タイムカプセル
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タイムカプセル (time capsule) とは、カプセル状の容器にその時代のものを入れて地中に埋め、ある年月後に開けるものである。
日本で知られるものとしては1970年の日本万国博覧会の時、松下電器と毎日新聞により企画、製作され大阪城公園に埋められたタイムカプセルがあるが(6970年開封予定)、学校においての卒業記念や、会社の創業○周年記念、建物竣工記念などでつくられることがある。
「タイムカプセル」という用語の登場は、後述のようにニューヨーク博覧会とされるが、貴重品を後世のために隠しておくというアイデアは遠くメソポタミア文明にまで遡る。現存する人類最古の文学であるギルガメシュ叙事詩の冒頭は、ウルクの城壁の礎石の中にある銅の箱の見つけ方から始まる。この箱にラピス・ラズリの銘板に書かれたギルガメシュの物語が保管されており、ここから彼の物語が語られる。実際にも、メソポタミアの都市遺跡の城壁の中に隠されていた小部屋の中から5,000年前の箱が発見されている。
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[編集] さまざまなタイムカプセル
現在のタイムカプセルという言葉の直接の起源は1937年になる。1939年ニューヨーク博覧会の準備中、ある人が文明が崩壊しているかもしれない5,000年後(西暦6939年)のための「時限爆弾(タイムボム)」を埋めることを提案した。このアイデアは採用され、より穏当な「タイムカプセル」という言葉が使われるようになった。1939年、博覧会においてウェスティングハウス社の展示の一部として 800ポンド(363kg)、内径 6.5インチ(16.5cm)のタイムカプセルが製作された。ウェスティングハウス社の作った銅、クロム、銀の合金でできたカプセルは鉄より硬いと宣伝され、糸巻、人形、本、主な穀物の種を入れた小瓶、顕微鏡、RKO映画の15分間のニュース映像、シアーズ・ローバック社の通信販売カタログや辞書や年鑑を撮影したマイクロフィルムなど日用雑貨や当時の記録が収められ、フラッシング・メドウズ公園の会場内の地下 50フィート(15m)に埋められた。1965年、同じ場所で開催された1965年ニューヨーク博覧会では、2個目のカプセルが 10フィート隣の同じ深さに埋められた。二つのカプセルは同じ年(西暦6939年)に開封される予定になっている。
ジョージア州アトランタのオグレソープ大学(Oglethorpe University)はこれに先立つ1936年、「文明の地下室(Crypt of Civilization)」[1]と呼ばれる小さな地下室を学内ホールの地下に作り、様々な書籍を撮影したマイクロフィルムや映像テープ、音声テープなどを収納してステンレス鋼のドアで密封し、西暦8113年に開けることにしている。これは「タイムカプセル」という言葉のできる前の物だが、現代の意味のタイムカプセルの最初のものとみなされている。
以後、地中に埋められたタイムカプセルは枚挙に暇がないが、宇宙に放たれた「タイムカプセル」もある。パイオニア10号・パイオニア11号に取り付けられたパイオニア探査機の金属板、およびボイジャー計画にともなうボイジャー探査機のレコード盤は遠い未来に地球外知的生命体が発見することを期待して設置された。また、2007年または2008年に打ち上げられるKEO衛星は、未来人に宛てた人々のメッセージが集められたDVDおよびDVDプレーヤーの組み立て方説明書を収容したもので、フランスの芸術家・科学者であるジャン=マルク・フィリップが発案し、UNESCO・ハチソン・ワンポア・欧州宇宙機関により後援されており、50,000年後に地球に戻る予定である。
[編集] タイムカプセルへの批判
タイムカプセルには批判もある。歴史学者ウィリアム・ジャーヴィス(William Jarvis)は、こうして意図的に作られたタイムカプセルは役立つ歴史的資料を残さないと述べている。これらのカプセルに詰められたものは、新品の汚れていない状態でも「役に立たないごみ」同然のもので、限られた価値しか持たない人工物しか入っておらず、未来の歴史研究家に対し寄与するところがあまりないという。これに対し、突然の火山噴火によって埋もれたポンペイ遺跡のような「意図せざるタイムカプセル」は、暮らしぶりを描いた壁画や家々の壁に書かれた選挙の候補者を宣伝する落書き、家財道具、いろりに放置された食べ物、灰に埋まった人の跡にできた空洞など、古代ローマの日常生活について知る手がかりが豊富に残されている。歴史家の中には、作った人の日常生活が分かるもの、たとえば日記帳、スナップ写真、書類などを入れればタイムカプセルの歴史的価値が上がるだろうと示唆している者もいる。
また、マイクロフィルム、磁気テープ、DVDなど記録する媒体自体が古くなったり再生できなくなるなどの問題、記録した言語が滅びてしまう問題、数千年先の未来まで一度も開けないと途中の世代がその中身の読み方を忘れてしまい価値も分からなくなるという問題、途中でタイムカプセルを埋めた場所が分からなくなる問題(実際に埋められたタイムカプセルの多くが、開ける時になって場所が分からなくなったり、地下水で破損したりしている)も提起されている。
[編集] 参考文献
- William Jarvis (2002). Time Capsules: A Cultural History. ISBN 0-7864-1261-5
- Janet Reinhold (1993, 2000). A Sampling of Time Capsule Contents. ISBN 1-891406-30-2
[編集] 外部リンク
- 松下館タイムカプセル
- International Time Capsule Society at Oglethorpe University
- Capturing Time: The New York Times Capsule; an American Museum of Natural History exhibition
- The future of the future - Seattle Weekly
- Project Keo
- Time Capsules from Tales of Futures Past
- Genesis Landing Site Monument Installation
- Yahoo! Time Capsule