北野元

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北野元（きたのもと、1941年 1月1日 - ）は、京都府京都市出身。元ホンダワークス所属の世界GPライダー、元レーシングドライバーで、かつて日産自動車追浜ワークスの三羽ガラスと呼ばれたうちのひとりである。

2006年4月現在、二輪用のタイヤを扱うタイヤショップウルフ・モトを経営するとともに、ホンダが創立50周年を期に栃木県茂木のレース場ツインリンクもてぎ内にオープンした博物館ホンダコレクションホールに動態保存をされている多くの2輪・4輪のレース用マシンを、イベント前などに合わせて調整を行うために走らせるドライバーも務める。愛称北さん、血液型O型。

[編集] 経歴

1959年4月の「第1回全日本モトクロス競技大会」でデビュー。オープンレースでいきなりの優勝を飾り、さらに同年8月の第2回全日本クラブマンレース（アマチュアが対象）に市販モデルのホンダベンリイスーパースポーツCB92（125cc）、市販レーサーであるドリームスーパースポーツCR71（250cc）を駆って出場し、両クラスで優勝。同レースと併催だった第3回浅間火山レース（ワークスチームが対象）125ccクラスにも招待され、市販マシンCB92でホンダのワークス勢を抑えての優勝を果たす（1レースで3勝）など一躍注目の的となる。これらをきっかけに翌1960年からホンダワークス入りを果たし、弱冠19歳で世界最高峰の難レースと言われたマン島TTに出場したのを始め、海外の世界GPレースに出場し活躍することになる。同じホンダの高橋国光や、ヤマハに乗る伊藤史朗と並び、若き天才ライダーと呼ばれた。

1964年5月、鈴鹿サーキットで行われた第2回日本グランプリにホンダもS600で出場することになり、2輪の契約ライダーだった北野もステアリングを握ることになった。このレースで彼は、予選前日の150R（現在の130R）で大クラッシュを演じたにもかかわらず、同じチームの外国人ドライバーR・バックナム（ホンダF1のドライバー）に次ぐ2位でレースを終えている。

1965年からはホンダ2輪チームの先輩格にあたる田中健二郎に誘われる形で、同チームの高橋国光とともに日産の追浜ワークスに移籍。以降は4輪ドライバーとして活躍する。最初はフェアレディ1600を駆ってレースに出場していたが、ライバルとのポテンシャルの差からなかなか勝てずにいた。それでも1966年の「第3回日本グランプリ」ではフェアレディS（日産がフェアレディ1600をベースに直列6気筒DOHC2000ccを載せたマシンで、実戦参加はこの1戦だけだった）を駆って予選では2番手を約15秒放して堂々のポールポジションを獲得した。翌1967年の「第4回日本グランプリ」では、初めて乗ったミッドシップの本格的なプロトタイプニッサンR380AーII（この前年にプリンス自動車工業と合併しており、プリンスのマシンはそのまま日産のマシンとして継続された）に苦戦しながらも4位入賞するなど、彼の技術は確実に磨かれていった。

そして、1968年の「68日本グランプリ」においてニッサンR381で念願の総合優勝を獲得、名実ともに一流ドライバーの仲間入りを果たすこととなった。

その後1969年の「69日本グランプリ」でもニッサンR382で、同じチームの黒沢元治に次いで2位、さらに1970年6月の「富士300マイル」で優勝とプロトタイプでの活躍が続いたが、折からのオイルショックや排ガス規制の波によってプロトタイプでの活動はこの70年が最後になってしまった。その後ツーリングカー主体でレース活動を行い、フェアレディZ432（Z432デビュー戦となった1970年鈴鹿300kmレースでリタイヤに終わったものの、当時「レースの神様」と呼ばれた田中健次郎を絶賛させた）やフェアレディ240Z（1971年の全日本ドライバー選手権で土付かずの年間チャンピョンを獲得）に限らず、スカイライン2000GT-R（1972年9月3日の「富士インター200マイルレース」でのマツダサバンナRX-3を駆る従野孝司との死闘を制し52勝目の勝利をGT-Rにもたらした）、サニーエクセレント（1972年の日本グランプリでスタート直後の大事故で多くのサニー勢が消えた中、たった一台でトヨタ勢と戦った）、ブルーバード、チェリーなど多くのマシンで数多くの優勝、入賞をしている。

1973年中盤からは富士グランドチャンピオンレース（通称・富士GC）や全日本F2000（→後のF2）に進出、チーム体制やマシンのポテンシャルとの問題から苦戦を強いられることが多かった（両シリーズ合わせて最高位2位）が、毎回なくてはならないドライバーであった。

1978年の「78JAF富士グランプリ」での6位を最後に一度現役を退いたが、1987年の「全日本ツーリングカー選手権」（通称・グループA）にレイトンハウスからスカイラインRSターボを影山正彦と駆り、翌88年からは本格的に復帰し、星野一義（ニッサンワークス時代の後輩）主催のホシノ・レーシングから和田孝夫とスカイラインGTS-Rを駆って戦い、さらに1989年は星野とともに1年間戦った（西仙台ハイランド300kmレースでは自身１７年振りにスカＧで総合優勝を飾った）。

現在では、二輪タイヤショップウルフ・モトのオーナーとしてこれまでの経験から、そのバイクに合ったベストなタイヤ選択と安全に早く走る方法をお客さんに伝えている。また近年、ニッサンが年に一度開催する「NISMO FESTIBAL」に往年のマシン（2003年はスカイライン2000GT-Rレーシング仕様、2004年はレストアを終えたニッサンR382（ゼッケン21は黒沢元治だが）、フェアレディ240Z（当時テスト用?として使われていたマシン）、2005年はレストアし終えた、彼自身が「68日本グランプリ」で総合優勝したニッサンンR381（ゼッケン20））を走らせる姿が見られ、往年のファン達を喜ばせている。

[編集] 特徴

黒いジェット型ヘルメットと口ひげ、右側にちょっと首を傾げたようにしてマシンをドライブするのが彼の最大の特徴である。日本の4輪レースでフルフェイス型ヘルメットが初めて使用されたのは、1969年の日本グランプリにおける日産チームだったと言われる。元祖フルフェイスである米ベル社のヘルメットを、日産がワークスドライバーに支給したのだ。ほとんどのドライバーが喜んでフルフェイスを使用する中、北野は「重く違和感がある」とジェット型ヘルメットに固執し、結果として同レースでは２位入賞。その後フルフェイスが完全に主流になった '70年代中盤でも、ジェットを使用し続けていたのは印象深い点だ。(このようにジェットに固執したのは北野の他にも永松邦臣がいる。が、北野は７０年６月に行われた全日本富士３００マイルで、白地に黄色い横のストライプの入ったフルフェイスをかぶって、黒沢元治とともにニッサンＲ３８２をドライブし優勝しているし、７５年シーズンからは黒のフルフェイスをかぶって戦う姿が見られる。)

高橋国光などと並び天才肌と称されたが、比較的早めにトップカテゴリーから引退しているため、現役時を知らない若いレースファンにとってはやや地味なイメージになっている面もある。しかし当時を知る関係者や、近年のメモリアルイベントの現場で直に接した人々の間では、「あれだけの実績があるのに偉ぶらず親切で礼儀正しい人」と非常に人気が高い。師匠筋である田中健二郎も「北野は向こうっ気が強い面もあったが、仲間やライバルが事故でコースアウトしていたりすると、すぐにマシンを止め真っ先に救助に駆け付ける男でもある」と評している。

レースでは誰よりも激しい走りを見せ全盛期の星野一義をも驚かせた北野だが、オーナーであるタイヤショップを訪れる一般ライダーには「タイヤの馴らしが終わるまで絶対に無理するなよ、スピードは控えめにしろよ、他人にいい格好を見せようとしちゃ駄目だよ」などと、元世界GPライダーとは思えないほど安全第一の丁寧なアドバイスを送ることで知られている。

[編集] エピソード

星野一義は日産の頃からずっと彼にあこがれていた。
ホンダワークス～ニッサン追浜ワークスの間ずっと同じチームに所属していた高橋国光とは一度も口を利いたことが無く、初めて口を利いたのはグループAに復帰してからだったそうである。同格のドライバーだった現役時代は、お互いに意識し合っていて素直になれなかったのだという。現在では無二の親友らしい。
実は、彼は左手の人差し指が無いというハンディを持ってこれまでレース活動を行っていた。これは、ホンダワークス所属時にトレーニング中のアクシデントでその指を負傷してしまった。しかし負傷によって次のレースに影響が出てしまうので、切断という選択を取ったのである。しかしこのようなハンディを諸ともせずに数多くの優勝・入賞を遂げてきたことは、すさまじい精神力と努力の賜物という他ない。