一党優位政党制
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一党優位政党制(いっとうゆういせいとうせい、一党優位制)は、競争的な選挙の下で、一つの主要政党が投票者の多数に支持され続けることによって、政権を握り続ける政党制(政党システム)である。イタリアの政治学者ジョヴァンニ・サルトーリが1970年代に提唱した概念である。
[編集] 類型化の要点
一党優位政党制は、従来一党制という名で一括されていたものの中から、公正な自由選挙が実施されている政党制を抜き出したものである。一党が他党を引き離す「優位」を持っている政党制は、自由主義である場合と反自由主義である場合があるが、一党優位政党制は前者を指す。
サルトーリは、一党優位政党制を、支配政党(制)の概念の曖昧さに対する批判として提出した。サルトーリは、第一党と第二党の議席占有率の差が大きいことと、第一党が3期か4期連続して政権についていることを要求した。
サルトーリはその例として、インド(国民会議派が優位だったジャワハルラール・ネルー、インディラ・ガンジーの時代)、日本(55年体制)などを挙げた。サルトーリは、一党優位政党制は分極的多党制に近いものとみなしており、その共通特徴は認められるので、このグループを一党制やヘゲモニー政党制から分けたのである。そして共通特徴から見て一党優位政党制における優位政党の支配が崩れれば、分極的多党制へ変化すると予測される。従って1993年以降の日本は、分極的多党制であると言える(ただし、いまだに日本は自由民主党の「安定的」な政権が持続しているため分極的多党制であるとも言い切れない面もある)。
一党優位政党制は野党が国民から疑問視されることにより成立する。弊害として国民が惰性で与党に投票し続けることにより投票率が低下する傾向が見られる。投票率が低いことは国民がある程度政治に満足している結果でもあり、それそのものが悪いわけではないが、与党系圧力団体の組織票の影響力が増大するため、政治が圧力団体により左右され易くなると言える。
また、与党のみが政治における現実の全てを受け入れることによりイデオロギー的立場が曖昧になったり、特定の業界と癒着するなどの問題を引き起こす。与党が教義としているイデオロギーが揺らぐことにより安易なナショナリズムに訴えることも多い。日本において自民党系圧力団体が自民党を支持する理由として、「自分達の業界の利益を代表してくれる」「野党を支持するよりも政策に反映されるスピードが速い」等があげられる。
自民党の小泉純一郎は「自民党と協力しながらどういう形で違いを出すか。また、自民党と同じように、政権を取っても不安がないような政策を打ち出せるか」を民主党に要求している。(「小泉内閣総理大臣記者会見(第三次小泉内閣発足後)」)
[編集] 用語
サルトーリが「一党優位」に用いた英語は predominant で、それまで通用していた dominant より弱い語として起用された。dominant は日本語では支配・優位いずれにも訳すことができ、実際両方に訳されていたので、predominant に「一党優位」の語があてられた。
サルトーリの説は後の政党研究を強く規定したが、なお実際に適用しにくい部分が残っていた。後の研究者はサルトーリの概念を念頭に、これを修正してしばしば呼び名を違えた。支配政党制 (dominant-party system)、一党支配体制(one-party dominant regime)、そしてもちろん一党優位政党制 (predominant-party system) が、ほぼ同じものをさす用語として使われている。
[編集] 参考文献
- ジョヴァンニ・サルトーリ(岡沢憲芙・川野秀之訳)『現代政党学』(早稲田大学出版部、1980年、1992年、2000年(普及版))ISBN 4-657-91035-3、ISBN 4-657-00829-3