ニューデリー空中衝突事故
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ニューデリー空中衝突事故(英語:Saudia Flight 763/Air Kazakhstan Flight 1907)とは、1996年にインドで発生した、民間航空史上最悪の空中衝突(航空事故)である。
[編集] 事故の概略
1996年11月12日、ニューデリー空港を現地時間午後6時32分に離陸した、サウジアラビア航空763便(ボーイング747-100、機体記号:HZ-A1H)はダーランを経由し、サウジアラビアのジッダに向かうフライトプランであった。サウジアラビア機には乗員23名、乗客289名が搭乗しており、乗客の殆どはサウジアラビアに出稼ぎに向かうインド人労働者であった。
そのときニューデリー空港へ着陸降下中であったカザフスタン航空1907便はイリューシンIl-76貨物機(機体記号:UN-76435)で運航されていた。カザフスタン機は同国のチムケントから飛行してきた。貨物機には乗員10名と乗客27名が搭乗していた。
763便は上昇のため午後6時32分に管制官から14,000フィートから15,000フィートへの飛行を許可された。一方のカザフスタン機は午後6時40分に15,000フィートを飛行していると報告してきた。そのため管制官は14マイル先にボーイング747が飛行していることを伝え確認するように促したが、返事がなかった。管制官はカザフスタン機を呼び出したが返事がなかった。
その直後、2機は空港から北西40~50マイル離れた上空15,000フィートの空路上でカザフスタン機の左翼がサウジアラビア機の胴体後部を切り裂くようにほぼ正面衝突していた。サウジアラビア機は衝突の直後に空中爆発し、カザフスタン機は地面に衝突し爆発した。双方の乗員乗客349名全員が犠牲になった。
この2機による空中衝突事故としては史上最悪、航空事故としても最悪の部類にはいる大事故となった。
[編集] 事故原因
インド政府の事故調査委員会は、双方の航空会社から事故調査の宣誓を取り付けたうえで、フライトレコーダはモスクワとロンドンで解析された。
その結果、カザフスタン機の操縦士が管制官の指示した空路よりも低い空路で下降していたことが原因だった。
そのため管制官の指示に全く従わなかったことが事故原因の第一であるとされた。そのようになった原因は、同機の機長も副操縦士も国際航空言語である英語によって行われる管制官の指示をよく理解していなかったことも判明した。
当日の気象条件も雲が現場付近にあったため、事故機は互いに視認できなかった。これは事故の瞬間を偶然目撃したアメリカ軍輸送機のパイロットが、衝突は雲の中で発生したと証言したことから明らかであった。
事故報告書は、事故再発防止のために空港の離発着する航空路の分離とレーダー管制システムの近代化を提唱している。
[編集] 外部リンク
- Saudia Flight 763 report from the Aviation Safety Network
- Air Kazakhstan Flight 1907 report from the Aviation Safety Network
- 10th anniversary article on the collision - Flight Safety Australia, Nov-Dec 2006 issue - PDF 268 KB