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航空事故

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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航空事故(こうくうじこ)とは、航空機の運航中に起きる事故である。

NASAによるボーイング720を使った航空事故実験 (動画1 2 3)
NASAによるボーイング720を使った航空事故実験 (動画1 2 3)

目次

[編集] 概要

航空機はその性質上、ひとたび事故が起きると、乗員乗客の全員を巻き込んだ多くの犠牲者を出す大惨事となってしまう可能性を秘めている。また航空会社にとっては、一度の事故が企業の存亡に関わることもある。このため、航空産業発足の当初から、航空事故に対してはその原因究明と対策に全力が注がれてきた。事故で判明したことや得られた情報は、同様の事故が再発しないよう以後の航空機の設計や運用に生かされている。

[編集] リスク

トロントのピアソン空港の滑走路先に横たわるエールフランス 358便の焼けただれた残骸
トロントピアソン空港の滑走路先に横たわるエールフランス 358便の焼けただれた残骸

アメリカ国家運輸安全委員会 (NTSB)の行った調査によると、航空機に乗って死亡事故に遭遇する確率は0.0009%であるという (米国内の航空会社だけを対象とした調査ではさらに低く0.000034%)。自動車に乗って死亡事故に遭遇する確率は0.03%なので、その33分の1以下の確率ということになる。これは8200年間毎日無作為に選んだ航空機に乗って一度事故に遭うか遭わないかという確率である。

これが「航空機は最も安全な交通手段」という “神話” の背景となっている。しかしこの確率は移動距離を基準にした結果であり、旅行回数でみれば航空機の方が自動車よりも死亡遭遇率が高いという計算を出している専門家も大勢いる。

航空事故を引き起こすリスクの多寡は航空会社によって異なり、一般に先進国では低く、発展途上国では高い傾向が見られる[1]。また旧共産圏諸国では航空機事故を隠蔽する体質があったため、航空事故の詳細が明らかになったのはごく最近のことである[2]

ドイツの航空業界専門誌『アエロ・インターナショナル (AI)』の行った調査では、1946年以降一度も死亡事故を起こしていないカンタス航空 が “最も安全な航空会社” であるという。そしてフィンランド航空キャセイパシフィック航空全日本空輸などがその後に続いている。一方 “安全性が最下位” だった航空会社は過去に10機を全損し死者計844人を出しているという。

しかし航空事故はさまざまな要因が複合して事故に至るものであり、多くの航空機や人命を失った航空会社に安全性の問題があるとは必ずしも言い切れない。この “安全性が最下位” にランクされた航空会社は1970年代に最多級の死者を出す全損事故を起こしているが、その原因は航空機の設計上の問題に起因するものだった。また一機の事故としては史上最多の死者を出した日航ジャンボ機墜落事故にしても、その原因は過去に製造元が機体に施した修理のミスだった。

[編集] 事故の原因

航空事故のおよそ7割は離陸後の3分間と着陸前8分間の前後のごく短い時間帯約11分に集中している(クリティカル・イレブン・ミニッツ「魔の11分」)。しかし巡航中に発生する事故も少なくはない。

事故原因の大半は人為的なミス (操縦ミス、判断ミス、定められた手順の不履行、正しくない地理情報に基づいた飛行、飲酒等の過失など) または機械的故障 (構造的欠陥、不良製造、不良整備、老朽化など) に端を発するものとなっている。

航空事故を専門に追跡する planecrashinfo.com が1950年から2004年までに起った民間航空事故2147件をもとに作った統計[3]によると、事故原因の内訳は以下の通りとなっている:

  • 37%: 操縦ミス
  • 33%: 原因不明
  • 13%: 機械的故障
  •   7%: 天候
  •   5%: 破壊行為 (爆破、ハイジャック、撃墜など)
  •   4%: 操縦以外の人為的ミス (不適切な航空管制・荷積・機体整備、燃料汚濁、言語、意思疎通の不良、操縦士間の人間関係など)
  •   1%: その他

またボーイング社が行っている航空事故の継続調査[4]によると1996年から2005年までに起った民間航空機全損事故183件うち原因が判明している134件についての内訳は以下の通りとなっている:

  • 55%: 操縦ミス
  • 17%: 機械的故障
  • 13%: 天候
  •   7%: その他
  •   5%: 不適切な航空管制
  •   3%: 不適切な機体整備

操縦ミスは依然として航空事故原因のほぼ半数を占めているが、この数字は1988年1997年期には70%もあり、過去20年間に着実に改善されてきたことが分かる。

[編集] 事故調査

NTSBによるTWA800便墜落事故の調査 海底から機体残骸破片の大部分を回収して機体を組み立て直した
NTSBによるTWA800便墜落事故の調査 海底から機体残骸破片の大部分を回収して機体を組み立て直した

航空機事故の再発防止のためには、徹底した原因究明が欠かせない。事故によっては数年の歳月と巨額の資金を費やしてまで「なぜ」が追究される。

中立な立場からの事故調査を徹底するため、多くの国では専門の事故調査機関を設置している。なかでもアメリカの国家運輸安全委員会 (NTSB) は、その経験と専門知識から、各国の事故調査や航空行政に対しても大きな影響力を持つ機関となっている。

日本では国土交通省審議会のひとつ、航空・鉄道事故調査委員会が原因の究明や今後の事故防止のために必要な調査を行っている。しかしその目的はあくまで事故の再発防止や、安全性の向上、関係機関などに勧告や建議を行なうことであり、事故調査の中心は業務上過失致死罪業務上過失傷害罪重過失致死傷罪で刑事捜査をする警察検察である。

今日、航空事故は重大な過失でもない限り刑事責任を問わないことが世界の趨勢となっており、また「はじめに罪ありき」的な日本の刑事捜査体制には国際民間航空条約に抵触するという観点から航空関係者の反発が根強い。事故の再発防止には、航空・鉄道事故調査委員会をアメリカのNTSBのような独立した強い権限を持つ機関に改めることや、過失による刑事責任を問わないことで事故に関する当事者からの証言を得やすくすることが必要だとする意見が、年々増加の傾向にある。

なお、今日の航空事故調査には欠かせないフライトデータレコーダー (FDR) (飛行状況記録機) と コックピットボイスレコーダー (CVR) (操縦室音声記録機) だが、日本では1966年全日空羽田沖墜落事故の際に経路追跡などが出来ず原因不明となったことを教訓に、すべての旅客機にこの搭載が義務づけられた。

[編集] 主な民間機航空事故

以下は主な航空事故の一覧である。各事故について、1) 事故日 (現地時間)、2) 航空会社と便名、3) 機種と製造元、4) 犠牲者数、5) 事故発生地、6) 事故の状況、7) 原因、を簡略にまとめた。ただし特筆に値する事故や事件、また航空事故に関連した特に興味深い事実などついてはその内容を詳述した。

なお、軍用機軍用艦船による民間機への攻撃、人為的な破壊行為、ハイジャックによる自爆テロなどは、「事故」ではなく「事件」であるが、本項では被害規模の参考のため、機体が全損した事件や死亡者が出たものについては特に記載した。なお、民間航空機に対して行われたテロ行為や破壊行為(ハイジャックを除く)については、航空機テロ・破壊行為の一覧も参照のこと。

[編集] 1930年代

ヒンデンブルグ墜落の模様 (動画)
  • 1938年 8月24日
    • 便名: 1) 日本飛行学校訓練機、2) 日本航空輸送旅客機
    • 機種: 1) アンリオ複葉機、2) スーパーユニバーサル機
    • 死者: 両機に搭乗の計5人と地上の45人が死亡。
    • 状況: 羽田飛行場を離陸後空中衝突し墜落後に燃料タンクが爆発、付近の工場や民家に延焼。
    • 詳細:「大森民間機空中衝突墜落事故」を参照。

[編集] 1940年代

  • 1940年 12月20日
    • 便名: 三菱航空機 試験機
    • 機種: 三菱航空機 MC-20「妙高」号
    • 死者: 乗員13人全員が死亡。
    • 状況: 耐空証明取得のため試験中の双発旅客機が東京湾に墜落。搭乗していた三菱航空機社員、逓信省航空局の職員、海軍士官ら全員が死亡。機体は翌年2月に引き揚げられたが原因は不明とされた。
  • 1947年 5月30日
    • 便名: イースタン航空 605便
    • 機種: ダグラス DC-4
    • 死者: 乗員乗客53人全員が死亡。
    • 状況: ボルティモアへむけて下降中、突然垂直降下したうえに反転して墜落。偶然後方に民間航空委員会の事故調査官が搭乗した機が飛行しており、一部始終を目撃したが、事故原因は解明できなかった。

[編集] 1950年代

  • 1952年 4月11日
    • 便名: パンアメリカン航空 526-A便
    • 機種: ダグラス DC-4
    • 死者: 乗員乗客69人中52人が死亡。
    • 状況: サンファンを離陸後、4機のエンジンのうち2機が停止したため引き返すが、途中で海上に緊急着水。機体がわずか3分で水没したため多くの乗客が溺死した。この事故が教訓となり、定期旅客便では離陸前に必ず緊急着水時用のライフジャケットと救命ボードの説明をするようになった。
  • 1957年 9月30日
    • 便名: 日本航空 「雲仙」号
    • 機種: ダグラス DC-4
    • 死者: なし (負傷者数名)。
    • 状況: 大阪伊丹空港を離陸直後にエンジンが故障し失速。機体が電線に引っかかり、そのまま空港付近の豊中市服部の水田に不時着した。機体は垂直尾翼だけを残し全焼。客室乗務員の迅速な避難誘導が賞賛された。

[編集] 1960年代

  • 1961年 9月17日
    • 便名: 国際連合 チャーター機
    • 機種: ダグラス DC-6
    • 死者: 乗員乗客16人全員が死亡。
    • 状況: 国連事務総長 ダグ・ハマーショルドコンゴ動乱の停戦調停に赴く途上、搭乗機が北ローデシア (現在のザンビア) のエンドーラで墜落。現職の国連事務総長の事故死というニュースに加え、操縦士が警護上の理由から事前にフライトプランを提出していなかったこと、ソ連が国連のコンゴ動乱への介入を反ソビエト的だと非難し事務総長の辞任を求めていたことなどから、撃墜説や暗殺説が信憑性をもって広まったが、事故調査では事故機に被弾や爆発の痕跡は発見されなかった。同機の経由地である北ローデシアのエンドーラ (Ndola) 空港は海抜1270m、ところが最終目的地のコンゴにはエンドーロ (Ndolo) 空港という海抜279mの空港があり、この両者を操縦士が混同した結果、エンドーラ空港への着陸進入中高度が低くなりすぎたことが事故原因と結論された。
  • 1966年 3月4日
    • 便名: カナダ太平洋航空 402便
    • 機種: ダグラス DC-8
    • 死者: 乗員乗客72人中64人が死亡。
    • 状況: 濃霧の中羽田へ地上誘導着陸方式で着陸進入中、操縦士が早く滑走路を視認するために意図的に高度を下げ、機体が進入灯に激突して墜落炎上。犠牲者の多くは焼死だった。羽田沖では1ヵ月前に全日空機がやはり着陸進入中に墜落したばかりで、関係者に衝撃を与えた。
    • 詳細:「カナダ太平洋航空402便着陸失敗事故」を参照。
  • 1966年 4月22日
    • 便名: アメリカンフライヤーズ航空 チャーター便
    • 機種: ロッキード L-188C エレクトラ
    • 死者: 乗客乗員98人中83人が死亡。
    • 状況: 兵士移送のためチャーターされた機が、給油のためオクラホマ州アードモア空港に着陸進入中、機長が過労のため心臓発作を起こし、操縦不能となって墜落。機長には心臓病と糖尿病の長い病歴があったが、自らが運航会社の社長という地位を利用して健康診断報告書を偽造し機長免許を更新していた。

[編集] 1970年代

  • 1971年 12月24日
    • 便名: LANSA ペルー航空508便
    • 機種: ロッキード L-188 エレクトラ
    • 死者: 乗客乗員92人中91人が死亡。
    • 状況: ペルーのリマからイキトスへ向かう途中、激しい乱気流と落雷に遭遇、右翼を大きく損傷しその後空中分解、山岳地帯の森林へ墜落。17歳の女性1人が10日後奇跡的に救出された。事故機の残骸は事故後14日を経て発見されたが、墜落直後には10人以上が生存していたものとみられ、捜索救助活動の遅れが悔やまれた。
  • 1972年 6月18日
    • 便名: 英国欧州航空 (BEA) 548便
    • 機種: ホーカーシドレー トライデント 1C
    • 死者: 乗員乗客118人全員が死亡。
    • 状況: ロンドンヒースロー空港を離陸直後に墜落。直接の原因は、上昇中まだ十分な高度に達していない段階に高揚力装置が誤ってたたまれた結果失速したことだが、この誤操作を行ったかのは誰か、またなぜそれが修正されなかったかについては不明とされた。ただし搭乗前、労使関係の問題から機長が別の機長と声を張り上げるほどの大喧嘩をしていたこと、コックピット内に八つ当たりの落書きを残すほど機長が立腹していたこと、またそのストレスが原因と思われる亀裂が機長の胸部大動脈に発見されたこと (ただし死に至るものではない)、そして最年長ベテラン機長と若年の副操縦士という人間関係上の問題がこれに絡んでいたとなどが事故調査で明らかになっている。
  • 1972年 10月13日
    • 便名: ウルグアイ空軍 571便 (チャーター機)
    • 機種: フェアチャイルド FH-227D
    • 死者: 乗員乗客45人中29人が死亡。
    • 状況: ウルグアイの大学ラグビーチームを乗せてチリへ向かったターボプロップ機が、航空管制の誤誘導によりチリとアルゼンチン国境のアンデス山中に墜落。事故直後に12人、翌日までに5人、8日目にもう1人が死亡した。墜落地がアンデスの山中の奥地であったこと、白い機体が雪に紛れて上空から目視できなかったことなどから、3ヵ国からの救助隊は事故機を発見できず、捜索は打ち切りとなった。生存していた27人の頑健な若者は自力で下山を開始、このうちの16人が事故から72日目に生還した。しかし彼らは力尽きて倒れた他のチームメートの遺体を食べて生き延びていたことから、その生還は賛否両論で迎えられるという皮肉な結果となった。なおこの事故を契機に、航空事故の捜索は事故機を発見するまで決して打ち切らない、というのが不文律となった。
航空事故を扱った映像作品
Tu-144墜落の模様 (動画)
航空事故を扱った映像作品
  • 1979年 5月25日
    • 便名: アメリカン航空 191便
    • 機種: マクダネルダグラス DC-10-10
    • 死者: 乗員乗客271人全員と地上の2人が死亡。
    • 状況: シカゴオヘア空港ロサンゼルス行きが離陸直後に墜落。原因はマニュアルに沿わない不適切なエンジン整備の結果パイロンが損傷し、離陸中に左エンジンが脱落、同時に左翼の油圧系統を喪失し、制御不能に陥ったため。NTSBは直ちに国内の全てのDC-10に「追って知らせがあるまで飛行を全面禁止」という異例の通達を発したが、これが解除されてからもDC-10のイメージダウンは拭えず、マクダネルダグラス社には発注のキャンセルが相次いぎ、これがDC-10シリーズと同社の衰退の遠因となった。今日に至るまでこの事故はアメリカ航空史上最悪の惨事であり、またこの事故を契機にNTSBの役割が事故調査専門になるなど、各方面に大きな影響を与えるものだった。なお不適切な整備を指示していたオヘア空港の整備担当主任は事故調査委員会での証言直前に自宅で自殺している (アメリカ人の引責自殺は極めて稀)。
    • 詳細:「アメリカン航空191便墜落事故」を参照。
  • 1979年 8月11日
    • 便名: 1) アエロフロート 7880便、2) アエロフロート 7628便
    • 機種: 1) ツポレフ Tu-134、2) ツポレフ Tu-134
    • 死者: 両機の乗員乗客計178人全員が死亡。
    • 状況: ウクライナのドニプロゼルジンクス上空を飛行していたアエロフロートの国内線2機が空中で交差する際、航空管制官の誤った指示により、雲の中で2機が衝突し墜落。同一航空会社、同一機種の中型旅客機による空中衝突という前代未聞の事故となった。

[編集] 1980年代

  • 1980年 6月27日
    • 便名: イタビア航空 870便
    • 機種: マクダネルダグラス DC-9-15
    • 死者: 乗客乗員81人全員が死亡。
    • 状況: 地中海上空を巡航していたイタリア国内線が突然空中爆発してシチリア沖に墜落。イタリア空軍機誤射説、NATO空軍機がリビア機と誤認して撃墜したとする説、テロ説などが錯綜した。イタリア空軍の幹部が起訴されたが、1997年になって事故調査委員会は「原因不明の機内の爆発があった」と断定、2007年には同空軍の無罪が確定している。
  • 1980年 8月19日
    • 便名: サウジアラビア航空 163便
    • 機種: ロッキード L-1011 トライスター
    • 死者: 乗員乗客301人全員が死亡。
    • 状況: リヤドハリド空港を離陸直後に貨物室から出火、火災が油圧系統の一部を切断して尾翼下の第2エンジンが制御不能となったが、すぐにハリド空港に引き返し、無事緊急着陸を行った。しかし事態を甘く見た機長が緊急脱出を指示せず、そのまま誘導路を走行したうえ、機体停止後もしばらくエンジンを停止しなかったため、救援隊は機体に近づけなかった。またL-1011に不慣れな救援隊が非常ドアに手こずり、これが開けられたのは着陸から約29分後のことだった。この間に火災は延焼し、乗員乗客全員が有毒ガス吸引などで死亡していた。機体前方部に折り重なるようにして息絶えていたという。
    • 詳細:「サウジアラビア航空163便火災事故」を参照。
  • 1980年 11月19日
  • 1982年 2月9日
    • 便名: マクダネルダグラス 試験機
    • 機種: マクダネルダグラス MD-80
    • 死者: なし。
    • 状況: カリフォルニア州エドワーズ空軍基地での試験飛行中、滑走路上にハードランディング、機体後尾がもぎ折れる。幸い爆発を伴わなかったため、乗員7人は全員無事だった (1人が骨折)。
MD-80ハードランディングの模様 (動画)
  • 1985年 2月18日
    • 便名: 中華航空 006便
    • 機種: ボーイング 747
    • 死者: なし (数人が負傷)。
    • 状況: 台北よりロサンゼルスへ向かう途中、第4エンジンが異常で停止。本来なら自動制御を解除し方向舵を操作して機体のバランスをとるべきところ、操縦士は自動制御に依存し過ぎて減速に気づかず、やがて失速速度になりサンフランシスコ沖合できりもみ状になって垂直降下した。約2分間で1万メートル近く降下したところでなんとか機体のバランスを取り戻すことに成功し、サンフランシスコ空港に緊急着陸。
  • 1985年 12月12日
    • 便名: アローエア 1285便
    • 機種: ダグラス DC-8-63PF
    • 死者: 乗客乗客256人全員が死亡。
    • 状況: 多国籍軍としてシナイ半島に駐屯していたアメリカ兵を復員させるため軍がチャーターしたDC-8が、経由地のニューファンドランドガンダーから離陸後まもなく墜落した。同機は墜落寸前に失速していた反面、機体火災の痕跡もみられることから、カナダ航空安全委員会の9人の委員は5対4で着氷説と貨物室内爆発説に割れるという異例の事故調査報告となった。なお同事故はカナダ国内では最悪の事故、また一日に248人のアメリカ人軍人が死亡というのは第二次世界大戦後最悪の記録となった。
  • 1988年 4月28日
    • 便名: アロハ航空 243便
    • 機種: ボーイング 737
    • 死者: 乗員1人が死亡。
    • 状況: ハワイ島ヒロからオアフ島ホノルルへ向かう途中、マウイ島上空7200mのところでコックピット後部の客席部分の天井が吹き飛び、客室乗務員1人が機外に吸い出される。幸い油圧系統が破壊されなかったことで墜落を免れ、マウイ島の空港に緊急着陸。短距離路線が多いことから離発着が頻繁であったこと、潮風の影響で機体の腐食劣化が進んでいたのが原因。
    • 詳細:「 アロハ航空243便事故」を参照。
航空事故を扱った映像作品
  • 1988年 6月26日
    • 便名: エールフランス デモ機
    • 機種: エアバス A320
    • 死者: 乗員3人が死亡。
    • 状況: フランスのアブシーム空港でエアショーのデモ飛行中、空港脇の森に墜落し炎上。低空飛行に気を取られた機長が高度計のチェックを忘れ、コンピュータの警告音を無視したのが原因とされるが、機長本人は邦訳「エアバスA320は、なぜ墜ちたか」を出版し反論中。
A320デモ機墜落の模様 (動画)
航空事故を扱った映像作品
UA 232便緊急着陸失敗の模様 (動画)

[編集] 1990年代

  • 1993年 7月26日
    • 便名: アシアナ航空 733便
    • 機種: ボーイング 737
    • 死者: 乗員乗客110人中68人が死亡。
    • 状況: 台風が接近する中、強風で韓国木浦空港への着陸に手こずり、3度目の着陸進入中に空港から8km離れた山肌に墜落。操縦していた新人副操縦士が位置を誤認したのが原因。幸い火災が発生しなかったため生存者が多かった。
  • 1993年 11月4日
    • 便名: 中華航空 605便
    • 機種: ボーイング 747-400
    • 死者: なし (負傷者多数)。
    • 状況: 香港啓徳空港で台風が接近する中、強風にあおられ滑走路半ばに接地、オーバーランして滑走路先の海中に突入し大破した。ボーイング747-400初の全損事故。啓徳空港は着陸に際し香港カーブと呼ばれる極めて高度な機体操作が要求される操縦士泣かせの空港だったが、そのためもあってかオーバーランやしりもち事故は多かったものの、着陸に失敗して炎上したり市街地に突っ込むような大事故は皆無であった。
  • 1996年 1月8日
    • 便名: モスクワエアウエイズ 貨物機
    • 機種: アントノフ An-32
    • 死者: 乗員6人中2人と、少なくとも地上の350人が死亡。
    • 状況: ザイールのエンドーロ空港を離陸しようとしたターボプロップ貨物機が過積載のため離陸に必要な速度が出せず、わずかに上昇するもすぐに滑走路先に墜落、そのまま90m地表を滑って買い物客で混雑する屋外マーケットに突入、爆発炎上した。あたりは火の海となり、350〜600人の犠牲者を出したが、遺体の多くは原形をとどめないほどの損傷をうけ、正確な犠牲者数は不明。テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故日航ジャンボ機墜落事故に次ぐ史上最悪級の事故となった。
  • 1996年 7月17日
    • 便名: トランスワールド航空 800便
    • 機種: ボーイング 747
    • 死者: 乗員乗客230人全員が死亡。
    • 状況: ニューヨークケネディ空港を離陸の12分後、配線ショートによる火花が燃料タンク内で気化していたガスに引火して機体が空中爆発しニューヨーク州ロングアイランド沖に墜落。当初はアトランタ・オリンピック妨害を狙った爆弾テロ説や、テロリストの放った地対空ミサイル説、アメリカ原潜によるミサイル誤射説などが報道され、FBINTSBもその線で調査を始めたが、ばらばらになって散乱した機体破片の大部分を海中から回収して組み立て直すなど、4年1ヵ月にも及ぶかつてない徹底調査の結果、事故であることが確定。なおTWAは事故後遺族への補償で経営が悪化、これが同社破綻の原因となった。
    • 詳細:「トランスワールド航空800便墜落事故」を参照。
航空事故を扱った映像作品
  • 1996年 11月12日
    • 便名: 1) サウジアラビア航空 763便、2) カザフスタン航空 1907便
    • 機種: 1) ボーイング 747-100、2) イリューシン Il-76
    • 死者: 両機の乗員乗客計349人全員が死亡。
    • 状況: ニューデリー空港を離陸し上昇中のサウジアラビア航空機と着陸降下中のカザフスタン航空機が同じ空路上でほぼ正面衝突して墜落。空中衝突事故としては史上最悪、航空事故としても最悪級の事故となった。カザフ機の操縦士が空港管制の指示した空路よりも低い空路で下降していたことが原因だったが、同機の機長も副操縦士も英語 (国際航空語) による管制官の指示をよく理解していなかったことがわかった。
エチオピア航空便緊急着水失敗の模様 (動画)
  • 1998年 9月2日
    • 便名: スイス航空 111便
    • 機種: マクダネルダグラス MD-11
    • 死者: 乗員乗客229人全員が死亡。
    • 状況: ケネディ空港を離陸の1時間後、不良配線の火花から機体火災が発生、管制官はハリファックス空港への緊急着陸を指示するが、事態の緊急性を甘く見た操縦士が、別の空港への着陸許可を要請したり燃料投棄のために海上に留まるなどして時間を浪費。火災が延焼して機内に煙が充満し、操縦不能となり北大西洋上に墜落。スイス航空は事故後遺族への補償で経営が悪化、これが同社破綻の原因となった。
    • 詳細:「スイス航空111便墜落事故」を参照。
マンダリン航空642便着陸失敗の模様 (動画)

[編集] 2000年代

  • 2001年 8月23日
    • 便名: エアトランサット236便
    • 機種: エアバス A330
    • 死者: なし (数人が軽傷)。
    • 状況: トロントリスボン行き。巡航中大西洋上で燃料漏れ警報が作動。ただちに緊急着陸すべくアゾレス諸島に回航したが、28分後に右エンジンが停止、その13分後には左エンジンも停止し、滑空状態となった。同時に発電も不能となり (航空機の電力はエンジンによる発電でまかなう) ほぼ全ての電気系統・油圧系統がダウン。操縦士はわずかな補助電力 (非常用風力発電機による) で無線交信を保ち、同機を19分間にわたって約120kmも滑空させた後、テルセイラ島ラヘス空軍基地への着陸を試みた。一度進入に失敗したらやり直しができない着陸であり、またフラップが効かないため機体の接地速度は通常の時速250km前後を大幅に上回る時速370kmで、しかもスラストリバース (逆噴射) やランディングギア (車輪) ブレーキなどが一切使用できないため、機体が自然減速で止まらない限り滑走路を走り抜けて海に転落という、一か八かの賭けだった。幸い同機は3312mの滑走路を端から端まで使って停止、乗員乗客306人は全員無事という「奇跡的な事故」となった。原因は第2エンジン交換時に純正以外の燃料パイプブランケットを使用したため、燃料パイプが外れたことだった。
航空事故を扱った映像作品
AA11便とUA175便WTC激突の模様 (動画)
  • 2001年 11月12日
    • 便名: アメリカン航空 587便
    • 機種: エアバス A300
    • 死者: 乗員乗客260人全員と地上の5人が死亡。
    • 状況: ニューヨークケネディ空港を離陸後まもなく墜落。直前に離陸した日本航空 47便 (ボーイング747) 成田行きの後方乱気流によって大きく揺れた機体のバランスを保とうと、副操縦士がラダーを過剰操作した結果、垂直尾翼がこれに耐えきれずもぎ折れ機体が制御を失ったことが原因。エアバス機の中でA300とA310はフライバイワイヤーではないケーブル操作機だが、ラダー操作ペダルは他機種とくらべて容易にできるよう敏感に設計されていた。しかし副操縦士が訓練を受けていたのは従来式の重いペダルだったため、ラダーを少し一方へ傾けたつもりが傾き過ぎ、これを是正しようと逆方向に少し動かしたつもりが今度は反対側までいってしまったというを操作を、離陸後の高速状態でしかも気流が悪い中繰り返し行ったことが垂直尾翼が折れた原因だが、これをエアバス側は副操縦士の操作ミス、AA側はエアバスの設計ミスと主張して譲らず、補償責任をめぐっては現在も係争中。
  • 2002年 7月1日
    • 便名: アメリカウエスト航空 556便
    • 機種: エアバス A319
    • 死者: なし。
    • 状況: 前夜半から機長・副操縦士ともに多量の飲酒をし、酔いも覚めぬまま翌朝出発の556便に搭乗した。不可解な言動を不審に思った空港警備員が警察に通報、同機はゲートから押し出され誘導路を走行しはじめる一歩手前のところで停止させられ、機長・副操縦士は現行犯逮捕。空港警察の職務質問にもろくに答えられないほどの泥酔状態だったという。
  • 2005年 9月21日
    • 便名: ジェットブルー 292便
    • 機種: エアバス A320
    • 死者: なし。
    • 状況: カリフォルニア州バーバンクのボブホープ空港を離陸後、前輪が90度横向きになったまま固まり格納不能となった。近隣のロサンゼルス空港に緊急着陸することにしたが、A320型機は燃料投棄システムを備えておらず、そのため同機はロサンゼルス沖の太平洋上を2時間以上にもわたって8の字旋回しながら燃料を消費しなければならなかった。着陸は可能な限りの低速で接地、前輪は火を噴いたが脚を失うことはなく、機は無事停止した。なおジェットブルーのA320には各座席のLCDスクリーンで36チャンネルの衛星テレビ放送が視聴できるようになっており、乗客は緊急着陸の一部始終をCNNの生中継で観ていたため、パニックになることもなかったという。
    • 詳細:「ジェットブルー292便緊急着陸」を参照。
ジェットブルー292便緊急着陸の模様 (動画)
  • 2007年 3月17日
    • 便名: UTエアー
    • 機種: TU134型旅客機
    • 死者: 乗客乗員約80人中7人が死亡。
    • 状況:サマラの空港に着陸の際に胴体着陸を強行し失敗。原因については調査中。

[編集] 航空事故を扱った映像作品

  • アンデスの聖餐 (原題: La Odisea de los Andes)』 (ドキュメンタリー映画)
  • 『アンデス地獄の彷徨 (原題: Survive!)』 映画
  • 『生きてこそ (原題: Alive!)』 映画
    • いずれも1972年10月13日にアンデス山中で起きたウルグアイ空軍チャーター機墜落事故と、その後の72日間にわたる生存者の生還を扱ったドキュメンタリー/映画
  • 『メーデー!: 航空機事故の真実と真相 』 (ナショナルジオグラフィックチャンネル)
    • 衝撃の瞬間2 第12回『スペイン航空機衝突事故 (原題: Collision on the Runway)』
    • 1977年3月27日にカナリア諸島のテネリフェ島の空港で起きた、KLMオランダ航空とパンアメリカン航空の滑走路上での衝突事故を追ったドキュメンタリー
  • 『レスキューズ/緊急着陸UA232 (原題: Crash Landing: The Rescue of Flight 232)』 (ABC放送)
    • 1989年7月19日に起きたユナイテッド航空232便事故を描いたテレビ映画
  • 『原題: The Crash of TWA Flight 800』 (ディスカバリーチャンネル)
    • 1996年7月17日にロングアイランド沖で起きたトランスワールド航空800便墜落事故を追ったドキュメンタリー
  • 『原題: Flying on Empty』 (ディスカバリーチャンネル)
    • 2001年8月23日に北大西洋上で起きたエアトランサット236便のジェット旅客機としては史上最長の滑空を追ったドキュメンタリー


[編集] 関連項目


[編集] 外部リンク


[編集] 出典・注

  1. ^ Fatal Events and Fatal Event Rates of Airlines
  2. ^ ソビエト連邦崩壊後にはアエロフロート機を中心に数十件にも及ぶ事故が公表され関係者を唖然とさせた。
  3. ^ planecrashinfo.com による統計
  4. ^ ボーイング社による航空事故統計
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