フラッシュディスク
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フラッシュディスク (flash disk) は、OSからはハードディスクドライブのように見えるフラッシュメモリであり、Solid State Disk (SSD) の一種。フラッシュドライブともいう。USBメモリを指す場合もあれば、内蔵ハードディスクドライブ (HDD) を置き換える用途で使われるフラッシュメモリを指すこともある。ここでは後者について述べる。
HDDに対する強みとして、
- シーク時間が短く、ランダムアクセス性に著しく優れる。
- 耐衝撃性が高い。駆動部分がないので読み書き中に振動させても壊れない。
- 低消費電力。
- 低放熱。
- 耐環境性が高い。HDDよりも高い環境温度まで対応している。
- 軽量で薄型。
- 低エラー性。シークエラーがない。
などが挙げられる。これらの特徴から、特にノートPCに向いているといえる。
一方、2006年現在、
- 容量あたりの単価が高価である。
- 書き換え可能回数が数万回程度であり、HDDと比べるとかなり少ない。
- 転送速度が最新型デスクトップPC向けHDDより、読み込みで約50%、書き込みで約25%程度と遅く、シーケンシャルアクセスに弱い。
- 補足:ただし、HDDはデータを記録する場所によって読み書きの速度に大きな違いがあり、読み書きの遅い領域では最も速い領域の6割程度の速度になる。
という欠点があり、今のところ一般には普及していない。
しかしながら、HDDに対して様々な利点があることから、容量あたりの単価が下がれば、一気に普及に拍車がかかり、将来的にはHDDの代替になると考えられている。また、転送速度が高速なタイプも開発されており、シーケンシャルアクセスが弱いという欠点も徐々に改善されていくものと思われる。 書き換え可能回数に上限がある問題についても、書き込みセクタを一部分に集中させずソフトウェア的に分散化させるなどの工夫により、長寿命化が図られている。
[編集] 適した用途
- データの読み書きの頻度に大きな非対称性があるもの
- データの読み出しが中心で書き込みをほとんど行わないものでは、フラッシュメモリの欠点である書き換え可能回数の少なさが緩和される。例えば、プログラムファイルは一度インストールされると、新たなファイルが上書きされるまで読み出しのみとなる。同様に、編集などによる再保存を行わないデータも読み出しが中心となる。
- データの読み出し速度があまり重要ではないもの
- 例えば、音楽や映像の再生の場合、データの再生に必要な速度が確保されていればさしあたり実用上の支障はない。この種のデータでは、データファイルを外部のストレージ等との間で出し入れする際に、はじめて読み出し・書き込み速度が重要になる。
- 小さなファイルの読み出し、たくさんのファイルの先頭部分の読み出し
- 小さなファイルの高速読み出しやインデックスなどの作成でたくさんのファイルにアクセスするときにアクセス速度が重要になる場合もあるが、フラッシュメモリとHDDの比較では、フラッシュメモリのシークの速さ(HDDのシークの遅さ)が読み出し速度の遅さを相殺する。
- 身近な例
- 典型的なものでは、音楽データファイルを格納するデジタルオーディオプレーヤーのフラッシュストレージがある。データを一度保存するとあとは読み出しが中心となり、再生には高速な読み出し速度を必要としない。また、ストレージ容量の大容量化が進むにつれて、繰り返し古いデータを削除して新しいデータを入れるといった操作の頻度も低下し、欠点が現れにくくなる。
- 適さないもの
- 上とは反対の性質をもつものが適さない。読み書きの対称性では、例えば、繰り返し更新を行うデータベースのデータファイルや、書き込みが繰り返し行われるキャッシュファイルや、用途によっては大量に作成されるテンポラリファイルなどがある。キャッシュファイルやテンポラリファイルについては、これらを使用しないオンメモリのシステムやソフトを用いることで対処できる。
- データの読み書き速度では、大容量のファイルの保存や読み出しを短時間あるいは頻繁に行いたい用途には向かない。例えば、100MB単位の大容量の音声データ(WAVなど)や映像・画像などのデータの編集には向かなくなる。
- このように、データの再生や数MB程度の小規模なファイルの出し入れが中心の使い方か、データベースやワークステーション的な使い方が中心かによって向き不向きがある。
- HDDとの棲み分け
- 同様にHDDにも用途により向き不向きがある。大きなサイズのファイルの連続読み書きにすぐれる大型の3.5インチ HDDはデスクトップパソコンなど据え置きの大型機器にしか搭載できず、近年広く普及しているノートパソコンに使用できない。小型HDDになると連続読み書きの性能は低下し、1.8インチHDDになるとフラッシュメモリが上回るようになる。また、放熱や消費電力の大きいHDDはノートパソコンやモバイルパソコンには適さない。このように、読み書き性能や大容量を重視するか使い勝手やモバイル性能など他の要素を重視するかは、用途によって変わってくる。
[編集] 製品や採用例
現在、フラッシュディスク単体の製品が幾つかのメーカーから販売されている。
2004年1月、日立超LSIシステムズが[Flash Memory Drive]を発表
http://www.hitachi-ul.co.jp/system/FMD/index.html
2006年6月、台湾PQI社が容量64GBの2.5インチSATAフラッシュディスクを発表、8月に出荷
http://japanese.engadget.com/2006/06/08/pqi-64gb-sata-ssd/
2006年7月、SONYの小型ノートPC「VAIO type U <ゼロスピンドル> モデル」にて、韓国サムスン電子製16GBのフラッシュディスクが採用された。
後に32GBのモデルも追加されている。
2007年 1月 4日に、米SanDiskが容量32GBの1.8インチシリコンディスク「SSD UATA 5000」を開発
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0105/sandisk.htm
2007年 2月**日に、Adtronが容量160GBの2.5インチSLCシリコンディスク、IDE接続の「I25FB」とSATA接続の「A25FB」が発表
http://japanese.engadget.com/2007/02/24/adtron-2-5-160gb-ssd/
2007年 2月**日に、台湾A-DATAが、容量128GBの2.5インチシリコンディスクを発表、IDE接続の1.8インチ64GBモデル、ExpressCard型の32GBモデルもサンプル出荷中
http://japanese.engadget.com/2007/01/27/a-data-2-5inch-128gb-ssd/
2007年 2月**日に、台湾Ritekが、1.8インチ・2.5インチともに容量16GBモデル・32GBモデルのシリコンディスクを発表
http://japanese.engadget.com/2007/01/10/ritek-16gb-32gb-ssd/
2007年 3月13日に、米SanDiskが容量32GBの2.5インチシリコンディスク「SDD SATA 5000 2.5"」を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0314/sandisk.htm
上記ドライブ製品とは別に、SDメモリカードやCFメモリーカードを組み合わせてSSDドライブを自作する製品も出ている。
センチュリー「シリコンディスクビルダーSD」SDB25SD
http://www.century.co.jp/products/suto/sdb25sd.html
センチュリー「シリコンディスクビルダー」SDB35CF
http://www.century.co.jp/products/suto/sdb35cf.html
過去、前世代製品としては、株式会社メルコ(現在のバッファロー)が1990年9月にシリコンディスク製品SDAシリーズなどをPC-98シリーズ用に発売している。(記憶素子としてはDRAMを用い、外部電源を供給することで記憶を保持する仕組みの製品であった)