:00 - 19:54 |
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