タッグ・オブ・ウォー
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タッグ・オブ・ウォー | ||
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ポール・マッカートニー の アルバム | ||
リリース | 1982年4月5日 | |
録音 | 1981年-1982年 | |
ジャンル | ロック | |
時間 | 41分10秒 | |
レーベル | キャピトル、パーロフォン | |
プロデュース | ジョージ・マーティン | |
レビュー | ||
ポール・マッカートニー 年表 | ||
マッカートニーII (1980年) |
タッグ・オブ・ウォー (1982年) |
パイプス・オブ・ピース (1983年) |
タッグ・オブ・ウォー(Tug of War)は、1982年に発表されたポール・マッカートニーのアルバム。
目次 |
[編集] 解説
ビートルズの殆どの作品を手がけたジョージ・マーティンをプロデューサーに迎えて制作されたアルバム。マッカートニーは1980年からレコーディングにとりかかったものの、ジョン・レノンが射殺された事件のショックから一時期音楽活動を停止したため、アルバムの制作期間は長期に渡った。マーティンの進言により、この作品のセッションのレコーディングにはフィル・コリンズ、スティーヴ・ガッドやスタンリー・クラークをはじめとする豪華な演奏者が多数起用されている。ウイングスは正式に解散を表明したわけではなかったため、彼らが新たにグループにメンバーとして加入するのではないかとする憶測も飛び交った。また、マッカートニーのアイドル的存在だったカール・パーキンスや、スティーヴィー・ワンダーなどとのデュエット曲も収録されている。ワンダーとのデュエット「エボニー・アンド・アイボリー」はシングルカットされて各国で大ヒットし、同様にこのアルバムもアメリカやイギリスをはじめとする世界数カ国のチャートで首位を獲得した。これまではあえて避け続けていたビートルズ風のサウンド作りに回帰したことにより、このアルバムは評論家からも内容を高く評価され、1983年度のグラミー賞ではアルバム・オブ・ザ・イヤーにノミネートされている。
1993年に「ポール・マッカートニー・コレクション」と題し、当時の彼のスタジオ録音作品のカタログがすべてデジタル・リマスターを施されて再発売された際、殆どのアルバムにボーナス・トラックが収められていたが、なぜかこの作品には1曲として追加収録されることはなかった。そのため、レノンが殺害された時期に録音された「レインクラウズ」やシングルのカップリングとして発表された「コアラへの伝言」などといった、アルバムの収録曲から漏れた作品は現在もCD化されていない。
[編集] 楽曲
このアルバムで最も有名な楽曲はアルバムの最後を飾るスティーヴィー・ワンダーとのデュエット曲「エボニー・アンド・アイボリー」である。マーティンのスタジオがあったモントセラト島で書かれたこの曲は、双方にとって最もヒットした作品のひとつとなった。日本でもおよそ10万枚を売り上げている。作曲者としてワンダーの名はクレジットはされていないが、作曲も共同作業で行われたという。ちなみに、ワンダーにとってこのシングルが初のイギリスでの首位獲得曲となったことについて、マッカートニーは「この曲のレコーディングには随分時間をかけたが、それだけやっておいてよかった」と発言している。このアルバムには、彼らが制作したもうひとつの共作「ホワッツ・ザット・ユアー・ドゥイン」も収録された。また、「ゲット・イット」では、マッカートニーは彼の少年時代のアイドル的存在のひとりだったカール・パーキンスとデュエットしている。
このアルバムからの2曲目の全米トップ10ヒットとなった「テイク・イット・アウェイ」は、本来はリンゴ・スターの1981年のアルバム『バラの香りを』のために書かれたものだった。マッカートニーは自分で歌ったほうが適していると考えて自らレコーディングし、スターはスティーヴ・ガッドとツインでドラムを叩いている。
レノンの死後、ジョージ・ハリスンが彼を追悼して発表した「過ぎ去りし日々」は、レコーディングに元ビートルズの3人のメンバーが集結したことで大きな話題を呼んだ。当時マッカートニーはハリスンに自分の曲にも参加して欲しいと考え、「ワンダーラスト」のギターソロを彼に弾いてもらおうと思っていたという。"放浪癖"を意味するこの曲のタイトルは、彼がウイングス時代のアルバム『ロンドン・タウン』のレコーディングでヴァージン諸島に滞在していた際に、宿泊していたヨットの名前からきている。
「過ぎ去りし日々」でハリスンがレノンを偲んだように、マッカートニーも彼への追悼歌「ヒア・トゥデイ」を作曲した。この曲は発売から20年後のコンサート・ツアーで初めて演奏されたが、マッカートニーはそれまでも長年この曲をライヴで演奏しようと思い続けていたと語っている。
[編集] 収録曲
- タッグ・オブ・ウォー - Tug of War
- テイク・イット・アウェイ - Take It Away
- サムボディ・フー・ケアーズ - Somebody Who Cares
- ホワッツ・ザット・ユアー・ドゥイン - What's That You're Doing?
- ヒア・トゥデイ - Here Today
- ボールルーム・ダンシング - Ballroom Dancing
- ザ・パウンド・イズ・シンキング - The Pound is Sinking
- ワンダーラスト - Wanderlust
- ゲット・イット - Get It
- ビー・ホワット・ユー・シー - Be What You See
- ドレス・ミー・アップ・アス・ア・ラバー - Dress Me Up as a Robber
- エボニー・アンド・アイボリー - Evony and Ivory
[編集] チャート
[編集] アルバム
国名 | チャート | セールス | ||
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最高順位 | 登場週数 | 認定 | ||
アメリカ合衆国(ビルボード) | 1(3週連続) | 29 [1] | Platinum | |
英国 | 1(2週連続) | 27[2] | Gold | |
日本(オリコン) | 1 | 18[3] | 177,000 | |
スウェーデン | 1 | 10[4] | ||
オーストリア | 2 | 24 |
[編集] シングル
年 | 曲名 | 国名 | チャート | 最高順位 | 登場週数 |
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1982 | エボニー・アンド・アイヴォリー | 北米 | ビルボード/Hot100 | 1 | 19 |
1982 | エボニー・アンド・アイヴォリー | イギリス | ミュージック・ウィーク | 1 | 10 |
1982 | エボニー・アンド・アイヴォリー | スウェーデン | 2 | 9 | |
1982 | エボニー・アンド・アイヴォリー | スイス | 2 | 16 | |
1982 | エボニー・アンド・アイヴォリー | 日本 | オリコン | 26 | 17 |
1982 | テイク・イット・アウェイ | 北米 | ビルボード/Hot100 | 10 | 16 |
1982 | テイク・イット・アウェイ | イギリス | ミュージック・ウィーク | 15 | 10 |
1982 | タッグ・オブ・ウォー | イギリス | ミュージック・ウィーク | 53 | 3 |
1982 | タッグ・オブ・ウォー | 北米 | ビルボード/Hot100 | 53 | 8 |
[編集] 参考文献
- 『ポール・マッカートニー・コレクション⑬ タッグ・オブ・ウォー』日本盤ライナーノーツ、北野知行著、東芝EMI ASIN: B00005659M
- 『ビートルズ解散後の4人 愛と反目の日々』 デヴィッド・ベナハム編著、中村美夏訳、シンコーミュージック ISBN 13-978-4401613564
[編集] 外部リンク
オリコン週間LPチャート第1位 1982年5月24日付 |
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前作: 中島みゆき 『寒水魚』 |
ポール・マッカートニー 『タッグ・オブ・ウォー』 |
次作: 松田聖子 『Pineapple』 |