フィギュア17 つばさ&ヒカル
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『フィギュア17 つばさ&ヒカル』( - せぶんてぃーん)は2001年5月27日から2002年5月26日まで13回にわたりアニメシアターXで放送された連続アニメ番組、またはそれを元にした中平凱の漫画作品。
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[編集] 概要
本品は主人公が変身して宇宙から来た怪物と戦っていくという物語からなるオリジナルSFアニメであり、また、主人公達の人間関係や日常生活の描写にも力を入れた作品でもある[1]
しかし、本品における最も特徴的な点は、週1回の30分枠(正味24分間)で放送されることが一般的なアニメ番組において毎月1回(最終日曜日夜)の1時間枠(正味46分間)で放送されたということである[2]。これは表現力と品質の向上を狙って放送時間と放送間隔を通常のアニメ番組の2倍としたためであり、この点で本作品は実験色の強い極めて特殊なアニメであった。
上記の放送形態は特に品質面においてアニメーション映画に匹敵する水準を維持することに貢献した。これにより本作品は、過剰供給気味であるが故に低品質になりがちな最近のアニメの中においてとりわけ異彩を放っていた。
上記とは別に2002年1月11日から同年6月26日までテレビ東京の深夜枠にてオリジナルの1回分を前後編に分割した[3]形ながら放映が行われた。なお画面サイズも16:9のビスタサイズではなく4:3にカットした標準サイズであった。
また、本作品は主題歌を始めとする音楽関連分野にTHE ALFEEが参加したことでも話題を呼んだ。
なお、本作品はアニメ版の他、中平凱によるコミック版と米村正二による小説版がそれぞれメディアワークスから出版されている。
[編集] 演出
上記の記述からも明らかなように、本作品を特徴づける最大の要因は、通常の放送形態(一話30分)とは異なる、1話あたりの尺であろう。およそ45分と通常番組の二倍近い尺で構成される本作品では、その尺を最大限に生かした演出が試みられている。
歴史的にテレビアニメにおいて、とりわけマスを対象としたジャンルアニメにおいては、いかに視聴者の視線を放送時間内連続して把持し続けるかが常に問題であった。それゆえ、そうした制約の下、真っ先に削りとられてきたのが「日常場面」の描写である。
食事・入浴など、我々がそれと認識している「日常場面」に始まり、我々自身意識していない何気無い「日常場面」の描写は映像表現において本来的に「余剰」として抑圧の対象とされてきた。こと低年齢層を主な視聴対象とする傾向の強いアニメーションはそれが顕著である。無駄を極力減らし見せ場を作ることはその是非は措くとしても日本アニメーションの厳然たる歴史的事実だろう。実際我々はもはや昨今のテレビアニメにおいて登場人物が何かものを口にする場面を丹念に描写した作品を想起するのは難しい。
さて、本作品の監督を務める高橋ナオヒトは、そのようなアニメーションの現在的状況にあって、少数的に上記のようなささいな「日常場面」を執拗に描写することに意識的な演出家である。
それは『To Heart』を見れば一目瞭然であるが、我々の意識からはするりとすり抜けていってしまうような日常の断片を一つ一つ拾いあげ、嫌味にならない程度の視線をそこに向ける、とひとまず定式化することのできるような演出であるが、それが一般に美少女アニメ萌えアニメといったジャンル的制約と相まって不思議な情感を表現している。
過剰な盛り上がりを避け、できるだけ顔のアップショットに頼らないその演出は、我々が普段アニメーションの前提として無意識に仮定する諸々の条件を露呈させてやまない。しかし同時に、特別たいした事件が無くともしっかりとした映像を表現することが可能であるという事実を静かに告げている。
そのような彼の独特な演出が一つの高まりを見せているのが本作品である。例外的な放送時間の件も以上のような彼の特徴的な作品作りを考えると、功を奏しているといっていいだろう。全編に渡って監督のコントロールの行き届いた本作は、高橋とO.L.M.の事実的な代表作である。
具体的な見せ場を一話から指摘すると、本作品の特徴上どこか一つを取り上げるのは困難であるが、あえて多分に私情を交え言うのならば、中盤の主人公つばさが友達に向けて手紙を自室で書いている場面が挙げられよう。通常の作品では間単に省略されてしまうような場面を拾ったこのシーンは、つたない筆致のつばさの心情を表現すると共に、背後でゆっくりと流れる時間もまた表現されている。このような時間の演出が現代の日本アニメーションで描かれたことはそれだけで本作品の確かな方向性を感じさせる。
[編集] あらすじ
北海道の牧場に住む少女・椎名つばさが人間化したリベルス[4]である少女・椎名ヒカルと共にフィギュア17に変身し、同じく宇宙から来た生物兵器マギュアを倒していく。また、内気で内向的な少女であるつばさはヒカルとの生活やこれらの闘いの中で、精神面でも少しずつ成長していく。
[編集] 登場人物
- 椎名つばさ(声優:矢島晶子)
- 北海道に住む小学4年生の少女。心優しいものの内向的な性格であり、何事にも悲観的になりがちである。父親との2人暮らし(母親は既に他界している)だが、父親はパン職人の修行に没頭しており、家ではほとんど1人で過ごしていた。
- また、東京から転校して来たばかりのせいか、学校でもクラスにもなじめないままで孤独に過ごしていた。成り行きからヒカル、D・Dと共に生活することになる。
- 椎名ヒカル(声優:折笠富美子)
- D・Dが携帯していたリベルスが何らかの理由でつばさと瓜二つに変身して生まれた少女。生まれる際につばさの全ての記憶を引き継いでいるが、性格は明朗快活で楽天的と正反対である。なお、ヒカルの名は自分でつけたものである。
- D・Dの記憶操作により、周りにはつばさとは双子の姉妹だと思われている。
- フィギュア17(声優:無し)
- つばさとヒカルが融合して変身した戦闘形態の姿の名称。ヒカルが名づけた。ちなみに名前の"フィギュア"はリベルスとの融合後の戦闘形態を指す言葉に、"17"はヒカルの認識番号が17番であったことに、それぞれ由来している。
- D・D(声優:小山力也)
- 宇宙人の警察官。不慮の事故により地球に不時着し、つばさと出会う。不時着の際に輸送していたマギュアの卵を飛散させたため、それらを退治するため地球に留まることになり、堂本大輔という地球人としてつばさ達と暮らすことになる。
- 記憶操作により、周りにはつばさの父、英夫の後輩でカメラマンと思われている。弱い。
- オルディナ(声優:井上喜久子)
- D・Dの同僚で、彼のマギュア退治を助けるために地球にやってきた。マギュアの探査・分析や対マギュア装備の開発などの面で高い能力を発揮するが、地上への被害等については無頓着で力押しな戦い方をする。
- 相沢翔(声優:鶴野恭子)
- つばさ・ヒカルの同級生。年齢の割に物静かで大人びた雰囲気を持っている。大空への憧れと自分の夢を語ることでつばさと親密になっていく。生まれつき心臓に持病を持っているため、激しい運動をすることが出来ない。
- 萩原健太(声優:加藤優子)
- つばさ・ヒカルの同級生。ぶっきらぼうで無愛想な少年。つばさのことを多少意識している。
- 唐沢飛鳥(声優:柚木涼香)
- つばさ・ヒカルの同級生で友人。クラス委員長をしている。荻原健太に好意を抱いている。
- 伊藤典子(声優:高野直子)
- つばさ・ヒカルの同級生で友人。
- 小川真二(声優:本田貴子)
- つばさ・ヒカルの同級生。荻原健太の友人でつるんでいることが多い。
- 沢田美奈(声優:釘宮理恵)
- つばさ・ヒカルの同級生。高飛車で何かとつばさに絡んでくる。
- 青山時夫(声優:亀井芳子)
- つばさ・ヒカルとは別のクラスにいる。ヒカルに積極的に言い寄ってくる。
- 日比野明子(声優:加藤優子)
- つばさ・ヒカルのクラスの担任。
- 椎名英夫(声優:佐藤政道)
- つばさの父親。D・Dの記憶操作でヒカルも娘と認識している。パン職人の修行につばさを連れて北海道にやってきた。
- 茨城新一(声優:大川透)
- パン職人で椎名英夫の先輩。英夫にパン作りの指導をしたり、つばさ達の住む家を提供したりと、色々世話をしている。
- 茨城凛(声優:さとうあい)
- 茨城新一の妻。
- 茨城サクラ(声優:堀江由衣)
- 茨城新一の娘。中学2年生。若干反抗期気味。
- 茨城六郎(声優:丸山詠二)
- 茨城新一の父で牧場経営をしている。無口だが仕事には厳しい。
- 黒田勇(声優:大塚芳忠)
- 地元の新聞社に勤める記者。マギュアによる怪現象に興味を抱き、独自に調査を行っている。最終話で…。
[編集] 放送リスト
- 「今の自分は好きですか」
- 「一緒にいたい人はいますか」
- 「勇気を出してみませんか」
- 「羽ばたく心を持っていますか」
- 「大切な人はいますか」
- 「守りたいものはありますか」
- 「さよならは言えますか」
- 「想いは届いていますか」
- 「その声が聞こえますか」
- 「心は伝わりますか」
- 「ずっと側にいてくれますか」
- 「思い出はのこりますか」
- 「優しさをおぼえていますか」
[編集] スタッフ
- 原作:O.L.M・GENCO
- 監督:高橋ナオヒト
- 企画:真木太郎・数納孝・今西和人
- シリーズ構成・脚本:米村正二
- キャラクターデザイン・総作画監督:千羽由利子
- モンスター・メカニックデザイン:西中康弘
- 音楽監督:高見沢俊彦(THE ALFEE)
- 音響監督:渡辺淳
- 美術監修:小林七郎
- 美術監督:嶋田昭夫
- 色彩設計:渡辺亜紀
- ブロップデザイン:斉藤英子
- 撮影監督:野口肇・福島敏行
- テクニカルディレクター:高橋賢太郎
- 編集:辺見俊夫
- 音楽プロデューサー:木崎徹
- 演出:高橋ナオヒト、須藤典彦、村田和也、深沢幸司、玉川達文、矢野博之、辻初樹、瀬晴よし子
- 作画監督:沢田正人、斉藤英子、原将治、佐藤和巳、佐藤陵、藤澤俊幸
- 協力:今川泰宏・きむらひでふみ
- 制作担当:和崎伸之
- エグゼクティブプロデューサー:川城和実・町野洋一・柳沢隆行・佐藤辰男
- プロデューサー:大澤信博・神田修吉
- プロデュース:GENCO
- アニメーション制作:オー・エル・エム
- 製作:フィギュア17製作委員会:バンダイビジュアル・テレビ東京メディアネット・AT-X・メディアワークス・GENCO
[編集] 主題歌
- オープニング『BOY』
- エンディング『Fairy Dance』
- 歌:THE ALFEE
- 作詞・作曲:高見沢俊彦
- 編曲:THE ALFEE
- アルフィー側の商業的な理由からシングルカットはされていない。アルフィーの曲は常にオリコン10位以内にランクインされているため、深夜アニメのタイアップのみではヒットに結びつかず、記録を維持出来ないというのが理由とされている。ちなみに2曲ともアルバム『GLINT BEAT』に収録。
- オリジナルサウンドトラックがランティスから販売されているが、フジテレビの『めざましテレビ』においてニュースコーナーなどのBGMとしてよく使われている。
[編集] テレビ東京での表現規制について
テレビ東京はポケモンショックによる騒動以降、外部からの批判を未然に防止するため、アニメにおける表現等について極端に厳格な内部基準を設け、それに少しでも抵触するアニメは容赦無く修正を行っている。これがいわゆるテレビ東京の自主規制である。
『フィギュア17』においてこの自主規制に抵触するとされた部分はヒカルが生まれたシーンと入浴シーンである。これはどちらも裸の女性が出てくるという点だけで規制対象とされた。修正は不自然なカットやフレームアウト(画面の外に追い出してしまうこと)によって行われ、作品に若干の不自然さを残すことになった。
なお、本作品のDVDビデオでは、テレビ東京が規制対象とした上記シーンもそのまま残されており、また余談ではあるが、同DVDビデオはテレビ番組や映画における暴力表現や性的表現について厳しくレイティングを行っていることで知られるアメリカ合衆国においても販売されている。その際付与されたレイティングは"7UP"(視聴者は7歳以上であることを推奨するという意味)となっている。
[編集] 備考
つばさ役の声優・矢島晶子が野原しんのすけ役で主演しているアニメ『クレヨンしんちゃん』で、ふたば幼稚園のスキー旅行のため大宮駅から上越新幹線で越後湯沢に行く話があったが、その時にしんのすけが、やはり大宮駅に停車する山形新幹線つばさ号に乗りたいとして、「つばさちゃ~ん」とやたらと強調するようにはしゃぐシーンがあった(「楽しいスキー教室だゾ」 2004年1月24日放送第491話 DVD第7期傑作選第7巻8話目)。
これは明らかに『フィギュア17』を知っている視聴者を狙った声優ネタを意識した演出であるといえよう。
[編集] 外部リンク
[編集] 脚注
- ^ 監督によれば本作品は「北の国から+遊星からの物体X」を目指したものであるとのこと。
- ^ 1時間枠で放送されたアニメ番組は1977年12月~1979年3月まで放送された『野球狂の詩』以来2作品目。くしくも同作品も毎月1回の放送であった。
- ^ その他、枠の都合による編集や同局の自主規制による若干のシーンの修正も行われた。
- ^ 宇宙人が使用する金属生命体兵器で、高度な知能と状況分析力を持った戦闘服のような役割を担う。普通のリベルスは液体バイオカプセルのようなものである。
テレビ東京 金曜27:05枠(2002年1月~3月) | ||
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