タイプR
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タイプR(TYPE R)とは、自動車のスポーツグレードに用いられる名称である。現在では本田技研工業(ホンダ)で生産されていた車種のスポーツグレードを指すことが多い。以下はホンダのタイプRについて述べる。
サーキット走行の使用も視野に含めたハイスペックな走行性能を持つが、その反面、市街地走行では硬派な足廻りがたたって乗り心地が良いとは言い難いのも特徴である。
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[編集] 過去に使用された車種
[編集] 歴史
1990年に、国産スポーツカー最高額のNSXが発売され、その高性能さに一定の評価は得られたものの、充実した快適装備とラグジュアリーな乗り心地の味付けで「誰にでも扱いやすいスポーツカー」とも評された。それ故に腕に覚えがあるドライバーのスポーツ走行では、少なからず不満が出ていた。また国内のライバルとの数値上の戦いでもそれらが足かせとなり、その値段やカタログスペックのようなアドバンテージは認められなかった。
これを払拭するために、開発陣が再度NSXと向き合って出した答えがNSX・タイプRである。快適装備を省いて徹底的に軽量化を推し進め、日常使用が不向きなガチガチに固められたサスペンションなどサーキット走行使用を前提に造られたNSX・タイプRは、狙っていた評価を得られ、1992年から1995年までに500台あまりが生産された。
1995年10月に、NSX・タイプRの販売終了と重なるように販売開始されたのがインテグラ・タイプRである。1993年から販売されていた2代目インテグラは、アメリカ市場向きな丸目4灯のフロントマスクとスポーティーカーとして標準的なスペックのため、日本国内においては目立った販売成績が残せないでいた。マイナーチェンジを機にテコ入れ策として、日本人になじむように当時のホンダ車らしい顔つきになる横長のライトに変更したのと同時に、タイプRが追加された。
(イギリスはじめ、海外市場では丸目4灯のタイプRが少数ながら販売されていた模様)
インテグラ・タイプRは、NSX、そしてNSX-Rを手掛けた開発陣によって企画と開発が進められ、車体重量の軽量化の他に、エンジンに手作業加工部分を追加しての高出力化、NSX・タイプRに搭載されたレカロ社製バケットシート(材質は異なる)、モモ社製ステアリング、チタン製シフトノブ、専用車体色のチャンピオンシップホワイトと、販売ターゲット層の若者にとって雲を掴むような値段(970.7万円)のNSX・タイプRと同じ装備が、現実的な値段(222.8万円)の車に搭載されることになり、大ヒットを記録した。1997年には、6代目シビックにもタイプRを設定。インテグラよりも安価(199.8万円)に設定されてさらに裾野を広げた。タイプRはまさに1990年代のホンダ車のスポーツ精神を具現する言葉となった。
2001年7月に、インテグラがフルモデルチェンジして3代目(DC5型)に移行し、販売開始当初からタイプRがラインナップされていた。ホンダ車初のブレンボ社製ブレーキの採用などで装備面を強化したり、先代よりもエンジン出力など性能数値的には上がっているものの、安全装備の標準搭載や衝突安全性を考慮したボディで総重量が100kg以上の重量増となったことで、先代が持っていたタイプR特有の荒々しさがスポイルされたという不満の声もあがり、第二世代のタイプRは賛否両論の船出となった。
2001年12月、欧州仕様のシビック・タイプRが日本でも販売を開始。この7代目シビックのタイプRの生産は、全てイギリスのホンダの工場で生産され、逆輸入車として日本に上陸した。ただし、販売ディーラーは同じシビックを扱うプリモ店で、日本仕様の装備が施されていた。
2002年5月、前年に大がかりなマイナーチェンジを施したNSXにタイプRが復活した。先代よりもさらにこだわりある軽量化が随所に図られて、ボンネットやリヤウィングにカーボンファイバーが採用され、以前より重くなっていた車体重量の軽量化に寄与している。さらに空力性能にもこだわりを見せ、ボンネットにエアダクトを付けたり、ボディ下面にディフューザーを搭載し、マイナスリフト(ダウンフォース)効果を生み出して超高速走行時の安定性を飛躍的に向上させて、あらゆる面で先代を凌駕した。先のマイナーチェンジで、デビュー以来のリトラクタブル・ヘッドライトが廃止されて固定式ライトに変わった顔立ちに好き嫌いは分かれるものの、タイプRが何よりも重んずる運転性能面からの観点とすれば、2代目NSX・タイプRは上手く行ったと評価されている。
2005年2月、市販車による国内レースの最高峰、SUPER GTのGT500クラス参加のホモロゲーション取得用に、NSX・タイプRをベースにしたNSX-R GTが5台限定で販売した。前後バンパーにカーボンファイバーを使用したり、5台のために金型を製作した為、価格は5000万円であった。ベースから全長全幅は拡大されたものの、重量・脚廻り部分・エンジンなどの主要な性能部分は全く同じであるが、それでも1台販売した。また納車には開発責任者の上原繁が立ち会ったという。
2005年9月、シビックのフルモデルチェンジに伴い、2代目シビック・タイプRの生産が終了された。
2005年12月、NSXの生産終了に伴い、2代目NSX・タイプRも生産が終了された。
2006年7月、3代目インテグラの生産終了に伴い、タイプRが再度絶版となった。
2007年3月29日に、8代目シビックのタイプR(セダン)が誕生した。
エンジンは、2代目シビック及びインテグラタイプRと同じK20Aだが、吸排気系のファインチューニング、圧縮比の向上などにより、5ps向上(2代目シビックタイプRよりは10ps向上)した225psとなった。
シートは、これまで採用されていたレカロ製ではなく、新たにホンダオリジナルのR specシートが採用された。エンジンスターターは、タイプRでは初のプッシュスタートシステムを採用している。
なお、欧州ではハッチバック型タイプRが、2007年3月より販売された。
[編集] 主な特徴
- エンジンへの高度のチューニング
- 専用セッティングのハードサスペンションによる高い走行性能とハードな乗り心地
- 遮音材・メルシート等を省く徹底的な軽量化
- ボディ各所への補強パーツ類の追加による高剛性ボディ
- タイプRだけの専用装備(後述)
[編集] 主な専用装備
- 「チャンピオンシップホワイト」と呼ばれる専用塗装
- 赤いホンダエンブレム
- 専用のエアロパーツ
- レカロ社製バケットシート(一部車種)
- ブレンボ社製ブレーキキャリパー(一部車種)
- モモ社製ステアリング
- チタンシフトノブ(アルミニウムの車種もある)
- メーター類のデザインの相違
- 専用アルミホイール