スコッター
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スコッター(squatter)とは、都心の廃屋・廃ビルや他人の敷地や家屋の不法定住者、又はそうした住宅のこと。主に、アメリカや東南アジアなどの発展途上国の大都市で見受けられる都市問題(インナーシティ)の一つである。
スクオッターやスクウォッターとも呼ばれ、日本語では不法居住者もしくは不法住居区と訳される。
この語は、本来はオーストラリアのニューサウスウェールズの公有地の不法占拠者を意味する言葉であった。
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[編集] スコッターの発生
大都市は地方と比して就業機会に恵まれ、生活水準が高いことから地方住民が大量に流入することがある。しかし、大都市には流入する人間を雇用し、養うだけのキャパシティがなく(=産業化なき都市化)、あぶれた人間が都心の廃屋や廃ビル、他人の敷地などに居座ったり勝手に住居を建築したりする。これによって、スコッターが発生する。
基本的に、スコッターは貧困層に集中することが多いが、その原因は貧困だけではなく貧困と密接に関連している人種差別が背景にあることが多い。それゆえ、スコッターの問題にはセグリゲーションの問題が絡むことが多い。
又、都心の劣悪な住環境や行政サービスにもその一因があるとされる。
後述するが、スコッターは日本よりもむしろアメリカや東南アジアのような発展途上国で頻繁に見られる現象である。
[編集] スコッターの問題点
- 正規の居住者ではないことから日常生活を営む上で必要な電気や水道といったライフラインを盗電や不正使用といった形で使用している。
- スコッターは貧困層や低賃金層に占める割合が多いことから、犯罪に手を染めするものも多く、治安の悪化につながるおそれがある。
- スコッターの集中によって、その地域がスラム化することがある。
- 不法居住であることから、就業や教育の面で不利となることが多く、各種行政機関による公的支援を受けられないこともある。
- スコッター滞在によって、建物や敷地を荒廃させることになる。
- 都心での行政サービスの質を悪化させる。
- 一度、スコッターになると容易にその生活を脱出させることができず、階層の固定化が生じる。
- 階層の固定化とも関連するが、階層の固定化と連動して居住地域の固定化や人種や所得による分断も生じる。
- 衛生状態が芳しくなく、医療の整備も遅れていることから感染病が蔓延するおそれがある。
- 他人の敷地や家屋を不当に占拠することから、生活権や財産権を侵害している。
[編集] スコッターへの対策
- 貧困層への援助の充実や教育や就業の機会の拡充。
- 都心の住環境や行政サービスの改善。
- 都心における廃ビルや廃屋の取り壊しや修繕。
などが挙げられる。
スコッターへの対策はそれ自体が都市や貧困、福祉に関する課題と密接に関連していることが多く、単一的な政策によって容易に解決できる問題ではない。
[編集] 日本でスコッターが少ない理由
前述のようにスコッターはアメリカや東南アジアのような発展途上国に多い現象である。ここでは、日本でスコッターが少ない原因について記す。
- 日本の建物はスクラップアンドビルドであることが多く、そもそも廃屋や廃ビルが少ない。
- スコッターを生む要因の一つに貧困とその背景の人種問題があるが、日本は皆無ではないとは言え人種問題が他国のそれよりも問題となっていない。
- 日本は中流社会と称されるほど横並びの所得水準であることから、欧米ほどの貧困層が少ない。
- 上記の要因とも関連するが、所得水準が横並びであることから、所得や人種による居住地域分断ということが少なく(全く存在しないわけではない)、居住地域が画一的であるから。
- 低賃金層や貧困層の生活の場となるドヤ街のような場所もあり、他人の敷地をわざわざ不法占拠までして生活する必要がないから。
等が挙げられる。