マチアス・ルスト
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マチアス・ルスト(Mathias Rust, 1968年 - )は、ハンブルグ生まれのドイツ人で、冷戦のさなか1987年にフィンランドのヘルシンキからモスクワまで小型飛行機を操縦し、赤の広場に着陸したことで知られている。
事件は1987年5月28日に起きた。当時19歳のルストはフィンランドのヘルシンキ・マルミ空港でセスナ機の燃料を給油し、ストックホルムへ向かうことを管制官に告げ離陸した。しかし彼は機首を東に向け、まもなくフィンランドの管制空域から機影が消えた。彼はバルト海沿岸に沿って飛んだのち、モスクワへと向かった。この日は偶然ソビエト連邦の国境警備隊の休日であり、警備が緩んでいた隙をついて機体はモスクワまで妨害を受けずに飛行した。ルストは機体をソ連の中枢であるクレムリンに隣接する赤の広場に着陸させた。彼は直ちに逮捕された。
当時ソ連の改革を進めていたミハイル・ゴルバチョフ大統領はこの事件を好機ととらえ、グラスノスチやペレストロイカに反対していた国防相および防空軍総司令官を解任した。
裁判は9月2日にモスクワで始められた。ルストは飛行の目的を"東西の対立を解消し平和をもたらす為"であると述べた。彼は暴力行為、航空法違反、不法入国の罪で4年間の懲役を命じられた。432日間の懲役生活のあと彼は国外退去処分となり、1988年8月3日に西ドイツに戻った。その後彼はハンブルグの病院で働き始めたが、1989年交際を断った看護婦をナイフで刺し、2年半の懲役刑となった。釈放後はソビエト崩壊後のロシアへ渡りなどしていたが、現在は結婚しベルリンに居住している。
事件の時操縦したセスナ172B型機は現在日本の実業家が保有しているらしい。