声調
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声調(せいちょう)またはトーンとは、言語において音の高低のパターンを区別することをいう。どんなパターンがあるかが問題であり、音の高低の位置的な違いを問題にする高低アクセントとは異なる。このような言語を声調言語(トーン言語)という。
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[編集] 声調の種類
- 音節声調
- 単語声調 - スウェーデン語・ノルウェー語、日本語西南九州方言、朝鮮語晋州方言など単語全体のなかで音の高低の違いのパターンを区別するものをいう。高低アクセントのように単語内のどこで高さが変わるかは決まっていない。
[編集] 国際音声字母による声調の表記
国際音声記号(IPA)では次の2種類の方法で声調を表している(かっこ内はX-SAMPA)。段位声調は左側を、曲線声調は右側を使うことが多い。
平板
曲線
[編集] 中国語
拼音(ピンイン)表記の場合、母音の上に符号(声調符号)を書くことでその声調を示す。
また趙元任によって創始された5段階の声調値(Tone contour)によって表記することもなされる。 国際音声記号はこれに低「˩ 1」、半低「˨ 2」、中「˧ 3」、半高「˦ 4」、高「˥ 5」のように対応している。
[編集] 普通話の声調
普通話には以下のような4つの声調(四声)がある(なおIPAの声調符号は折れ線によって表記される1つの記号であるが、フォント環境によっては分割されて表示される)。
四声 | ピンイン | IPAと声調値 | 特徴 |
---|---|---|---|
第一声 (陰平) |
¯(ā, ō, ē, ī, ū, ǖ) | ˥ 55 [á, a˥] |
高→高の発音。少し高い声で歌を歌っているつもりで、高く平らに発音する。 |
第二声 (陽平) |
ˊ(á, ó, é, í, ú, ǘ) | ˧˥ 35 [á̆, a˧˥] |
中→高の発音。日本語では意外なことを言われて「はぁ?あんた何言ってんの?」という時の「はぁ?」の発音に近い。中くらいの音から一気に高い音に持っていく。 |
第三声 (上声) |
ˇ(ǎ, ǒ, ě, ǐ, ǔ, ǚ) | ˨˩˦ 214 [a˨˩˦] |
半低→低→半高の発音。日本語ではがっかりした様子で「あーあ」とつぶやく時の発音に近い。ただ、いつもの会話で第3声が出た時は、最後の「中」の音が省略されることが多い。 |
第四声(去声) | ˋ(à, ò, è, ì, ù, ǜ) | ˥˩ 51 [â, a˥˩] |
高→低の発音。日本語では大変な仕事を終えた時に「ふぅ、終わった…」という時の「ふぅ」の発音に近い。高い音から一気に低い音に持っていく。 |
第一声のみ段位声調で、のこりは曲線声調である。このように、両者を用いるものを複合声調という。普通話の場合は、「軽声」という前の発音の勢いで軽く添えるだけの発音もある。拼音では軽声には声調符号はつけず、台湾の注音符号は「・」と表記する。
なおこれは漢語拼音(ピンイン)における表記である。
[編集] 声調にまつわるルール
[編集] 声調が変化する場合
第三声が連続する場合に、最後の一つ以外は第二声に変化する。このとき声調符号は変化しないので注意が必要である。
例えば「こんにちは」を意味する「你好」は両方とも第三声なので、前の「你」が第二声に変化する。
[編集] 古代中国語
古代中国語の声調は平声・上声・去声・入声(略して平上去入)の四声である。発音は違いがあるが一般的に現代中国語(普通話)との対応関係はだいたい平声→第1声(陰平)、第2声(陽平)、上声→第3声、去声→第4声であり(例外もあり)、入声は語末に閉鎖音 [k][p][t] をもつ声調であるが、普通話では失われてそれぞれに分布している。
[編集] 声調言語と歌曲
中国語(主に普通話)の歌では、声調は無視される。中国南部の方言である広東語(例えば香港の歌)とベトナム語など、声調が比較的に多い言葉では声調に合わせて作曲されるか、作曲された音階に合わせて歌詞の語が選ばれる。声調に合わせないと、変な意味になるかもしれないから、作詞者はある程度の知識を持っていなければならない。