脊索動物
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脊索動物門 Chordata |
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脊索動物(せきさくどうぶつ)とは、動物の分類群のひとつで、トカゲ、ヒトなど脊椎(背骨)をもつ動物である脊椎動物と、それと近縁な動物群であるナメクジウオなどの頭索動物、ホヤ類などの尾索動物(被嚢動物)の3つのグループをあわせて呼ぶときの名称。分類上は脊索動物門として取り扱われる。また、絶滅した動物グループで、初期の脊椎動物に近い位置づけのコノドントもこのグループに含まれる。
[編集] 特徴
- 単一の「背側神経索」を有する。背側神経索とは、体の背側にある中空の神経索のことで、管状神経系である。脊椎動物ではこれは中枢神経系(脳と脊髄)にあたる。
- 軟骨でできた棒状組織である「脊索」をもつ。ただし、脊椎動物では、発生過程で脊索より後に脊椎が形成されると、通常は消失する。ヤツメウナギなどでは脊椎が形成された後、成体でも残る。
- 咽頭部に「鰓裂」を有する。ただし、陸棲の脊椎動物では鰓裂は発生初期に見られるのみで、その後は頭頚部の諸器官(咽頭弓など)に形を変えるため、成体では見られない。
- 咽頭部の腹側に立柱と呼ばれる器官をもつ。脊椎動物は、立柱の代わりに甲状腺をもつ。
- 筋節(V字型の筋肉が胴から尾にかけて並び、節状に連なったもの)をもつ。
- 赤血球には、酸素と結合能のあるヘモグロビンが含まれる。また、動脈は心臓から出ると、途切れることなく静脈につながり、また心臓に戻る「閉鎖血管系」をもつ。
- 体の構造は、基本的に左右対称である。
[編集] 分類
18世紀に発見された当時、ナメクジウオは軟体動物のナメクジの一種であると考えられていた。また、ホヤも同様に軟体動物に分類されていた。1840年代に入ると、ナメクジウオは脊索、鰓裂、背側神経索をもつことが明らかにされ、脊椎動物との類似が指摘されるようになった。1866年、コワレフスキー (A. Kowalrvsky) はホヤ類の幼生が尾部にもつ軸索状器官が、脊椎動物やナメクジウオの脊索と相同であることを示した。これによって、脊椎動物、ナメクジウオを含む頭索動物、およびホヤを含む尾索動物、が単系統群であることが広く受け入れられるようになった。
その後は、脊椎動物を「脊椎動物門」として扱い、頭索動物と尾索動物をまとめて「原索動物門」(Protochordata) として扱われることもあった。しかし、尾索動物と頭索動物とは「脊椎動物に近い」という便宜的な理由から同門として扱われていた側面があり、それらの系統間の類縁関係はそれほど近くはなく、むしろ頭索動物と脊椎動物との間の方が近いことがわかったため、これらすべてを脊索動物としてまとめて扱う分類が主流になっている。