メデューサ
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メデューサ(Medusa、メドゥーサ、メドューサとも)はゴルゴン三姉妹の一人。姉達、「力」のステンノ、「広い海」のエウリュアレと共に「女王」メドゥーサと呼ばれる。語源はギリシャ語の「medusa(女支配者)」。
見たものを石に変える能力を持つ魔物。頭髪は無数の毒蛇で、イノシシの歯、青銅の手、黄金の翼をそなえた容姿をもっている。
海の神であるポセイドンの愛人であり、ポセイドンとの間の子にペガサスとクリュサオルがいる。ペルセウスによって首を切り落とされ退治された。
元はギリシアの先住民族であるペラスゴイ人の神話の中で主たる女神のうちの一人。また、コリントスでは大地の女神(デメテルと同一)とされていた。蛇の髪は大地と流れる川を表し、大地と水の女神であった。 ポセイドンも、元はギリシャ神話の前から存在していた神であり、二人は夫婦であった。
春の花咲く野で神に略奪された少女としてペルセポネに近く、「女妖怪」はいわば美しいペルセポネのもうひとつの面といわれる。(オデュッセイア11.634)
ギリシア生粋のアテナからそうして理由無く憎まれる存在となり、アテナによって美貌は身の毛のよだつような醜さに変えられ、讃えられるほどの美しい髪ですら、一本一本を蛇に変えられてしまう。剰え、アテナはそれで許そうとせず、メデューサ退治のペルセウスを教唆して差し向けている。
[編集] 物語
もともと美しい少女であったメドゥーサは、海神ポセイドンと、アテナの神殿のひとつで交わったためにアテナの怒りをかい、怪物にされた。これに抗議したメデューサの姉たちも、怪物に変えられてしまう。姉のエウリュアレーとステンノーは不死身であったが、メドゥーサだけは可死であったためペルセウスに討ち取られた。
ペルセウスがメドゥーサの首を切り落とすと、その死体からポセイドンの子であるクリュサオールとペガサスが生まれでた。また、アテナはその首を自分の盾にはめこんだ。
ペルセウスが手を洗うときに、メドゥーサの首を海藻の上に置いたことから珊瑚が生じたと言われる。
──別の物語もある。 美しい少女であったメドゥーサは次第に傲慢になっていく。そしてとうとう戦女神アテナよりも美しいと公言してしまう。この発言がアテナの怒りを買い、醜い姿に変えられた。
ちなみにこの場合姉妹は存在しない場合と、存在する場合がある。また、この話は機織りの娘の物語(→アラクネ)とも混同されやすく、もはや同一視されているようである。
醜い姿に変えられたメドゥーサは、アテナ等に手助けされたペルセウスに首を切られる。このときペルセウスの持っていた盾は、アテナの防具アイギスとも言われる。メデューサは、見るものを石にしてしまう力を持っていて、これまでは誰も退治できなかったのである。ペルセウスは鏡のように磨き抜かれた盾を見ながら、曲がった刀で眠っているメドゥーサの首を掻ききった。メドゥーサの首からあふれ出た血は、空駆ける天馬ペガサスを生んだ。ペルセウスが空飛ぶ翼のあるサンダルで海を渡っているとき、くるんであったメドゥーサの首から血が滴り落ち、それが赤い珊瑚になった。切り落としたメドゥーサの首から滴る血が砂漠に落ち、サソリなどの猛毒の生き物が生まれたともされる。
その帰路の途中、ペルセウスは海から突き出た岩に縛り付けられた美女を見つける。彼女の名はアンドロメダといい、母親が自分の娘アンドロメダの方が海のニンフより美しい、と公言した為、海神ポセイドンの怒りに触れ、海の怪物(鯨のことと思われる)の生贄にされるため、岩に貼り付けになっているのだと言う。かわいそうに思ったペルセウスは美女を助けることを約束する。
美女を襲いに来た海の怪物には剣はまったく歯が立たず、そこで彼はメドゥーサの首を取り出し、怪物を石にかえた。
ペルセウスは無事に課題を終えたことの感謝の意を含め、加護してくれていたアテナにメドゥーサの首を送る。アテナは自分の盾アイギスにメドゥーサの首をつけ、最強の盾とした。
また、切り取られたメデューサの首は、ペルセウスから女神アテナに献上され、アテナの胸当てとなり、アテナの盾「イージス(アイギス(aegis))の盾」にはメデューサの首の絵が刻まれたとされる説もある。