国際労働機関
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国際労働機関(こくさいろうどうきかん、英:International Labor Organization、略称ILO)は、世界の労働者の労働条件と生活水準の改善を目的とする国連最初の専門機関。本部はジュネーヴ。
加盟国は、179カ国(2006年8月現在)。1969年にノーベル平和賞を受賞した。機構の運営が東側に偏っているとして、米国が1977年に脱退した。しかし、1980年に復帰している。
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[編集] 設立
第一次世界大戦後、国際連盟と同時に、1919年に設立された。当時は、産業革命と社会主義革命が進む中で、国際的に協調して労働者の権利を保護するべきだという考えで作られた。 第二次世界大戦後は、1946年に国際連合と協定を結び、専門機関として国連の目的達成の一翼を担うようになった。
[編集] 総会と理事会
ILOでは、加盟国それぞれが、政府、労働者、使用者の代表を出し、独立して発言や投票を行うことができる。総会と56名の理事で構成された理事会は、各加盟国の政府、労働者、使用者が2・1・1の割合の三者構成で代表を送っている。
[編集] 国際労働条約
ILOには、185の条約と195の勧告がある(2005年8月現在)。
設立以来、具体的な国際労働基準の制定を進めてきており、近年では、男女の雇用や児童労働の撲滅に力を注いでいる。ILO総会で採択される条約を国際労働条約という。それを批准した国だけしか拘束しない。しかし、採択時に反対した加盟国も、条約を自国で批准権限を持つ機関(日本では国会)に提出しなければならない。
日本は、約47の条約を批准しているが、これは全条約のうち約4分の1、ヨーロッパ諸国のおよそ半分である。 近年日本が批准した条約では、2005年8月に石綿条約(162号)がある。
開発途上国への技術研修などの役割も果たしており、そのために国際研修センター(トリノに設置)を置いている。
- ILO87号条約 結社の自由、団結権の擁護に関する条約、日本は批准している。
[編集] 日本
日本は設立時から参加しており国際会議には政府・使用者、労働者(松岡駒吉他)のそれぞれ代表を送っている。 1938年に脱退し、サンフランシスコ講和条約調印の1951年にILOへの復帰を果たした。
1922年以来、脱退・再加盟を経て1954年から常任理事国を務めている。1975年からは政府、労働者、使用者の三者すべてが常任理事となっており、理事会における議席を占めているものの国内ではILO勧告を守らないなどといった例も数多く見られる。これに対し拠出金や人的協力においては非常に協力的でありILO側からも高く評価されている。
[編集] 日本の主な未批准条約
1号条約(一日8時間・週48時間制)、47号(週40時間制)、132号(年次有給休暇)、140号(有給教育休暇)などの労働時間・休暇関係の条約。
1998年のILO新宣言(「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」)で「最優先条約」とされた8条約のうち、105号(強制労働の廃止)、111号(雇用及び職業における差別待遇)の二条約。
その他、94号(公契約における労働条項)、148号(作業環境)、151号(公務労働者)、 155号(労働安全衛生)、158号(使用者の発意による雇用の終了)、171号(夜業)、173号(労働者債権の保護)、175号(パートタイム労働)、177号(在宅形態の労働)、183号(母性保護)など。
日本では特に、労働時間関連、雇用形態についての条約批准に消極的である傾向がうかがえる。 連合、全労連など、日本の労働団体はこれら未批准の条約の早期批准を求めている。
[編集] 関連項目
- ILO諸条約
[編集] 外部リンク
- 国際労働機関 ILO: International Labour Organization(英語。日本語へのリンクあり)
- ILO駐日事務所
- 日本ILO協会
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