MS-DOS
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開発者: | マイクロソフト |
OSの系統: | DOS |
ソースコード: | クローズドソース |
最新リリース: | 8.0 / 2000年9月14日 |
カーネル種別: | モノリシックカーネル |
ユーザーインタフェース: | DOS CLI |
ライセンス: | プロプライエタリ |
開発状況: | 終了 |
MS-DOS(エムエス-ドス、Microsoft Disk Operating System)は、かつてマイクロソフトが開発・販売していた、パーソナルコンピュータ向けのオペレーティングシステム (OS) である。
動作対象は、8086系16/32ビットマイクロプロセッサ、及びその互換プロセッサを搭載したパーソナルコンピュータである。クロス開発環境などでは、8086系マイクロプロセッサをエミュレートした仮想ハードウェア上で動作させることもあった。
本来、IBM PCファミリ向けに開発されたものであり、同ファミリと同等のハードウェア構成(BIOS含む)でなければ動作は保証されないが、他のベンダーが製造、販売していた独自仕様のパーソナルコンピュータにおいて、それぞれの仕様に合わせてカスタマイズされたものが利用できる場合があった。日本においては、日本電気 (NEC) のPC-9800シリーズや、富士通のFMRシリーズ等に移植され、事実上の標準OSとして利用されていた。
目次 |
[編集] 開発の経緯
当時のマイクロソフトは、BASICインタプリタやアセンブラ、各種言語のコンパイラ等を開発しており、それらの製品のほとんどが、当時のパーソナルコンピュータ市場における主流(事実上の標準、デファクトスタンダード)OS、デジタル・リサーチのCP/M上で動作するものであった。
1980年7月頃、IBMは、後にIBM PCとなるパーソナルコンピュータの開発に着手した。しかし、IBMの主力商品である汎用コンピュータに比べると、ごく少数のスタッフとわずかな予算しか与えられなかった。プロジェクトリーダーのフィリップ・ドン・エストリッジは、可及的速やかに商品化にこぎ着けるために、ソフトウェアは自社開発せず、すべて外部から調達する方針を立てた。
IBMは、マイクロソフトに対し、当初はBASICなどの言語製品の開発を依頼していた。オペレーティングシステム (OS) についても、8086対応版のCP/Mをマイクロソフトに開発してもらおうとした。しかし、彼らはCP/Mのソースの権利を持っていなかった為、ビル・ゲイツのアドバイスに従ってデジタル・リサーチ社と交渉することにした。しかし、デジタル・リサーチとの交渉はうまくいかず、結局マイクロソフト自身がOSを開発する事となった。
とは言うものの、マイクロソフトにはOSの開発経験は無かったため、同じ頃、CP/Mが8086に移植されない事に業を煮やして独自に移植作業を行っていたシアトルコンピュータプロダクツ社の「86DOS」を開発者込みで買収し、IBM PC用に改修しPC DOSに仕立て上げた。このやり方を進言したのは、当時同社役員でもあった西和彦と言われている.
当初、IBM PCで動作するOSだったのでPC DOSと称していたが、マイクロソフトが他社にOEM供給する際には自社の商標 (MS) をつけ、MS-DOSとした。各OEM先が勝手な名前をつけていたため、混乱を避けるために整理したものである(「MS-DOSエンサイクロペディア」による)。リスクを軽減化するために買い取りを避け、IBM PCの出荷台数に対して使用料を支払うというライセンス契約をしたことが、のちのマイクロソフトの躍進の原動力と言え、また見方を変えれば、最終的に「軒先を貸して母屋を取られた」IBMの大失策であるとも言えた。
[編集] 概要
DOSと名付けられているように、汎用コンピュータなどのOSとは違い、主にディスクの管理を行うシングルタスクOSであった。マルチタスク機能・メモリ保護機能などは、OS内部には持っていなかった。また、グラフィック画面やサウンドの操作・ネットワーク機能などは、アプリケーションが直接I/Oを操作するか、デバイスドライバやMicrosoft Windowsなどで提供されていた。
[編集] ファイル管理
ファイルの管理は、File Allocation Table (FAT) とクラスタにより構成され、ファイル名は8.3ネーム、つまり、8文字までのベース名と3文字までの拡張子の合計11文字まで(拡張子の前の「.」は数えない)で表す。アルファベットの大文字と小文字は区別しない(全て大文字と見なされる)。さらにバージョン2以降では、ディレクトリやファイル属性の与奪が使用できた。
[編集] 起動順序
起動順序はバージョンによって若干違うが、概ね以下の通り。
- コンピュータのBasic Input/Output System (BIOS) やディスクのマスターブートレコードからディスクのセクタ0にあるブートセクタを読み込んで実行。
- IO.SYSを起動し、その後MSDOS.SYSに制御を移行しする。
- CONFIG.SYSがあれば記述されたデバイスドライバを読みこむ。
- バッチ処理のためのコマンドインタプリタでもある標準シェルCOMMAND.COMを起動する。
- AUTOEXEC.BATがあればその内容を実行し、環境変数の設定や起動時に実行すべきコマンド等の呼び出し、場合によってはアプリケーションの起動なども行う。
COMMAND.COMでは、各ドライブをA:から最大Z:(これは環境変数LASTDRIVEで変更可)までのドライブレターで管理し、内部コマンドではファイル・ディレクトリ一覧の参照、ファイルとディレクトリの作成・コピー・名前変更、コンピュータの時刻や環境変数およびパスの設定参照などができるほか、外部コマンドやアプリケーションなどの実行形式のファイルの起動が行えた。またVer.2以降ではUNIXを意識したリダイレクトやパイプなども利用できたが、MS-DOS上のパイプやリダイレクトはいずれもテンポラリファイルを介した擬似的な実装に留まっていた。
[編集] 実行ファイル
MS-DOSにおける実行ファイルの形式には、現在のUNIX系環境で言うシェルスクリプトに類似した、コマンドのバッチ処理を記述する.BATファイルと、CPUが直接実行するバイナリファイルに大別することができる。 このうちバイナリファイルには、固定したセグメントを使う場合(バイナリ読み込み時に設定されるコード・データ・スタックの各セグメントが同一アドレスに設定され、プログラム内部でセグメントを操作しない場合は単一の最大64KBのメモリ空間を操作する。CP/M80用に書かれた8080用のアセンブリ言語のソースコードを8086へコンバートした場合を想定したメモリモデルであるが、.COM形式のバイナリであってもプログラム側で適切にセグメントを操作することで64KB以上の空間へのアクセスは可能である)の拡張子.COM形式、各セグメントが異なるアドレスに設定される場合の.EXE形式、さらにデバイスドライバとして.SYS形式が存在するが、このうち.SYS形式のバイナリは、原則的に起動時に一度だけ実行されるCONFIG.SYSに記述する以外の方法では直接読み込むことができない。このため、NECのPC-9800シリーズ版の一部からADDDRV.EXEと登録を記述したファイルの組み合わせにより登録し、DELDRV.EXEで外せるようになった(キャラクタデバイスのみであり、CONFIG.SYSで一度登録したデバイスドライバは外せない。IBM PC用では何種類かサードパーティで同様のプログラムが作成されている)。
[編集] システムコール
システムコールは、通常、INT21hにより呼び出されるが、Intel 8080やZ80などの8ビットのコンピュータではメジャーな存在だったCP/Mとの互換性、特に8080用にアセンブリ言語で書かれたソースコードを8086にコンバートして用いる場合を想定し、call 5でも利用可能としてCP/M 80からの移行を促した。
[編集] メモリ管理
MS-DOSにおいて、DOS自身のカーネルを含む、プログラムの実行に確保できるメモリ空間(ユーザーメモリ、コンベンショナル・メモリ)は、8086のアドレス空間の最大1MBである。ほとんどのコンピュータでは、この空間にBIOS ROMやメモリマップドI/O、VRAMなどの空間も存在するため、バンク切替えや様々なメモリ拡張手段などを用いずに一時にアクセス可能なメモリ空間は、最大でも640KB(IBM PC互換機およびPC-9800シリーズ等)から768KB程度(PC-H98やFMRシリーズ・FM TOWNSなど)であった。
- ※ ただし、RAMディスクドライブやディスクキャッシュなどは、バンクメモリやEMS、プロテクトメモリ(80286/386以降)等のコンベンショナルメモリ以外の領域・手段の利用が一般化していたため、「貴重な」コンベンショナルメモリがこれらの領域によって圧迫されることは無かった。
日本語入力用のFEPなどの常駐型のデバイスドライバを使用すると一度に使用できるユーザーメモリはさらに減少するため、ユーザーはEMSやXMS、HMAやUMBなどの拡張メモリの管理機能を利用して、辞書や常駐部やMS-DOSシステムの一部をそれらへ配置し、コンベンショナルメモリの圧迫を少しでも避けることが重視されるようになった。
これらのメモリへの配分設定はCONFIG.SYSやAUTOEXEC.BATを記述することで行い、事実上ユーザーに一任されていた。
バージョン3までは、これらの設定を行うためにはサードパーティー製のメモリドライバ等を使用する必要があったが、バージョン5では標準機能としてOSに組み込み、メモリドライバやデバイスドライバも付属するようになった。またこれらの環境設定を半自動的に行う設定アプリケーションも添付された。
メモリドライバや各種デバイスドライバには組み込み用のバッチやスクリプト、設定アプリケーション等が整備され、「とりあえず動く」という状態を作るだけであればエンドユーザーがこれらを直接操作する必要はほぼ無かったが、千差万別なユーザーの環境にこれらが対応することもまた困難であり、ひとたびイレギュラーが発生した場合、それらのお仕着せの環境に頼り切ったユーザーには事態収集の敷居が高かったのも事実である。 また「とりあえず」に飽き足らず、無駄を省き最適な設定をするためには、知見と試行錯誤が要求されるある種の職人芸的な資質が要求されたため、これらの事情が「MS-DOSの環境設定は非人間的で困難なものであった」とする後世の評価を招く原因ともなった。
[編集] Windows 9x
Windows 9x系のOSは、OSとしてはWindowsという形で提供されているが、実際には、MS-DOSの上でグラフィカルユーザインターフェース (GUI) の処理を行なう形で動いていた(ただし、Windowsが使用するMS-DOSシステムコールはごく一部に限られる)。こちらではVFATなどによりファイル管理方法が拡張されている。なおWindows本体を起動していない場合は、VFAT上のロングファイルネームでも、8文字+拡張子3文字のショートファイルネーム形式のファイル名で表示された。
[編集] バージョン
[編集] バージョン1
CP/M程度の機能しか持たない、基本的なディスクオペレーティングシステム。ファイルシステムは、後のバージョンで実装された階層構造を持っておらず、ディレクトリが利用できない。CP/Mとの大きな違いは、汎用化の為に入出力デバイスの機種依存が無くなっている点であった。その為、ハードウェアにROMとして内蔵されたBasic Input/Output System (BIOS) を通して入出力を行うようになっていた。なお、この仕組みは、互換BIOSを利用したPC互換機を生み出す要因ともなった。
このバージョンが使われていた頃は、8086またはその互換プロセッサ(8088等)を利用したパーソナルコンピュータ市場もそれほど大きくなかった為、出荷本数の大半はIBM PCにバンドルされた分だった。
- バージョン1.0 - 1981年8月
- IBM PC(初代)出荷と同時にリリース。64KBのメモリ空間のうち約12KB(そのうちシェルが5KB)を占有した。また、160KBの5.25インチフロッピーディスク(1D)をサポートしていた。
- バージョン1.1 - 1982年5月
- 360KB 5.25インチフロッピーディスク (2D) サポートの他、一部のバグフィクス。
- バージョン1.25 - 1982年5月
- IBM PC互換機及び8086プロセッサを利用したパーソナルコンピュータ向けに、自社ブランド (MS-DOS) での販売を開始した。日本ではPC-8801用16ビットCPUボードに付属して販売された他、PC-9800シリーズ用に販売された。
[編集] バージョン2
PC/XTの仕様に合わせ、ハードディスクドライブ (HDD) や360KB 5.25インチフロッピーディスク (2D) をサポートしている。階層構造ディレクトリ、config.sysによるデバイスドライバの追加機能、UNIXライクなパイプ等の機能が、追加された。アセンブラのMASMが付属していた。
- バージョン2.0- 1983年3月
- PC/XT出荷と同時にリリースされた。
- バージョン2.01
- バージョン2.1 - 1983年10月
- IBM PCjr向け。
- バージョン2.11 - 1984年3月
- 他言語市場を意識し、文字セットや日付表示のローカライズをサポート。日本市場においては、独自に拡張された日本語バージョンが、x86プロセッサを搭載したパーソナルコンピュータ向けに広く利用されていた。当時マイクロソフトの代理店であったアスキーの市場戦略の関係で、市販ソフトウェアにサブセット版のバンドル(添付)が許されていた。
- バージョン2.25 - 1985年10月
- 東アジア市場向けに2バイト言語に対応した。
[編集] バージョン3
PC/AT用として発売。主としてネットワーク対応と大容量HDD対応の為の16ビットFATが追加された。もっとも、管理できるセクタ数が65535個であったため、32MB以上のパーティションを切ることは出来なかった。Intel 80286プロセッサを搭載したPC/AT向けではあるが、互換性確保の為、80286プロテクトモードを利用した機能は、採用されなかった。そのため、各種ユーティリティにより拡張する利用者も多かった。ベンダーによる独自拡張などの影響で、バージョン番号の体系が大きく乱れている。
- バージョン3.0 - 1984年8月
- PC/ATの発売と同時にリリースされた。1.2MB 5.25インチフロッピーディスク (2HD) 及び32MBまでのHDDをサポート。HDDの論理ボリュームは1つのみ。
- バージョン3.1 - 1984年11月
- ネットワーク機能として、トークンリングに対応した。但し、性能が低く、専らノベルのNetWareなどのネットワーク・オペレーティング・システム (NOS) が一般的に用いられた。
- 日本ではNEC PC-9800シリーズ、富士通 FMRシリーズ及びFM TOWNS(尚FMR・TOWNSシリーズ用の3.1の後期バージョンでは米国版の3.2/3.3の機能の一部が取り入れられていた)、シャープ MZシリーズなどに独自拡張したバージョンが用いられた。
- NECのPC-98LT、Handy98、富士通のFM TOWNSにはROMで内蔵されていた。
- バージョン3.10
- バージョン3.2 - 1986年1月
- 720KB 3.5インチフロッピーディスク (2DD) をサポート。日本ではAXなどに採用された。
- バージョン3.3(IBM PS/2版)- 1987年4月
- 1.44MB 3.5インチディスク (2HD) をサポート。多言語対応の為、コードページが採用された。
- バージョン3.3(OEM版) - 1987年8月
- HDDにおいて複数の論理ドライブを扱えるようになった。
- バージョン3.3(NEC版)
- 3.21を元に独自拡張している。
- バージョン3.3A(NEC版)
- 3.3を元に独自拡張している。
- バージョン3.3B(NEC版)
- バージョン3.3C(NEC版)
- バージョン3.3D(NEC版)
- バージョン5.0(NEC版)と同時発売。見かけ上のセクタサイズを1KB若しくは2KBとすることで最大128Mのパーティションを管理することが出来た。
[編集] バージョン4
IBM主導で開発されたバージョン。IFSやラージバッファ等の追加が行われ、OS/2色が濃くなっていた。管理できるセクタ数が増やされ、最大512MBのパーティションが作成できるようになっていた(但し特定のユーティリティを起動することが条件)。HDDも、理論上は最大2GBの領域を扱うことができるようになった(実際にはBIOSの制限があった)。EMSにより、1MB以降のメモリ領域を扱えるようになった。
グラフィカルシェル「DOSシェル」が利用できるようになった。これは、マウスオペレーションやグラフィカルなメニューによる対話的な操作が行えるもので、キャラクタベースによる簡易なものと、グラフィック画面とテキスト画面を組み合わせたもの(表示が美しく、ポインタの動作もスムーズになる)とを切り替えることが出来た。また、アプリケーションを起動したまま他のアプリケーションを同時実行させることができる為、タスクスイッチャとしても用いられた。
本バージョンは、複雑化に伴い非常に多くのバグが存在し、またOS自体が消費するメモリが大きすぎたため、メーカーによってDOS 3.30を拡張したDOS 3.31を採用するなどして、4.0を採用しないところが有った。コンベンショナルメモリの空き容量が日本語処理アプリケーションの稼動に直接影響する日本では、大手メーカーであるNEC、富士通などが3.3系の拡張版のみを販売していたため、ユーザー数はそれほど多くはなかった。EPSONからは、PC-9801互換機用としてリリースされていた。
MS-DOS 3.21からの後継として、バックグラウンドマルチタスクを可能にしたMS-DOS 4.0が存在していたが、これとは全くの別物である。
- MS-DOS 4.0(マイクロソフト版)- 1988年6月
- PC-DOS 4.0(IBM版) - 1988年7月
- MS-DOS 4.01(マイクロソフト版)- 1988年12月
- バグフィクス。
- IBM-DOS J4.0/V - 1990年
- 所謂「DOS/V」の最初のバージョン。末尾の「V」はVGAを意味する。漢字ROMがなくても日本語表示が出来るように拡張されたもの。日本語表示にハードウェアによる拡張が必要がない為、余分な製造コストが必要なく、販売価格も下げられる。これにより、日本国外のメーカーが日本市場にて販売を行うことが容易になった。
[編集] バージョン5
再びマイクロソフト主導で開発されたバージョンで、バージョン4で追加された機能の殆どが削除された。メモリ消費は少ないが大容量ドライブが扱えないバージョン3、その逆で大容量ドライブが使えるがメモリ消費が大きいバージョン4というジレンマを抱えていたが、限りあるメモリ領域の消費を抑える機能を追加することで、今までの問題を解決するに至った。このバージョンによりDOSはほぼ完成に至る。
XMSにより、DOS本体の一部をHMAに、デバイスドライバやユーティリティの一部をUMBに待避させることが可能で、コンベンショナルメモリを大きく取れるようになった。
テキストエディタは、過去のバージョンに標準添付されていたラインエディタ「EDLIN」に加え、スクリーンエディタが添付された(PC/AT互換機用は「EDIT」だったが、NEC版は「SEDIT」(ちなみに、こちらはメガソフト社のMIFESのサブセット版)、富士通版(FMR、FM TOWNS用)は「EDIAS」と、それぞれ各社ばらばらだった)。開発環境として、独自に拡張された構造化BASICコンパイラQuickBASICが標準添付されていた。
- 日本では、PC/AT互換機をベースに独自の拡張を行っていたAX陣営や東芝(J-3100)も、この頃よりDOS/Vへのシフトを進めるようになった。また、世界のデファクトスタンダードであるPC/AT互換機のハードウェアでそのまま日本語版OSを使えるようになった為、日本国外のメーカーが積極的に日本市場へ参入し始め、NECの独壇場であった日本市場は大きく変貌することとなった。
- MS-DOS 5.0 - 1991年6月
- 他マイナーバージョンアップやローカライズ版多数
[編集] バージョン6
MS-DOS単体としての最終版。ディスク最適化やディスク圧縮機能(後述)、コンピュータウイルス検出・除去など、拡張機能の充実が主。
デジタル・リサーチからMS-DOS互換のDR-DOS 6.0が発売された。大きな特徴は補助ユーティリティの大幅な増強である。その為、IBMおよびマイクロソフトでも、基本仕様はほとんど変えずに補助ユーティリティを追加する事でバージョン6を発売することになった。IBMは6.1、それに続くマイクロソフトは6.2と、先に出た競合相手よりバージョン番号はそれぞれ0.1だけ大きい。
起動時に特定のキーを押すとCONFIG.SYSなどをバイパスする機能があった。
DOSシェルは廃止された(別途サプリメンタルディスクを入手する必要があった。NEC版には従来どおり付属)。テキストエディタも共通のEDITとなった(NEC版のみ従来どおりSEDITが付属)。
- MS-DOS 6.0 - 1993年3月
- PC-DOS 6.1
- IBMの独自ビルド。初期のバージョンにはディスク圧縮ユーティリティは添付されておらず、後のPC DOS 6.1 with Compressionで添付された。Stac Electronics社の「Stacker」が採用されている。
- MS-DOS 6.2 - 1993年11月
- ディスク圧縮ユーティリティ「DoubleSpace」のバグフィクス等。「DoubleSpace」は、ディスク容量を圧縮し、圧縮されたまま読み書きを可能にするもの。このユーティリティに用いられている技術の一部がStac Electronics社の特許を侵害しているものとして、訴訟を起こされた。 MS-DOS 6.0のユーザはオンラインの無償アップデートパッケージを入手することでMS-DOS 6.2にアップグレードできた。
- MS-DOS 6.21 - 1994年2月
- マイクロソフトによるStac Electronics社の特許侵害が一部認められた為、「DoubleSpace」を除去したもの。
- PC-DOS 6.3 - 1994年4月
- IBMの独自ビルド。MS-DOS 6.2同様、オンラインの無償アップデートパッケージを入手してPC DOS 6.1から6.3にアップグレードできた
- MS-DOS 6.22 - 1994年6月
- Stac Electronics社の特許を侵害しない形で作成されたものが「DriveSpace」として改めて搭載された(但し、日本語版には関係ない)。なお、DoubleSpaceとDriveSpaceの圧縮機能には互換性がなく、互いに圧縮されたパーティションにアクセスすることができない。
[編集] バージョン7(マイクロソフト版)
Windows 95とWindows 98に搭載されているバージョン。従来のMSDOS.SYSは、IO.SYSにその機能を統合されて設定ファイルとなり、IO.SYSが起動する標準シェルがCOMMAND.COMではなくwin.comであるなど、MS-DOSを極力見せない工夫がされていた。しかし、Windows起動中にテキストモードのカーソルが見える。Windows95のOSR2以降では、FAT32にも対応しているバージョン7.1である。
[編集] バージョン8(マイクロソフト版)
Windows Meに搭載されているバージョン。IO.SYSにHIMEM.SYSおよびEMM386.EXEの機能をも統合した最終版であり、もはやWindowsのローダでしかなくなった。Windows XPで起動ディスクを作成すると、このMS-DOSが書き込まれる。
[編集] バージョン7(IBM版)
1995年リリース。
開発環境として「REXX」を標準添付。
バージョン7.0をベースに、ユーロ記号の表示や西暦2000年問題に対応したものが「PC DOS 2000」として市販されている。これがPC-DOS/MS-DOSの事実上の最終バージョンとなる(互換OSは除く)。
[編集] MS-DOSとの互換性を持つOS
[編集] MS-DOSとバイナリ互換性を持ち、フリーではないOS
またNEC PC-9800シリーズ全盛期には、ゲームソフトの組み込み用として、下位互換(INT21系のサブセットのみ互換)の「MEG-DOS」などがあった。アリスソフトの「ALICE-DOS」は、もともとゲームソフト本体はMS-DOSをインストールしたハードディスクドライブ上で動かすことを前提とし、飽く迄もフロッピー単体でも起動するようサポート用に作られたものであったため、バッチファイルを動かす機能も有していた。
[編集] MS-DOSとバイナリ互換性を持ち、フリーなOS
- FreeDOS
- PTS-DOS(試用版)
- RxDOS
[編集] MS-DOSの影響を受けつつもバイナリ互換性の無いOS
- X68000、ファイルシステムにFAT12/16のサブセットを採用、COMMAND.COMに酷似したコマンドインタプリタを搭載。システムコールのファンクションにもINT21Hを真似た設計が見られる等、影響を(主に開発工期の短縮などの側面から)強く受け模倣していることは明らかではあるが、その他は全く別個の実装であり、CPU自体にも互換性は無い。
- CDOS
- PC-8800シリーズ/X1、ファイルシステムのみFAT12に対応した、CP/M互換OS。Z80を前提としたCP/Mのバリアント(変種)であり、MS-DOS用の移植ではない。当然MS-DOS用のバイナリも動作しない。
- MSX、FAT12のサブセットに対応し、MS-DOSのCOMMAND.COMに酷似したコマンドインタプリタを搭載した、CP/M互換OS。CDOSと同様にCP/Mのバリアントであり、MS-DOS用のバイナリは動作しない。
[編集] 関連項目
- EMS:8086のメモリ空間をハード的に(または80386の仮想86モードで)バンク切り替えしてメモリを増設するための規格。利用するためにはデバイスドライバのEMM.SYSやEMM386.SYS、または市販のMELWARE、VMM386などのメモリマネージャーの登録が必要だった。
- XMS:HIMEM.SYSなどのデバイスドライバの登録が必要。
- HMA:80286以降のCPUの8086モードで、8086の持つ1MBのメモリ空間の直後に存在する約64KBの領域(厳密には64Kマイナス16バイト、65520バイト)を追加して確保するための規格。 セグメントアドレスを0xFFFFに設定した場合、物理アドレス0x0FFFF0から始まる最大64KBの空間 (0x0FFFF0~0x10FFEF) にアクセス「できてしまう」現象を利用したもの。DOS5以上で正式サポート(CONFIG.SYSでDOS=HIGHで指定)。
- EMB:80286以上のメモリ空間の割り当て、解放およびデータをブロック転送するための規格
- UMB:主に仮想86モードで、640KB以上のアドレスにある空間をプログラム用に追加して確保するための規格。DOS5以上で正式サポート(CONFIG.SYSでDOS=UMBで指定)。
- VCPI:80386の仮想86モードを使用してソフトウェア的に実現したEMSマネージャーとプロテクトモードアプリケーション(主としてDOSエクステンダ)を共存させるための規格。
- DPMI:80286以上のCPUのネイティブモードでプログラムを動作させるための規格で、VCPIの代替ともなった。
- 2000年問題
- DOSエクステンダ