ナムジ
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- ナムジは大国主の別名の1つ。詳細は大国主を参照。
- 『ナムジ』は大国主を主人公とした安彦良和の漫画。本稿で詳説する。
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『ナムジ』は1989年から1991年にかけて、徳間書店から刊行された安彦良和の漫画。全編書き下ろし。
記紀に描かれているナムジ=大国主を2世紀後半の日本に実在した人物として、大胆な仮説や創作を加えながらその半生を描いた歴史作品。同じく記紀の人物を題材とした連作(『神武』、『蚤の王』)の出発点となっている。
オリジナルの徳間書店版(全5巻)の他に、中央公論新社から出版された文庫版およびコンビニ向けの簡易装丁版がある。
[編集] あらすじ
時代は2世紀後半。出雲では騎馬民族の末裔である渡来系の布都(ふつ)族が先住の倭人を支配し、周辺のエミシと勢力争いをしている。筑紫には秦の徐福によって開かれた邪馬台国(やまとこく)があるが、一部は漢の圧迫を恐れてさらに東進し大和の地にある。
ナムジは出雲の海岸で拾われた出自の知れぬ孤児であり、倭人と同じ刺青をしている。スサノオを頭領とする布都族を見返そうとする反骨精神を持つが、その後継者であるスセリビメを妻とすることになる。自分の出自に悩みつつも、出雲の範疇を越えた世界を統べる大望を抱き、大和や筑紫邪馬台国へと出兵する。邪馬台国は日向へと遷都し、ナムジを虜囚として出雲との決戦に出る。
[編集] 主な登場人物
以下では主に記紀の描写との関連、および創作と考えられる点について注記する。
- ナムジ - 大国主。本作品では子供を除き、他の登場人物との親子・兄弟関係は一切ない。スセリを娶り、木の股に挟まれて死にかかるなど、前半では特に大国主の神話に基づくストーリーが多い。スサノオ救出のために筑紫に向かった際にヒミコの虜囚となり、タギリ姫と結ばれる。またよく知られた出雲の国譲りについては本作品ではなく『神武』で描写される。
- スセリ - スセリビメ。スサノオの末子で、タケミナカタの母として描かれている。
- スサノオ - イザナギ・イザナミを両親とし、朝鮮半島から出雲へ渡来した部族の長として描かれている。
- ヒミコ - 邪馬台(やまと)国の女王であり、本作品では(他の著作等に見られるように)アマテラスに比定されている。スサノオの虜囚となった際に記紀にある「誓約(うけい)」によってスサノオの子供を生むとともに、スサノオを篭絡して侵略の野望を潰えさせる。
- スクナビコナ - スサノオの兄弟で、ヒルコと同一人物として描かれる。森羅万象に通じた碩学者でナムジの所領統治に関するアドバイザーを買って出る。大和出兵の際にナムジを助けて死亡が示唆される行方不明となる。記紀では常世の国に去っていったとされるが、本作では常世の国は東国に比定されている。
- クエビコ - 記紀ではスクナビコナの名を言い当てる知恵者。本作ではナムジに付属された目付け役的な家宰として登場する。
- オオドシ - 大物主、ニギハヤヒ。スサノオの三男として描かれ、ヒミコに篭絡されたスサノオと袂を分かって大和へと船を向け、ナムジを救う。後に大和の統治者となる。スクナビコナとオオドシに関わる一連のストーリーは、大国主の国づくりに基づく。
- ヒボコ - アメノヒボコ。角を持つ異形の人物として描かれている(アメノヒボコとツヌガアラシト=「角がある人」を同一の存在とする説があることから、これを文字通りキャラクターとして描写したと考えられる)。ナムジと日本海沿岸の覇を争うが、後に海人と結んでナムジを助ける。
- イセポ - 戦場でナムジに救われた少女。記紀に登場しない、安彦独自のキャラクターであるが、「イセポ」がウサギを意味するアイヌ語であることから、因幡の白兎から創作されたと考えられる。のちに特殊な能力によってたびたびナムジを救うが、その正体は続編『神武』で明らかとなる。
- ニニギ - オシホミミとヒミコの息子。邪馬台国の武将として、タケミナカタ率いる出雲との決戦に臨む。
- タギリ - 宗像三女神の1人で、邪馬台国に囚われたナムジとの間に息子ツノミ(鴨建角身命)をもうける。他の子供も含め、続編『神武』に詳しく描かれる。