二式水上戦闘機
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
二式水上戦闘機(にしきすいじょうせんとうき)[A6M2-N]とは、旧日本軍が第二次大戦中に使用した戦闘機。略して二式水戦とも呼ばれる。連合国コードネームは、「Rufe」。
日華事変での水上観測機の意外な活躍から水上戦闘機の開発が決定し、本格的な15試水上戦闘機、後の「強風」が出来るまでのつなぎとの機体が作られることとなった。そこで、当時高性能が話題となっていた零式艦上戦闘機11型をベースに、微妙に伸びた垂直尾翼や空気抵抗に優れた形状をしたフロートをつけた水上戦闘機。フロートの空気抵抗や重量が零戦に比べると200キロほど増えたことで上昇力、速度が落ち、航続距離も短くなったが、零式艦上戦闘機の旋回性能などを受け継ぎ、水上戦闘機としては申し分ない性能を発揮した。欧米諸国もワイルドキャット水上戦闘機やスピットファイア水上戦闘機、メッサーシュミット水上戦闘機を試作したが、重い双フロート式であり成功していない。いかに大日本帝国の水上機への取り組みが本格的であったかが分かるが、これは飛行場建設能力の不足を補う意味もあった。
零戦を開発したのは三菱重工業だが、本機の開発・製造は中島飛行機で行われたが、驚異的に性能が高いとはいえそれは水上機での話であり、米軍単発戦闘機にはかなわないために、おもに爆撃機、偵察機と戦った。もちろん、米戦闘機と矛を交える場合もあり、アッツ島や南方戦線などでグラマン戦闘機と格闘戦をし撃墜した記録もある。しかし米軍機の性能上昇、戦局悪化などで1943年(昭和18年)3月に生産を中止した。総生産機数は327機と少ないようだが、ほとんどの国ではこの手の機種は量産すらされておらず、水上戦闘機としては世界最多である。
飛行場建設が困難な南方の諸島に配備され活躍した本機ではあるが、熱帯の自然現象で落ちた機が多々あったという。また、アリューシャン列島に配備された機体も風雨と波浪により係留中に失われたものもあった。残念なことに、特攻に使われなかった物も戦後処分され現存する機はない。なお、戦後インドシナに再進出したフランス軍が、残されていた1機を捕獲して国籍マークを書き直し使用していた。
[編集] スペック
- 乗員: パイロット 1 名
- 開発記号:A6M2-N
- 全長:10.24m
- 全幅:12.50 m
- 全高:4.305 m
- 主翼面積: 22.438㎡
- プロペラ: H.S.定.3翅
- 自重: 1922 kg
- 全備重量: 2460 kg
- 最大離陸重量: kg
- 動力: 栄12型空冷複星14エンジン
- 出力: 940HP
- 最大速度: 437 km/h
- 巡航速度: 400 km/h
- 航続距離:1150 km
- 実用上昇限度:10500 m
- 上昇率: 5000/6'49"
[編集] 塗装
- 採用初期は零戦と同じ塗色(機体全面明灰白色)であったが、南方への戦線の拡大に伴って南方のジャングルの緑に溶け込むために機体上面が暗緑色、機体下面が明灰白色にし、主翼前縁に敵味方識別のためにオレンジイエロー色の帯を塗装、機体上面と機体側面の日の丸に白い縁をつけるよう海軍全体に通達が回った。しかし通達以前に応急的に機体上面を暗緑色にした機体もあったが、この機体には敵味方識別のためのオレンジイエローの帯がなかった。
- アリューシャン列島で活躍していた二式水戦に関しては、軍制式なものではない機体上面が藤色、機体下面が濃いグレーの機体があったとする説もある。
[編集] 関連項目
カテゴリ: 軍事航空スタブ | 日本の戦闘機 | 水上機・飛行艇 | 大日本帝国海軍航空機