シュトゥルムフォーゲルII
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シュトゥルムフォーゲルII | |
型式番号 | VF-22 |
所属 | 地球統合軍 |
乗員 | 1名 |
開発者 | ゼネラル・ギャラクシー社 |
空虚重量 | 9,340kg (YF-21 9,550kg) |
機関 | 新中洲重工/P&W/ロイス FF-2450B 熱核バーストタービン×2 |
推力 | 41,200kg (大気圏内) 65,200kg (大気圏外) |
スラスタ | P&W HMM-6J |
標準武装 | エリコーン AAB-7 対空ビーム砲×1 マウラー REB-22 レーザービームガン×2 ハワード/ジェネラル GV-17L ガンポッド×2 ビフォース BML-02S マイクロミサイルランチャー×4 ハワード PBS-03F ピンポイントバリアシステム×1 スタビライザー兼シールド×2 |
選択装備 | 新中洲/OTEC FBF-1000A フォールドブースター 専用FASTパック |
ファイター時:Fighter mode | |
全長 | 19.62m |
全幅 | 15.36m |
全高 | 4.04m |
最高速度 | 高度10,000m:M5.07 (YF-21 M5.06) 高度30,000m以上:M22 (YF-21 M21) |
VF-22 シュトゥルムフォーゲルII(Sturmvögel II)は、SFアニメ『マクロス7』および関連作品に登場する架空の兵器(航空機)。本項では試作機に当たるYF-21についても記述する。
愛称のSturmvögelとはミズナギリドリ科の海鳥(ウミツバメなど)のドイツ語名。第二次世界大戦中ドイツ空軍が使用したジェット戦闘機(爆撃型)メッサーシュミットMe262A-2aの愛称でもある。
目次 |
[編集] 機体解説
AVF(Advanced Variable Fighter:次世代可変戦闘機)として試作機であるYF-21を経て、2042年に制式採用された最新鋭機。スーパーノヴァ計画の競争試作に敗れ、次期主力機の座をVF-19エクスカリバーに譲ったが、優秀な設計・性能を捨てるのは惜しいと判断され、VF-17ナイトメアの後継となる特殊任務機に採用された。
AVFの基本仕様である熱核バーストタービンエンジン、単独フォールド性能、ピンポイントバリアシステムなどを備えた上で、ゼントラーディ系技術を得意とするゼネラル・ギャラクシー社らしく、最新のオーバーテクノロジーを多用しており、意欲的な実験的機体という性格を持つ。高度なアクティブステルス性能を含め、技術的にはVF-19を凌ぐ先進性を秘めている。
外見上の特徴として、バトロイド時の両脚をエンジンブロックとせず、ファイターモードでは機体下面に格納する方式をとっている(ガウォークモードでは格納室内のスライドシャッターからホバリングエアが噴射される)。格納室は平面形状のプレートカバーで覆われ、機体下面のステルス性を高めている。また、このプレートカバーはウェポンステーションを兼ね、ガウォークモードではエアスカートとして揚力を発生するなど非常に効率よく設計されている。メインスラスターには三次元推力偏向ノズルを採用している。
最新の複合素材を使用した主翼や脚部、胸部、腕部の装甲は、柔軟に伸縮して断面積や形状を変化させることができる。主翼は高速飛行時は薄く小さく、低速飛行時は厚く大きくなり、最適な揚力を獲得できる。また、左右の翼面形状を非対称に変えて、大胆な挙動を取ることも可能。脚部・胸部・腕部はファイター時に収縮して、収納スペースや機体断面積を削減するメリットがある。
バトロイドモードでは、脚部をエンジンと別体化したことで、ゼントラーディ軍の傑作バトルスーツクァドラン・ローを思わせるシルエットとなる。実際、クァドラン系バトルスーツのキメリコラ特殊イナーシャ=ベクトル・コントロールシステムの改良型を採用し、重力制御を用いた高機動戦闘を行える。標準武装は頭部のレーザー対空砲、両腕のレーザー砲、ケースレス式ガンポッド2丁、機体内蔵のマイクロミサイルランチャーなど。大型の機体でペイロードに優れ、目標へのピンポイント攻撃で威力を発揮する。オプションのファストパックはステルス性能を損ねないよう、下面プレートカバーに密着するコンフォーマル式のものが用意されている(バトロイド時は腰部両脇に配置される)。
外見上YF-21との差異は判別しづらいが、最大の変更点はアビオニクスのBDIシステム(後述)が殆ど廃された点である。操縦系は脳波サポート付きながら従来の手動式となり、コクピットキャノピーも視界優先の形状に変更された。その他、頭部モニターがモノアイからゴーグル型になり、ウェポンステーションが改良され、機体の軽量化により若干速度性能が向上している。本機は高コストで生産数が少ないため、2047年時点でエースパイロット用のS型(VF-22S)以外のバリエーションは確認されていない。『マクロス7』作中では、マクロス7艦内で試験的に2機が製造され、マクシミリアン・ジーナス艦長、ミリア・ファリーナ・ジーナス艦長代行が往年のコンビネーションを見せた(作中でマックス機は「スターゲイザー作戦」時のコードネームとしてブルーゲイザーと呼ばれている)。また『マクロス ダイナマイト7』では、ダイアモンドフォース隊のガムリン木崎もこの機体を受領している。
余談ではあるが、VF-11D改用のサウンドブースターポッドを装備した本機のラフイラストが存在する。これは主翼を45度下方に傾けた状態で、その折れ曲がった部位に接続されている。なお、メカデザインを担当した河森正治曰く「マックス艦長も歌うという案もあったんですよ。さすがにそこまでは出来なかった」とのこと。
[編集] YF-21
OVA『マクロスプラス』に登場したVF-22の試作型。2040年、惑星エデンのニューエドワーズ基地において、VF-19エクスカリバーの試作機であるYF-19と統合軍の採用コンペティションを競い合った。コールサインはΩ1(オメガワン)。性能試験に使用されたのは2号機で、バックアップ用の1号機と3号機も存在する。開発主任兼テストパイロットはゼントラーディ出身のガルド・ゴア・ボーマン。優秀な頭脳と飛行技術を持つ彼は、YF-21のシステムの一部ともいえる存在で、YF-19が地球へ無断出撃した際には、民間人ながら軍から追撃出動要請を受けている。その際、2号機は地球上で暴走した無人戦闘機ゴーストX-9と交戦するが、ゴーストの圧倒的な機動力に翻弄される。撃墜寸前にまで追い詰められたYF-21は、ゴーストの機動力に対抗するため、最後の切り札として飛行に不要な四肢を排除し、エンジンのリミッターを解除。凄絶なドッグファイトの末、特攻で撃墜に成功するが、機体は大破しパイロットも過酷なGフォースで絶命した。
[編集] BDIシステム
YF-21は革新的な技術として、操縦・火器管制系のアビオニクスにBDI(Brain Direct Image)システムを搭載している。これはパイロットと機体を神経接続し、人馬一体ならぬ人翼一体に近づけるシステムである。機体各所の光学センサーで捉えた映像はパイロットの脳内へ直接投影され、パイロットは目を瞑っていても機体全周囲の視界を浮かべることができる(接近するミサイルの軌道予想やレーダー波など、肉眼では視認できないものすら映像化される)。これにパイロットが返すアウトプット、つまり機体操作命令も、脳波を電気信号として検出し、その意思を機体各部にダイレクトに反映する(新素材を用いた主翼の形状変化も、脳波により制御される)。従来の空中戦(ドッグファイト)では、パイロットは首を振って標的を視認し、手足でレバーやペダル類を駆使するという忙しい動作が必要であったが、BDIシステムでは「脳」だけを働かせ、黙想状態でイメージするだけで、機体に同化し思うがまま自在に操ることができる。これは兵器としてだけでなく、有史以来鳥のように空を飛びたいと願っていた人類にとって究極の飛行システムといえた。またバトロイド形態においては、四肢を文字通り自分の手足の様に操る事が可能であった。
しかし、弱点として、パイロットに高度の精神集中力が要求される=量産レベルには向かないことと、その集中が乱れたとき予測不能な挙動や操縦不能に陥ってしまうことが懸念された。実際、スーパーノヴァ計画のテスト中に原因不明の事故を起こし、あわや墜落という事態に遭っている(この件については、テストパイロットのガルド・ゴア・ボーマンの肉体・精神状態に起因するとの見方もあったが、公式記録上には残っていない)。結局、複雑で高価なシステムも相まってVF-22では手動兼用型に戻されてしまったが、BDIの可能性はまだ開けたばかりで、今後の発展が期待される。
また、本機は地球上でゴーストX-9と対戦した際、飛行時のデッドウェイトとなる手足を捨てた超高機動戦用のハイ・マニューバ・モード(別名:リミッター解除モード)で一騎打ちを挑んだ。エンジンに掛けられたこのリミッターは、機体限界というよりパイロットの「肉体限界」に合わせて設定されており、解除するには文字通り命懸けの覚悟が必要となる。有人機として大きな問題があるモードであるが、上記の理由からタイムリミットが付与された上で、あくまで緊急用としてVF-22以降も継承されている。
[編集] 競争試作の敗因
スーパーノヴァ計画におけるYF-21とYF-19のパフォーマンス評価は非常に拮抗し、判定は優劣付けがたいものであったが、最終的に明暗を分けたのは生産コストの差だったと言われる。最新技術のBDIシステムや特殊変形翼などは、量産ラインやメンテナンス体制の整備に莫大な予算を要することが予想され、この点で従来型のテクノロジーをまとめ上げたYF-19の方が賢明な選択肢となった模様である。YF-21はAVF計画に基き、最高レベルの技術を集約した機体だったが、その理想主義は現実的な課題に阻まれることになった。しかし、その高性能は少数精鋭の特殊作戦機に相応しく、VF-19に遅れること1年、VF-22シュトゥルムフォーゲルIIとして正式採用の運びとなった。
[編集] 関連項目
- ノースロップ/マクドネル・ダグラス YF-23ブラックウィドウII (デザインモチーフとなった実在する試作戦闘機)