児童労働
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
児童労働(じどうろうどう)とは、15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの年少者が、労働することを指す。日本の労働基準法では、15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了する以降からを適法な労働者とし、それ未満13歳以上の者については労働基準監督署の許可をもとに新聞配達などの年少者にとって有害でない労働を認めているが、13歳に満たない者の就労については、児童の福祉を侵害するとして、映画の製作、演劇の事業の労働者(子役など)を除き、これを認めていない。なお、労働基準法等の法律用語では「児童労働」の語は使用されていない。
国際的には児童労働を何歳以下の労働とするのかは明確にされていない。国際労働機関(ILO)の「就業の最低年齢に関する条約(第138号)」では、労働を禁止する最低年齢を「義務教育年齢及び、いかなる場合にも、15歳を下回らないもの」とし、「健康、安全又は道徳を損なう恐れのある業務につかせることができる最低年齢は、18歳を下回らないもの」としている。国連の「子ども(児童)の権利条約」や「奴隷制度、奴隷取引並びに奴隷類似の制度及び慣行の廃止に関する補足条約」では18歳未満を対象としている。これらから、従来は、狭く捉えても15歳未満を、広く捉えれば18歳未満が児童とされている。このため、広く捉えた場合には日本の高校生のアルバイトも国際的には児童労働と捉えられ、問題となる場合がある。 ILOの統計では、5~14歳の労働の統計があり、それでは5~14歳の24.7%にあたる2億5千万人が働いているとされている。これに統計のない5歳未満、5~14歳でも家事労働で働く者を含めるとその数倍に達すると推測されている。
働く形態によって子供の活動が児童労働と見なされたり見なされなかったりする。例えば、見習の状況は訓練とされ児童労働と見なされない場合がある。また、学校に通いながら働いている場合は、統計上、児童労働者に入れられない場合が多い。しかしながら、見習や学校に通いながら働いている者も児童労働に含めて考えるべきものである。また、家事労働者や児童買春や少年兵士についてもILOでは児童労働の形態として認めている。
よく知られている児童労働の例としては、ネパールカトマンドゥ地域、インドのウッタル・プラデシュ州、パキスタンでのカーペット産業による労働、ブラジルのサトウキビ畑など農場での労働、フィリピンのマニラのスモーキーマウンテンにおけるゴミあさり、タイのバンコクにおける児童買春などがあげられる。
1999年のILOの第182号条約最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約では、18歳未満の児童による最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃を確保するための即時の効果的な措置を求めている。
子供の労働を、例えば、家庭でのお手伝いやアルバイトなど安全を保障されているものは子供たちの成長のために有益なものであるとして児童労働のそとにおこうとする向きもあるが、現在では保護者が子供を食い物にする例も少なくはなく、児童労働として認識することが重要とされている。
児童労働の主要な要因は貧困であるとされることが多いが、最近の研究では、絶対的な経済的貧困状態よりも、その地域の経済格差による貧困感の方が児童労働の主要な要因であるとされるものもある。 日本においても15歳に満たない子供の労働は極めてん少ないものの存在するが、日本においても絶対的な貧困状態で子供が労働させられる例は見当たらない。相対的な貧困感が児童労働を発生させるという説明と符合するところである。