一般教育と専門教育
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一般教育(いっぱんきょういく、英 general education)と専門教育(せんもんきょういく、英 specialized education)
一般教育とは、どの分野にも依存しない普遍性を理念とする教育のことである。一般教育は、人文科学、社会科学、自然科学などの基礎科学を基本に総合科学、応用科学、そのほか主題的なテーマを扱う。一般教育は、幅広く物事を身につけ、それを深く人生に生かそうとする教養(きょうよう)の概念にも通じ、人間のための基礎的、基本的な教育である。ヨーロッパで伝統的に行われてきた一般教育に、リベラル・アーツ (Liberal Arts) の概念がある。また、小学校などの初等教育、中学校・高等学校・中等教育学校などの中等教育においては、通例、一般教育のことを普通教育(ふつうきょういく)と呼ぶことが多い。
専門教育とは、特定の分野のために深く深化した教育を指す。日本における専門教育は、高等学校専門学科などの後期中等教育、大学などの高等教育から開始される。
後期中等教育での専門教育は、特定の職業人を養成したり、職業人の能力を高める教育である職業教育との関係が深い。知識や学問を実用的な職能に役立てようとする教育であり、工業、農業や商業といった伝統的な学科が存在する。現在では音楽、服飾といった分野も目立つ。しかし理数、外国語、国際などの学科は、実用的な職能重視ではなく、むしろ普通教育の特定分野を拡張して、大学進学などに生かすカリキュラムづくりを目指しているといえる。
高等教育での専門教育は多岐にわたる。学者・研究者・技術者となるためのもの、そして法曹や官僚、経営者や評論家などとしての知的生産を行うための教育もここに含まれる。また、伝統的に分野毎の専門性を重んじてきたため、教える者と学ぶ者の間に徒弟的な強い関係が築かれることもある。
[編集] 一般教育と専門教育の比較
一般教育と専門教育、普通教育と専門教育というのは、日常的にしばしば比較され、時にはその優位を競わされることもある。しかし、元々思想も性質も違うものであり、根底と役割をたどれば比べることは不可能である。むしろ、双方をバランスよく使い分けることが必要であろう。そもそも高等教育においては、どこまでを専門教育の範疇とするか、どこまでを一般教育の範疇とするかということを、単に学問分野上の分類だけで厳密に定めることは究極的には不可能だろう。大学における教育研究は、常にそのようなジレンマを抱えているのである。
しかし、日本の多くの大学においては、教養部主導の一般教育を受けたのち学部の根幹をなす専門教育を受けるという習慣があったため、一般教育を低く、専門教育を高く見る傾向があった。この特徴は、「パンキョウ」という言葉にもあるように、本質的な意味での教養が軽視されたことに反映している。 また、大学等への進学率が急速に上昇するなかで、普通高校への人気が高まって進学が難しくなる一方、職業高校への進学が人気が無いという現状はがある。若い段階から技術者を目指す者にとって進路、すなわち、教育の順番を制限しているといえる。専門教育の後で、一般教育を受ける道はきびしい。
このような事態を文部科学省は積極的に改善しようとしており、一時は教養部を一律に制度化し多くの大学で導入されたこともあったが、国民の先入観などもありなかなか変化していない。