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納豆 - Wikipedia

納豆

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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醤油を入れてかき混ぜはじめた納豆
醤油を入れてかき混ぜはじめた納豆
藁に包まれた水戸納豆
藁に包まれた水戸納豆

納豆(なっとう)は大豆納豆菌によって醗酵させた日本の食品。現在では糸引き納豆の事を指す。

目次

概要

ヒマラヤ、中国雲南省から日本までの照葉樹林地帯にみられる食品であるが、日本における伝来経路は不明である。

日本においては、特に関東地方以北と南九州で好まれている。特有の匂いのためか、その他の地方(特に関西四国地方)ではあまり消費されなかったが、製法や菌の改良などで臭いを少なくしたり、含まれる成分の内「ナットウキナーゼ」の健康増進効果がテレビなどのメディアで伝えられるようになった結果、1990年代後半にはほぼ日本中で消費されるようになった。また、ビタミンKも豊富で、大豆由来のタンパク質も豊富であり、現在でも重要なタンパク質源となっている。総務省統計局の全国物価統計調査の調査品目に採用されているほどである。

ただし、一部マスコミが主張するような、ナットウキナーゼが直接体内の血栓を溶かすなどという現象は、現実にはあり得ない(ナットウキナーゼは分子量が大きいのでそのままの状態では腸から吸収されない)ので、非科学的な煽動に踊らされて過剰な期待を寄せることには注意を要する。

また、日本食に馴染みがない者にとっては、日本食の中の苦手とする代表的な食べ物の一つでもある。納豆菌が炭疽菌の仲間であることから「不用意に食べると感染症に掛かる」という誤解をしていた者もいた。

7月10日が「納豆の日」の日とされている。これは1981年、関西での納豆消費拡大のため、関西納豆工業協同組合が7・10の語呂合わせで制定したもの。1992年、全国納豆工業協同組合連合会が改めて「納豆の日」を制定した。しかし「納豆」「納豆汁」が冬の季語である事や、「納豆時に医者要らず」という諺があったように、もともと納豆の時期は冬とされている。そのため7月に納豆の日を設けることには異論もある。

2007年1月7日に放送された関西テレビフジテレビの「発掘!あるある大事典2」で、納豆がダイエットに効果があると報じられ、品薄状態になったことがある。しかし、内容データがねつ造されていたことが判明し、品薄状態も解消されるものと思われる。[1]

作り方

本来の納豆の作り方は、蒸した大豆をで包み、40度程度に保温し約1日ほど置いておくというもの。藁に付着している納豆菌の作用によって醗酵が起こり、納豆ができあがる。

近年は良質の藁を確保することが困難なこともあり、発泡スチロール容器や紙パックに個包装されて販売されるものが多数を占めている。この場合、蒸した大豆に純粋培養した納豆菌を混ぜ合わせ、容器に分けた状態で発送期間中に醗酵させるという方法が取られている。

納豆の糸(粘り気)の主成分は納豆菌が作り出すポリグルタミン酸である(後述)。

納豆と衛生面

苦手な人は納豆を指して「腐った煮豆」などと揶揄するケースも見られるが、納豆菌以外の有毒な菌類は製法上増殖できない。したがってこの場合腐敗ではなく醗酵として取り扱われる。納豆菌は通常、極めて耐熱性の高い芽胞となって藁に付着しており、100度で沸騰している湯に数分浸すと他の雑菌が煮沸消毒されて死滅し、納豆菌芽胞だけが生き残る。その後、37~42℃に保つと芽胞から納豆菌が発芽し増殖を始める。更に旺盛な繁殖力で、他の芽胞菌類より先に栄養となる物質を盛んに消費して、繁殖を阻む。

このことから、日本酒を作る際に、非常に熱に強く、繁殖力も旺盛な納豆菌が原料に混入すると、日本酒を醸す酵母よりも先に繁殖して酵母を駆逐してしまう。日本酒を仕込む酵母の仕込み期間中の食卓には、納豆は禁忌とされている所以である。

その一方でにはやや弱く、乳酸菌の活動によって生まれる乳酸によって活動が阻害される事がある。また技術開発の結果普及した匂いの弱いタイプの納豆では、活動がさほど活発ではない菌株が用いられており、これらは環境によって雑菌が繁殖する余地がある。また、納豆菌の天敵として細菌寄生性ウイルスファージ・バクテリオファージがあり、ファージ活動後に雑菌が繁殖する事もありうる事から、賞味期限内の消費が望ましい。

ちなみに茹でた直後で納豆菌繁殖前の大豆には、他の菌類が付着・繁殖する可能性もあるため、納豆を生産する工場では他の食品加工工場同様に、衛生面での配慮が常になされている。

以上のように正しい環境で製造された納豆であれば、衛生面は基本的に問題無い。ただし、プリン体を多く含むため、血中の尿酸値が高い人は痛風予防のために避けた方が無難である。

納豆の研究

納豆に関する研究は、少なくとも明治時代末期[1]から行われている。納豆の粘りに関する研究は、昭和30年代に初めて論文が書かれた[2]。主成分をポリグルタミン酸と言い、納豆は自分を守る為に作り出していることが分かった。

食べ方

工業的に製造された現代の納豆
工業的に製造された現代の納豆

最も典型的な食べ方はいわゆる納豆ご飯で、白米を炊いたご飯と、納豆を一緒に食べるもの。これは醤油和ガラシを加えてかき混ぜ、粘性のある糸が現れてから食べるのが一般的。鶏卵ウズラの卵、ネギミョウガ大根おろし鰹節など、様々な食品を混ぜて食べることも多い。北海道東北地方の一部では砂糖を混ぜて食べる人もいる。変わったところでマヨネーズを混ぜる人もいる。地方によっては、ご飯にかけずに納豆だけを食べる人もいる。

納豆をかき混ぜる際には、先に一度良くかき混ぜてから醤油やタレを加え、もう一度かき混ぜるのがおいしい食べ方とされる。これは、先にタレなどを加えると水分過多となってしまい、グルタミン酸(旨味成分)を含む粘りがあまり出なくなってしまうからである。また、ネギからしを加えると納豆のアンモニア臭を抑える効果があり、優れた薬味といえる。ネギやからしを途中で加えずに、最後に少しだけ載せた方がおいしいという人もいる(蕎麦のネギやわさびと同様)。 また、よくかき混ぜると、ポリグルタミン酸グルタミン酸にかえることができると言われているので、旨み成分を楽しみたい方は、よくかき混ぜてから食べる。

和風スパゲッティのトッピング、お好み焼きの具、カレーライスにかけるなどとしても用いられる。また納豆を叩き刻んで味噌汁に入れた納豆汁は、江戸時代までは納豆ご飯よりも普通に食卓に上っていた。

納豆は加熱することで匂いが強くなるので、好みが分かれるところである。ただし納豆天ぷらの場合、油で揚げることによって匂いがあらかた飛び、さらに天ぷらの衣で匂いが抑えられるのでむしろ食べやすくなる。

販売形態

近年では減っているが、「納豆売り」と呼ばれる行商人が納豆を売り歩くこともあった。売り声は「なっと~~、なっと~~ィ(語尾をあげる)」というものであった。

現在では主にスーパーマーケットの食料品売り場などで販売されている。

伝統的な包装方法は、納豆の製造で使用したをそのまま容器とするものであるが、現在では1960年代に普及した発泡スチロール容器に、タレと和カラシの小パックが付いているものが流通面で効率的なことなどから広く受け入れられ、一般的となっている。この容器は積み重ねられる形状になっており多くは3つを1セットとして売られているほか、そのままかき混ぜて糸を引くことができるように、底に凹凸が付けられるなどの工夫もなされている。

発泡スチロール容器の普及は納豆の消費拡大に大きく貢献したが、その一方で藁に比べると通気性が悪く、また納豆の臭い成分を吸着しにくいために、納豆独特の臭いがこもって強くなる傾向がある。この影響による風味の違いや、藁の持つ「自然食品」的なイメージを期待して、昔ながらに藁を用いた包装もごく一部の高級品や自然志向の商品に残っている。

バリエーション

干し納豆

干し納豆
干し納豆

茨城県特産。納豆を天日干しすることにより長期保存可能にした「干し納豆」も存在する。なお納豆を乾燥させても納豆菌は死滅しない。

元来は保存食であったとされるが、現在は納豆の入手できない海外へ旅行に行く際に持っていくケースがあるという。

食べ方としてはそのまま食べるほか、湯につけてもどす、お茶漬けにするなどがある。

揚げ納豆

干し納豆に近いが、これは納豆を油で揚げ、粘り気を取り去ったもの。納豆独特の臭いも目立たない。揚げても納豆菌が死滅しないように、特別な製造技術が用いられている。そのまま酒のつまみとして食べる事が多い。しょうゆ・塩・梅・一味唐辛子などの味がつけられている。日本航空の国際線機内でも酒肴として提供されている。

そぼろ納豆

茨城県特産。おぼろ納豆、しょぼろ納豆とも呼ぶ。納豆に切り干し大根、たれを混ぜた物。そのまま酒のつまみとして食べたり、ご飯にかけて食べたりする。

糸引き納豆と塩辛納豆(寺納豆)

現在では、納豆と言えば、納豆菌を醗酵させたいわゆる糸引き納豆を指すが、その他にも麹菌を醗酵させた後乾燥させてから熟成した塩辛納豆(寺納豆)と呼ばれる納豆がある。麹菌納豆は古代中国(紀元前2世紀頃)からの遺跡等から出土しており日本にはおそらく奈良時代頃に伝来した、日本ではくきと読まれ久喜の字もあてられていた)と考えられている塩豉(後の塩辛納豆)と淡豉(平安以降歴史から姿を消す)との2種類がありそのままではなく調味料として使われていた。

平安時代の文献にも塩辛納豆の名は残っているが、一般に広まったのは室町時代以降でこの頃から糸引き納豆も登場しており区別するために塩辛納豆を久喜と呼び糸引き納豆を単に納豆と呼ぶようになった。またこの頃北宋南宋に渡航したが再度持ち帰り広めたことから寺納豆とも呼ばれるようになり、今でも京都府大徳寺納豆・天竜寺納豆や静岡県浜松市浜納豆(浜名納豆)などが作り続けられている。

甘納豆

甘納豆1857年(安政4年)に栄太楼が開発した和菓子で、ここまで述べてきた醗酵食品の納豆とは全く別物である。当初は浜名納豆(浜納豆)に似せて甘名納糖と名づけられた。名前が簡略化されて甘納豆と呼ばれるようになったのは戦後のことである。大阪では、納豆と言えば甘納豆を指す場合もある。

その他に、山形県酒田市塩納豆熊本県金山寺納豆などローカル色に富んだ納豆もある。

地域別状況

  • 秋田県仙北郡美郷町 - 「納豆発祥の地」の碑がある。ヤマダフーズの本社工場があり、東北随一の出荷量を誇る。
  • 茨城県水戸市 - 明治以降、産地としてもっとも知られている。毎年3月10日に「納豆早食い大会」が開催されている。
  • 熊本県 - 九州では例外的に古くから普及している。これは、加藤清正朝鮮出兵の際濡れた大豆を馬に積んでいたのが馬の高い体温で発酵し納豆になったとの言い伝えがあるからだとされる。全国規模の納豆製造会社がありスーパーマーケットで普通に売られていて、消費量も多い。

一般に消費量は東日本が多く、西日本(特に近畿)ではあまり食べる習慣が無いとされる。特に北関東南東北で消費量が多い。生産量日本一は茨城県だが、消費量日本一は福島県である(ちなみに消費量最下位は和歌山県である)。ただし冒頭のように、近年は関西地方でもスーパーなどで10銘柄程度の商品が普通に売られ、陳列スペースもほとんど関東と変わらなくなっている。

主な納豆メーカー

脚注

  1. ^ 須田勝三郎, 米城善右衛門, 納豆ノ微生物ニ付テ(臨時大會演説), 藥學雜誌, No. 242 (1902) pp. 321-326.
  2. ^ 藤井久雄, 納豆菌による粘質物質の生成に関する研究, 農芸化学会誌, Vol. 37 (1963) pp. 407-411.

関連項目

外部リンク

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