テンペ
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テンペはインドネシアなどの東南アジア諸国で大豆などをテンペ菌で発酵させる醗酵食品である。味は納豆に似ており、弱い臭気があるが、糸を引くことはない。
テンペを作るにはまず大豆を丸ごと煮てやわらかくし、砕いたりつぶしたりする。酸味料(多くは酢)を加え、テンペ菌と呼ばれるRhizopus oligosporus(接合菌に属するクモノスカビの一種)を含むタネを混ぜる。薄くのばして30℃程度で約24時間醗酵させる。良質のテンペでは豆が白い菌糸の層と織り合わされた状態となる。醗酵時間が長すぎると表面に黒い胞子が生成するが、これには害はない(質は落ちる)。アンモニア臭の少ない方が良質である。
テンペでは大豆タンパク質が醗酵によって消化されやすくなっており、また不消化でガスの原因となるオリゴ糖が特に減少している。伝統的なテンペ屋で用いるタネにはテンペ菌以外にも有用な細菌(ビタミンB12などのビタミンを生成する)を含むことが多いが、先進国では純粋培養したテンペ菌を用いるのが普通である。テンペは食物繊維も多く含む。
大豆以外の豆や穀物から作られるテンペもある。特殊なものとしてはココナッツから作られるTempe bongkrekがあるが、これには有害な微生物が混入して毒素を生成する場合がある。しかし豆や穀物のテンペではこのようなことは起きない。豆や穀物のテンペで、正常な色・質感・においがあれば安全である。
調理には、小さく切り、塩水や魚醤などに漬けて油で揚げることが多い。調理したテンペはそのまま食べたり、チリ、スープ、シチューなどに入れる。テンペは複雑なにおい(ナッツ様、肉様、あるいはキノコ様)を有する。テンペは冷凍することもでき、現在では多くの先進国で入手できる。
インドネシアでは他にこれに類似した食品としてダケとオンチョムが知られている。大豆、ココナッツなどの材料を問わず、クモノスカビを用いて発酵させたものをテンペ、クモノスカビと同じ接合菌のケカビを用いて発酵させたものをダケ、子嚢菌のアカパンカビを用いて発酵させたものをオンチョムと呼ぶ。
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