ストレートフォトグラフィ
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ストレートフォトグラフィ (Straight Photography) とは、ぼかしや、画面構成についての演出、合成といった技巧を用いることなく、人間が見たままのようにシャープな視線で、あるがままの風景、人物等が撮影された写真作品およびそのような表現手段・表現形式のことである。
ストレートフォトグラフィは、もともとは、19世紀から20世紀初頭のピクトリアリスムにおいて、ぼかしなどの技巧やモデル等の特別な配置を用いて、絵画的な作品を制作する傾向が著しく強かったのに対して、写真を絵画とは独立したものととらえ、写真(カメラ)本来の特性・独自の機能を重視し、写真にだけ可能な新しい表現形式を確立することによりその地位を高めることを目的として、アルフレッド・スティーグリッツらにより主張され、始められた表現手段である。このこともあり、スティーグリッツは、しばしば「近代写真の父」と呼ばれる。
その後、ストレートフォトグラフィは、上記の目的を終えたあとも、多くの写真家により意図的に表現手段として選ばれた。 現在では、その本来の目的はまったく失われ、技巧を用いないというその特質のゆえに、かえって、あたりまえの、平凡でごく一般的な表現手段として、アマチュアの間でも普及している。
スティーグリッツ以降、ストレートフォトグラフィを表現手段として用いた写真家は、
- ポール・ストランド
- エドワード・ウエストン、アンセル・アダムス、イモージン・カニンガムなどのグループf/64の写真家
- ドロシア・ラング、ウォーカー・エヴァンズなどのFSAプロジェクトの写真家
- ベレニス・アボット
- アンドレ・ケルテス
- アンリ・カルティエ=ブレッソン
- ビル・ブラント
- アウグスト・ザンダー
など、第二次世界大戦前だけでも枚挙に暇がない。
一般的には、戦前においては、ダダ(フォトモンタージュなど)、シュルレアリスム(マン・レイなど)、バウハウス(モホリ=ナジ)などの影響の強いヨーロッパよりは、アメリカにおいて顕著な傾向であるといえる。
また、報道写真において、一般的というよりむしろ当然の表現手法となっている。