アシカ亜目
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アシカ亜目 Pinnipedia |
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ナンキョクオットセイの子ども Arctocephalus gazella |
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分類 | ||||||||||||
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科・亜科 | ||||||||||||
アシカ亜目(あしか-あもく)は、海生哺乳動物の分類名。ネコ目(食肉目)の下位グループに位置づけられる。 かつては(陸生の食肉類である「裂脚類」=ネコ亜目 に対して)「鰭脚類(ききゃくるい)」と呼ばれたが、この呼称は今でも使われることがある。 なお、現生の海生哺乳類としては、アシカ亜目のほかに、クジラ目(鯨目)とジュゴン目(海牛目)の2つのグループがある。
アシカ亜目に属する動物は、冷たい海に生息している。 水中生活に適応しており、流線型の体型で、四肢が鰭(ひれ)状に変化している。 体はかなり大型で、最も小さいガラパゴスオットセイでも、成獣になると体重30kg、体長1.2mほどとなる。 最も大きいミナミゾウアザラシのオスでは、体長4mを超え、体重は2.2トンにもなる。
アシカ亜目のすべての種は広義の肉食であり、魚、貝、イカ、その他の海洋生物を捕食している。
目次 |
[編集] 分類
[編集] 最新の学説による分類
近年の遺伝子解析などに基づく分類である。
[編集] 伝統的な分類
伝統的な分類であり、現在ではこの分類は系統を反映していないことがわかっている。
- ネコ目(食肉目) Carnivora
[編集] 見分け方
- 長いキバがあるのはセイウチ。
- 前脚(前の鰭)が発達しており、前脚を左右同時に動かして泳ぐのはアシカ。
後脚(後ろの鰭)が発達しており、腰を曲げながら左右の後脚を交互に動かして泳ぐのはアザラシ。(アザラシの方がより水中生活に適応した形態であり、より効率的に長い距離を泳ぐことができる) - 前脚で上体を起こし、後脚を前に向け、主に前脚を使って陸上を上手に移動することができるのはアシカ。
前脚で上体を起こすことがほとんどできず、後脚は後方に伸ばしたままで、陸上では前脚を補助的に使用するものの、全身の蠕動運動によって這って移動するに近いのはアザラシ。 - 耳たぶがあるのはアシカ、耳の部分に穴が開いているだけなのはアザラシ。
[編集] 分類小史(独立起源説と単一起源説)
鰭脚類が、陸生の肉食動物から、海に再適応する形で進化したグループであることは、疑いようがない。
だが、鰭脚類の分類については、かつてさまざまな議論があった。一方では、鰭脚類に共通の、陸生の原種が存在したはずであるとする主張があり、また他方では、アシカ類とアザラシ類は起源の異なるグループであり、両者の類似は、単に収束進化によるものである、とする主張があった。後の説は、具体的には、セイウチを含むアシカ類はアンフィキオン科(クマ類に近縁な化石グループ)から進化したものであり、アザラシ類の方は、これとは独立にイタチ科の仲間から進化してきたものとする考え方であった。この説に従えば、鰭脚類というグループは、平行進化をしたために一見似ているだけの、本来は互いに無関係な2つの動物群を含んでおり、厳密に言えば、1つの分類群とするのは正しくないことになる。
この独立起源説は、1980年代半ばまでは主流であったが、その根拠は頭骨や耳の構造などにおける両者の違いや血清学的な研究にあり、さらに、両グループの初期の化石が、アシカ類は北大西洋、アザラシ類は北太平洋と、異なった地域からしか発見されていなかったことも、この説の正しさを裏づけるように思われた。
しかしその後、第1に肢の骨格の構造の研究から、第2に近年の分子生物学的研究、すなわちミトコンドリアDNAの分析から、鰭脚類はアンフィキオン科を祖先とする単一の系統である、とする説が有力となった。この説は、漸新世後期の地層から発見された最も原始的な化石の詳しい研究によっても裏づけられた。現在では、かつての独立起源説に替わり、この単一起源説が広く受け容れられている。
[編集] 鰭脚類の起源
かつて海の世界の生態系には、魚竜、首長竜、モササウルス類などの大型爬虫類が君臨していた。彼らは中生代の末に、陸上の恐竜たちとともに絶滅したが(約6500万年前)、それから約1300万年が経った始新世前期(約5200万年前)、再び陸上から海の世界のニッチ(生態的地位)に進出した、2つの脊椎動物のグループがあった。1つは肉食性ないし雑食性の先祖をもつクジラ類、もう1つは草食のカイギュウ類であり、いずれも哺乳類であった。
新生代の第2の時代である始新世は、哺乳類の「第二次の適応放散」の時代であり、齧歯類や奇蹄類、偶蹄類のような新しいタイプのグループが古い哺乳類のグループを駆逐したが、哺乳類が海や空に新たな生活圏を見出したのもこの時代であった。
クジラ類は、海に進出した当初は(ちょうど現在の鰭脚類と同じように)沿岸にすむ水陸両生生物であったが、その後水中生活に特化し、現在のような、沖合いでの生活に適応した。このことにより、再び沿岸性の肉食動物というニッチに空きができたが、始新世の次の年代である漸新世の終わりごろになって、そのニッチに進出する形で進化したのが鰭脚類とである。鰭脚類はその後、ダイナミックな適応と進化を遂げたが、クジラ類のように外洋で生活する種を生み出すに至っていないのは、おそらく外洋のニッチがすでにクジラ類によって占有されており、進出する余地がないからだろう。
なお、鰭脚類よりわずかに早い漸新世後期に、デスモスチルス類(束柱類)が海に進出しているが、これはごく小規模なグループであり、長くは存続しなかった。
鰭脚類は、北太平洋の北東側、すなわち北アメリカ側で発生したと考えられる。鰭脚類の祖先と考えられるアンフィキオン類は、始新世後期以降、第三紀を通じて北半球で繁栄した食肉類のグループである。蹠行性の歩き方や、大型で四肢の短い体形はクマに似ているが、頭部や歯列はオオカミによく似ていた。