モバイルギア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
モバイルギア(Mobilegear)は、NECが発売したPDAシリーズ名である。愛称はモバギ。バッテリーによる長時間駆動、起動時間の短さ、入力しやすいキーボードで、今日でも愛用者が多い。
目次 |
[編集] 概要
独自メニューを採用したMC-K/MC-P/MC-MK/MC-MPシリーズと、Windows CEを搭載したMC-CS/MC-R(MC/R)シリーズに大きく分かれる。MC-R(MC/R)シリーズには「モバイルギアII(2)」というシリーズ名がついている。MC-K・MC-MK・MC-Rシリーズは、この手のHPCとしては16.5mmピッチと大型のキーボードを搭載しているのが特徴である(このサイズのキーボードを備えた機種として他に、日立製作所のPERSONAなどがある)。
独自メニューを採用した機種のうち、MC-P/MC-MPがペンオペレーションモデル、MC-K/MC-MKがキーボードモデルである。いずれも内蔵モデムを搭載し、当時普及しだした電子メールを手軽に送受信できるできるということを売りにしていた。まだ携帯電話の普及率も高くなく、またその携帯電話端末での電子メールのやり取りが一般的ではなかったころの話である。
MC-CSシリーズはMC-MKシリーズに比べて小さく重量は軽いのが特徴。同時期に発売され、ほぼ同じ大きさのカシオペアAシリーズと比較すると多少ながら高速で動作した。MC-CSシリーズは3機種が発売されたが、変更点はメモリの増加などマイナーチェンジにとどまっている。
その後登場したMC-R(MC/R)シリーズは、MC-MKシリーズとほぼ同じサイズでハーフVGA(640×240)液晶搭載のMC-R300/400/500シリーズと、B5サイズでSVGA(800×600)液晶搭載のMC-R700シリーズが発売される。
しかし、他のPDAと同様、高機能化した携帯電話と軽量化・サスペンド常用したノートPCの間に挟まれて販売が低迷し、2000年12月発売のMC/R550・MC/R450を最後に後継機種は登場せず、2002年3月をもって製造は中止となった。
MC-R(MC/R)シリーズをベースに製造されたものに「シグマリオン」(NTTドコモ)があるが、すでに生産は終了している。他にMCシリーズの後継機としてポケットギア(MC-PGシリーズ)も存在したが、やはり販売は終了されている。
[編集] 独自メニューの機種
MS-DOS(PC/AT機版)ver.6.20上に、独自メニュー(実行ファイルのファイル名から、俗に「UNISHELL〔ユニシェル〕」と呼ばれる)を追加したもの。単3アルカリ電池2本で動作し、14400bpsのモデムを内蔵している。搭載CPUは、80x86系(Intel 486SX互換カスタムチップ)。
[編集] MC-P・MC-MPシリーズ
MC-P1、MC-MP1
- ペンオペレーションモデル。タッチパネル搭載。画面解像度は320×240。
[編集] MC-K・MC-MKシリーズ
MC-K1(1996年4月)、MC-MK11、MC-MK12、MC-MK22、MC-MK32
- キーボード搭載モデル。タッチパネルは不搭載。画面解像度は640×240。MC-K1は筐体が濃紺で「青モバ」と俗称された。これに対し、MC-MK11以降は筐体が黒になり、俗称は「黒モバ」(ただし、MC-MK11/12とMK22/32では色調が若干異なる)。
ユーザーによる解析の結果、MC-KおよびMC-MKシリーズでは、UNISHELLを外して、MS-DOSマシンとして使える事が判っている。これを俗に"DOS化"と呼ぶ。ただし、切り離した結果、UNISHELLに含まれる拡張機能を補う為に、様々なデバイスドライバやパッチ加工など、工夫が必要である。似た方法でFreeBSDを動作させることも可能である。
[編集] WindowsCE搭載機種
モノクロモデルはSTN4階調表示。カラー液晶モデルはSTN65536色表示(MC-R500、MC-R510はSTN256色表示)。
[編集] MC-CSシリーズ
MC-CS11,MC-CS12,MC-CS13
- WindowsCE1.0搭載。
- CPUはMIPSのR4000シリーズ互換のVR4102を搭載
- 筐体やキーボードはMC-MKやMC-Rシリーズと違って小型であり、画面解像度は480×240。
- 単3アルカリ電池2本で動作し、14400bpsのモデムを内蔵している。
[編集] MC-R(MC/R)シリーズ
Mobile Gear IIのシリーズ名がある。
WindowsCE2.0以降を搭載し、筐体・キーボードはMC-K・MC-MKとほぼ同サイズ。内蔵モデムは56kbps対応。PCカードスロットと、CFカードスロットを各1つ装備(MC/R320・MC/R330はCFカードスロット無し)。CPUはMIPSのR4000シリーズ互換のVR4111またはVR4121を搭載
- MC-R300シリーズ ……MC-R300、MC/R320、MC/R330
- モノクロ液晶搭載モデル。単3アルカリ電池2本で動作する。MC-R300のみバックライト搭載。
- MC-R400シリーズ ……MC/R430、MC/R450
- カラー液晶モデル。PostPet等、個人向けのアプリケーションソフトをインストールしたモデル。
- MC-R500シリーズ ……MC-R500、MC-R510、MC-R520、MC/R530、MC/R550
- カラー液晶モデル。
- MC-R700シリーズ ……MC-R700、MC/R730
- カラー液晶モデルで、800×600ドットの液晶を搭載したB5サイズモデル。
搭載OS
- MC-R300、MC-R500、MC-R510はWindows CE 2.01搭載
- MC/R320、MC/R330、MC/R430、MC-R520、MC/R530、MC/R700、MC-R730/730FはWindows CE 2.11 (Handheld PC Professional Edition Version 3.0)搭載
- MC-R450、MC-R550はWindows CE 3.0(Windows for Handheld PC 2000)搭載
搭載CPU
[編集] モバイルギアをベースにしたモデル
[編集] MobileGear for DoCoMo
NTTドコモの端末と連携して使用する製品として、MobileGearをベースに製造され、NTTドコモから販売された製品である。ベースモデルとほぼ同じ仕様・外観だが、携帯電話を接続するコネクタが付き、代わりに内蔵モデムが外されている。また、筐体はNEC直販機種にはない濃緑色が採用された。
- MobileGear for DoCoMo MC-MKシリーズ(MC-MK12といわれている)がベース。
- MobileGearII for DoCoMo MC-R300がベース。
[編集] シグマリオン(sigmarion)
MobileGear for DoCoMo同様、NTTドコモの携帯・PHSと接続して使用する製品として、NECが製造し、NTTドコモから販売された製品である。MobileGearのMC-Rシリーズを元にしているとされるが、ほぼベース機と同じ仕様である「MobileGear for DoCoMo」とは違って、モバイルギアとは筐体サイズ・外観・仕様とも大きく異なっている。キーピッチは14.1mm。
- シグマリオン(初代)
- 搭載OSはWindows CE 2.11 (Handheld PC Professional Edition Version 3.0)。CPUはMIPS(VR4121)、液晶はSTN256色で解像度640×240のハーフVGA。筐体はゼロハリバートンデザイン。
- シグマリオンII
- 搭載OSはWindows CE 3.0(Windows for Handheld PC 2000)。CPUはMIPS(VR4131)、液晶はHPA256色で解像度640×240のハーフVGA。筐体は引き続きゼロハリバートンデザイン。
- シグマリオンIII
- 搭載OSはWindowsCE.NET 4.1。CPUはStrongARM(PXA255)、液晶はTFT65536色で解像度800×480のワイドVGA。
[編集] 外部リンク
- NECインフロンティア Mobile Gear Age
- PDABiz……シグマリオンII/IIIの情報がある。