アザゼル
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アザゼル(Azazel、アザエル(Azael)、アジエル(Asiel)、アゼル(Azel)とも)は、堕天使にして、荒野の悪魔。堕天使のアザゼルと悪魔のアザゼルを別のものとして定義する説もあるが、ここでは同一のものとして説明する。
アザゼルとはそもそも、「神の如き強者」と言う意味のヘブライ語が語源であり、カナン人(古代パレスチナの住民)の神アシズ(Asiz)がルーツであると言われる。
容姿は様々に描かれるが、ひときわ通説的なのは7つの蛇頭と14の顔、12枚の翼を持っている、というものであろう。
時に(よくあることではあるが)ルシファー(サタン)と同一視される。
ジョン・ミルトン著「失楽園」には、彼が堕天使軍の軍旗を掲げる堂々たる姿が描かれている。
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[編集] 山羊の番人
旧約聖書「レヴィ記」には、ユダヤの習慣で山羊の放逐の話が載っている。 祭司が二匹の雄山羊を選び出し、一匹を神に、さらにもう一匹をアザゼルに捧げる、というものである。 すなわち、神に捧げられた方は、その血を贖罪に用いるために殺され、 一方、アザゼルに捧げられた方は、祭司が民衆全員の罪を告白した後、その罪を背負わせたまま荒野に放すのである。
このことから、アザゼルは「山羊の番人」とも呼ばれ、地獄においても山羊番をしているとまで言われた。
(ちなみに、この故事からスケープゴート:scape・goat(生贄の山羊・身代わりに罪をかぶる事)という言葉が生じた。 アザゼル自身がグリゴリのスケープゴートとなっている事は言うまでも無い)
[編集] グリゴリ(監視団)~旧約聖書偽典「エノク書」による~
アザゼルはそもそも、位こそ低いものの熱心な天使であった。神はそんな彼にある命を下す。それは、下界にはびこる悪を監視せよ、ということであった。その頃、下界はアダムとエヴァが楽園を追放されて以来、順調に人間が繁殖し始め、それに比例するように悪行も増えていた。アザゼルはかつて、人間創造に反対の立場を取っていただけに、二つ返事で下界に降りた。この時の彼を含めた監視団・総勢200人をグリゴリ(『神の子』、あるいはウォッチャーズ『Watchers』)と言った。
しかし、皮肉な事に、彼は降り立って間もなく人間の娘に惚れてしまう。グリゴリの一人・シェムハザの制止も空しく、仲間たちも同様に人間に惚れてしまい、その勢いを止める事は出来なかった。(その後、シェムハザも人間の娘と結ばれる)
[編集] 堕天
彼らは愛欲のために、神から授かった公務を放棄し、ついに娘たちと結ばれた。神は怒り、グリゴリを地に堕とした。 彼らがそんなことにめげることなど無かった。
そして、ついに人間に天界の秘術を教えてしまう(天文学、占星術、薬学、魔術、さらに剣や盾、胸当てなどの武具に関する知識、腕輪・指輪などの装飾品に関する知識、化粧法など多岐に渡る)。 これによって、人間の男は戦い争うことを知り、女たちは派手に装ったり男たちに媚びるようになったという。 さらに、彼らは娘たちとの間に子どもをもうけたが、どの子も生まれながらにして巨人(これらをネフィリムとも)であった。
神がこれを見逃すはずは無い。いよいよ怒り心頭ではあるが、ここではまだ手を出さない。
さて、当然ながら、ネフィリムが成長するためには大変な量の食物が必要である。 彼らはありとあらゆる食物を食らい尽くし今度は人間を食らい始めた。挙句の果てに共食い(当然、神の策である)まで始めた。 食料不足と、巨人たちへの恐怖からか、人間界にはさらに悪行(盗み、姦淫、殺人、詐欺など)がはびこってしまった。
程なくして、神の堪忍袋の緒は切れてしまった。
[編集] 大洪水
神は地上の悪を一掃するため、大洪水を起こす事にした。しかし、地上の悪もろとも善良な人間や動物たちの種を根絶やしにしてしまっては元も子もない。
そこで、神は正しき人ノアに対する伝言を天使ウリエルに命じた。 ウリエルは一旦、メタトロン(エノクのこと)のもとに寄り道し、その後、ノアに「大洪水」についての警告を伝えた。
一方、メタトロンはウリエルから事の次第を聞くと、まずノアのもとを訪ね、様々な秘術(造船術も)が記されている『天使の書』を授け、そして今度はかつての仲間であったアザゼルのもとに向かった。 話をしてみると、どうやらアザゼルも罪を自覚しており、自らの業を悔やんでいるようであった。メタトロンもこれには同情的になってしまい、彼が神に対して嘆願書を書くと、確かに届ける約束をしてしまった。
さて、アザゼルの嘆願書を携えたメタトロンは神のもとに向かう前にうたた寝をしてしまった。 すると、神が夢に現れ、もはやグリゴリに情状酌量の余地無し、との旨を彼に告げた。(白昼夢、と捉えることも出来る。) 不安になるメタトロンだが、程なくしてノアの方舟が完成する。 ついに神は予告どおりに大雨を休むこと無く降らせ、大洪水を巻き起こし、地上の悪を一掃した。
さて、その時アザゼルは大洪水に巻き込まれはしなかったものの、 大天使ラファエルに縛り上げられ、荒野の、一筋の光も差さない洞穴の奥底に投げ込まれた。 以後、彼は荒野に住まうようになったと言う。
[編集] 関連項目
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