ピーターパン症候群 (漫画)
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『ピーターパン症候群』(ピーターパンシンドローム)とは酒井まゆによって描かれた少女漫画。集英社の漫画雑誌「りぼん」2005年2月号から同年10月号にかけて連載された。単行本はりぼんマスコットコミックスから全2巻。
超能力というファンタジー的なものを扱った作品であるが、ストーリーが進むにつれて、超能力の恐ろしさや超能力者を収容研究している「研究所」の存在、琥珀の誕生の秘密などSF的な面を見せるようになる。
全9話という短い話数で終了した。琥珀が夜しか能力が使えない謎・透子が転校してきた「本当の目的」など多くの伏線を残していることや、単行本にて作者が「もう少し描きたかった」などの発言をしていることから、打ち切りによる終了であったと推測される。
略称は「ピタパン」というものを作者は推奨しているが、「パンドロ」とも呼ばれている。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] ストーリー
12歳の少女、蓮見琥珀は、自分が幼い頃に行方不明になった母親を捜して新しい街に引っ越してきた。
一見普通の少女である琥珀には不思議な力があった。彼女は、太陽が隠れている間(夜中や雨・雪の日)だけ空を飛ぶ事や、物を浮かすことが出来る超能力を持っていたのだ。
引っ越してきたその日の夜、母を捜し空を飛ぶ琥珀は不意に携帯電話を高層マンションのベランダに落としてしまう。一方そのマンションに住む少年、橘夕露は不思議な思いでその携帯電話を手にする。
その後、ふとした弾みで教室の窓から転落した夕露を琥珀は空を飛んで助ける。しかし、その光景を見たクラスメイト達は琥珀を気味悪がり、その場から逃げ出してしまう。そんな中、ただ一人夕露だけは琥珀を恐れず、琥珀が落とした携帯電話を差し出しその力を受け入れることを誓う。
斯くして琥珀と力の秘密を共有することになった夕露は、琥珀が行方不明の母親を探していることを知り、その母親探しに協力する事になる。
[編集] 主な登場人物
- 蓮見 琥珀(はすみ こはく)
- 12歳(中学1年生)の少女。太陽が隠れている間(夜中や雨・雪の日)だけ空を飛ぶ・物を浮かすなどの超能力(サイコキネシス=念動力)を使うことが出来る。幼い頃からその超能力ゆえに引越しを繰り返しており、今回「母親がいる」という街に引っ越してきた。能力の代償として、ある程度で体の成長を止められてしまっているため、やや幼めの外見をしている。基本的に天然で楽天的、そして前向きで友達想いな性格。夕露に惹かれている。
- 橘 夕露(たちばな ゆうろ)
- 琥珀の同級生の少年。女子に大人気。父親が医者であり、自身も医者になるよう母親に過大な期待をかけられていた為、夢を失い、後ろ向きであった。ゆえにかなり無気力な少年だったが、琥珀と出会った事で生きる気力を与えられた。非常に頭が切れ、表面上は冷たく、日常的に憎まれ口を叩いたりもするが、決して冷血漢ではない。琥珀の能天気な性格に呆れつつも、彼女をやさしく見守っている。暁里とは双子。
- 橘 暁里(たちばな あかり)
- 夕露の双子の弟。夕露とは正反対の、明るく友達の多い性格。琥珀と性格的に近いものがあり、夕露が琥珀に惹かれたのもその辺りが関わっている。
- 鏡 透子(かがみ とおこ)
- 琥珀の友達。幼い頃から超能力を恐れられ、友人が居らず、研究所では琥珀より優れた超能力を誉められ(研究材料として優れていたからなのだが)それを心の支えにしていたようだ。久々に見つけた琥珀に自分にいない「友人」や「彼氏」がいる事に嫉妬し、その魅力で夕露を奪おうとし、強引なキスもした。実は成長したため能力が衰えつつあった。結局琥珀の友情に救われ、表舞台から姿を消す。
- 蓮見 鈴(はすみ りん)
- 琥珀の父親。研究所の元所員。琥珀に超能力の事を口外しない様に常に言い聞かせる。
- 蓮見 雫(はすみ しずく)
- 琥珀の母親。琥珀には長い間行方不明だと知らされていたが、実はすでに亡くなっていた。「空を飛ぶ、物を浮かせる、人や動物に意識を移らせる」という3つの力を持っていた。体を壊し自分の命が長くないことを悟った時、その3つ目の力を使い、ウェンディに意識を移らせた。以来ウェンディとして琥珀を見守っていた。
- ウェンディ
- 琥珀のペットの黒猫。人間の言葉を話せる。元々は研究所で飼育されて(研究材料として飼われていた模様)おり、遺伝子を合成したキメラか希少な幻獣のサンプルだと思われる。背中に羽が生えており、空を飛ぶ事が出来る。琥珀の母親・雫が力を使い自分の意識を移しており、姿は人間ではないものの母親そのものである。その為、琥珀の父親・鈴と琥珀の運命について語るなど、琥珀に対して強い思いを持っている。琥珀が自分の運命を知った後に「ある選択」をするように言う。
[編集] 題名の意味
本来「ピーターパン症候群」という言葉は大人げなく子供じみた行動をとり、成長する事を拒絶する状態を意味する。しかし、この作品の中では、主人公、琥珀の体質(遺伝子操作の為、超能力を身につけている代わりに第二次性徴も訪れず、大人になれないこと)を暗示している言葉となっている。
[編集] 余談
- 琥珀とウェンディの、もうひとつの超能力のアイディアを読者から募集した事があった。その際に最優秀賞に選ばれたのが、琥珀は「雨上がりの後に、人が乗る事の出来る虹をかけられる」、ウェンディは「うかつにくしゃみをすると、火を吹いてしまう」というものだった。作品中に取り入れる構想もあったようだが、急遽終了が決まってしまった事で、第8話(最終回の1話前)の一色刷の扉に採用されるにとどまってしまった。なお、募集の際に作者である酒井自身が出した例は「琥珀が目からビームを出し花を咲かせる」という、本編で使い様がない(幼い読者に対しての配慮だと思われる)ものであった。
- アイディア募集という物は、作品の人気がそれなりにあって、その作品にそのアイディアを生かす余地がある、つまりその時点で終了は考えられていなかったと考えるのが普通である。この事実もまた、この作品が打ち切りにあったという推測を裏付ける根拠の一つになっている。
- 超能力を扱う作品にしては珍しく、全話中で一度も超能力の正式な呼び方(サイコキネシスやテレパシーなど)を使っていない。恐らくそういう言葉を使う事で作品の雰囲気(日常的な描写やファンタジー的な雰囲気)を損ねない為の配慮だと思われる。
- 透子が琥珀にリンゴを投げるシーンは『DEATH NOTE』のリュークを意識したという説もあるが定かではない。
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