マッチ売りの少女
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マッチ売りの少女(まっちうりのしょうじょ)は、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの創作童話の一つ。彼の5番目の作品として1848年に発表された。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] あらすじ
年の瀬も押し迫った大晦日の夜、小さな少女が一人、寒空の下でマッチを売っていた。マッチが売れなければ父親に叱られるので、すべて売り切るまでは家には帰れない。しかし、人々は年の瀬の慌ただしさから、少女には目もくれずに通り過ぎていった。
夜も更け、少女は少しでも自分を暖めようとマッチに火を付けた。マッチの炎と共に、暖かいストーブや七面鳥などのごちそう、飾られたクリスマスツリーなどの幻影が一つ一つと現れ、炎が消えると同時に幻影も消えた。
流れ星が流れ、少女は可愛がってくれた祖母が「流れ星は誰かの命が消えようとしている象徴なのだ」と言った事を思いだした。次のマッチをすると、その祖母の幻影が現れた。マッチの炎が消えると、祖母も消えてしまうことを恐れた少女は慌てて持っていたマッチ全てに火を付けた。祖母の姿は明るい光に包まれ、少女を優しく抱きしめ、天国へと昇っていった。
新しい年の朝、町の人々が見つけたのは、マッチの燃えかすを抱えて微笑む、少女の小さな骸であった。
[編集] 背景
アンデルセンは、経済的に全く恵まれない少女時代を送った母親をモデルにして、この作品を作ったといわれている。
[編集] 小説以外のメディア
[編集] オペラ
ヘルムート・ラッヘンマンのオペラ『マッチ売りの少女』1997年初演。
全編が彼の作曲語法であるさまざまな楽器の特殊奏法を駆使した噪音で埋め尽くされており、寒さで凍える手を擦る表現として会場内に配置された合唱団が紙やすりを擦ったり、後半マッチを擦る場面では摩擦音を思わせる音響が様々な楽器音によって奏でられ、また唯一舞台に上る登場人物である主人公の少女は舌打ちでアリアを演奏するといった奇抜な音響が駆使される。脚本では放火テロリスト犯の少女の手記が重ねられている。最後に少女が昇天していく場面では、日本の雅楽の楽器である笙が用いられる。初演を含む多くの公演では宮田まゆみが演奏を担当した。
ドイツ国内での世界初演は賛成派と反対派に分かれ、ブーイングもあったものの前衛的な演出にはつきものでスキャンダルと目されるほどではなかった。日本では東京交響楽団が2000年に演奏会形式で改定稿を初演した。その際主催側の一部の宣伝がいかにも童話的なわかりやすいオペラを意図したものかのように報じていたため、ラッヘンマンの作風を知らなかった観客は衝撃を受けたというが、終演後は攻撃的なブーイングなどはなく穏健な拍手に包まれた。フランスでは2001年9月15日にパリ・オペラ座で初演されたが、会場の99パーセントが終演直後に大ブーイングを飛ばし、一部の観客が対抗的に拍手をするもわずか数人がパラパラと手を叩くに過ぎないという、ワーグナーのタンホイザーやストラヴィンスキーの春の祭典のフランス初演をも凌ぐパリ音楽界始まって以来の大スキャンダルとなった。その後のシュトットガルト初演は数人が客席から去ったものの、三シーズンにわたる十数回のチケットは全て売り切れた。ただし、ラッヘンマンの作歴全体から見れば、このオペラは決して彼にとって最前衛の作品というわけではなく、過去の作曲技法の集大成という事ができる。全一幕で演奏時間は2時間で、四管編成の管弦楽を取る。
日本では現在2種類(ドイツ世界初演の録音および日本初演の録音)のCDが出ているほか、海外ではシュトットガルト初演のCDらSWRのバーデン・バーデンのCDもある。
[編集] アニメ
日本において少なくとも4回アニメ化されている。
- 東宝チャンピオンまつり版:1971年12月12日公開
- アンデルセン物語版:1971年12月26日放送(第52話)
- 東映まんがまつり版:1975年12月20日公開
- 雪の女王 (NHKアニメ)版:2005年10月2日放送(第19話)マリア(マッチ売りの少女)役・大谷育江
アニメ『小公女セーラ』第42話において、追放されたセーラが冬の街頭でマッチを売り歩くというあからさまなパロディ場面が出てくる。もちろんバーネットの原作『小公女』にはないオリジナル演出である。
2006年にディズニーによって短編映画作品として製作されており、同年に発売された『リトル・マーメイド』のDVDに特典映像として収録されている。この作品は第79回アカデミー賞で短編アニメ映画賞の候補になった。