マスメディアの戦争責任
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マスメディアの戦争責任(‐せんそうせきにん)とは、マスメディアが国民に事実を報道することを怠ったり、対外強硬論を助長する報道を行うことで、開戦に至ったり戦争の長期化を招くこと。 軍部に迎合したり視点の極端に偏った取材とその掲載は、報道機関の使命を逸脱したものとして批判の対象とされる。
[編集] 日本
戦前の日本では新聞紙法によって新聞は検閲の対象となっており、軍や政府は記事の差し止めや写真の不掲載といった措置を取ることができた。大正時代まではこうした環境下にあっても露骨な言論統制が行われる機会は少なかったが、満州事変以後、軍の政治に対する発言力が増大すると、正面から政府や軍を批判する記事の掲載が困難となっていった。とりわけ、日中戦争の勃発とそれに続く国家総動員法の制定はそれを決定づけることになった。この点は当時唯一の放送機関であった日本放送協会においても変わるところはなかった。
この結果、日本のラジオ・新聞などは政府の発表を検証しないままに報道することとなり、国民の多くは国際情勢ならびに戦況の実態を知らされず、戦争が長期化する一因ともなった。
このような言論統制の「被害者」という側面がある一方で、新聞はしばしば政府の外交政策を「弱腰」「軟弱外交」という形で批判し、対外強硬論を煽る役割も果たした。戦争が長期化すると、政府や軍に迎合する形で戦争の完遂や国策への協力を強く訴える記事が多く掲載された。
[編集] アメリカ合衆国
イラク戦争に関して、イラク共和国国内に大量破壊兵器が結果として存在しなかったが、多くのマスメディアは「大量破壊兵器の除去」という開戦理由への検証を怠った。
[編集] 参考文献
- 「新聞は戦争を美化せよ! ―戦時国家情報機構史」(山中恒、2000年、小学館)