大学院重点化
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大学院重点化(だいがくいんじゅうてんか)とは、一般的には大学の教育研究組織を、従来の学部を基礎とした組織から、大学院を中心とした組織に変更することを言うが、国立大学の予算用語の意味をする場合もある。大学院講座化、大学院部局化とも呼ばれる。
[編集] 概要
1990年代以降に東京大学が先陣を切り、その後、旧帝国大学などが相次いで大学院重点化を行った。現在までに前記の一般的な意味での全学の大学院重点化を終えた国立大学は、旧7帝国大学と筑波大学、広島大学、一橋大学、東京工業大学、東京医科歯科大学、神戸大学の13大学である。また、岡山大学、新潟大学、千葉大学、熊本大学、長崎大学、金沢大学の旧六医科大学等においては全学的ではないが、一部の学部が後述の予算措置を伴う重点化がなされており、かかる予算措置の特例が終了した現在においても大学院重視の立場から重点化が模索されている。
大学院重点化の目的は、1980年代に大学への予算配分が停滞したことに対し、学生定員を変えることなく、国からの予算を多く引き出すことにあった。当時の国立大学の予算である積算校費は、学生数を基準に計算されていたが、同じ学生でも、学部学生と大学院学生とでは一人あたりの積算校費に大きな差があるため、学部学生の定員を大学院学生に振り替えることによって、大学全体での国から支給される総額が増えることなる。
従来の国立大学は、学部を基礎に教育研究組織が作られ、大学院は学部に付加されるものとされてきた。具体的には、教官は学部の教官であり、大学院を兼務することになっていた。大学院重点化された大学では、教官は大学院の教官となり、学部も兼務するということなった。どちらを本務とするかだけの違いにすぎず、実質的には教育研究上の役割にほとんど違いがないにもかかわらず、積算校費だけが大きく増えるという「からくり」であった。但しかかる意味での「大学院重点化」は上記12大学の全ての学部において行われたわけではなく、一部の大学においては学内措置として教員の所属を大学院に配置換えしただけの学部、研究科もある。
いいことづくめのようであるが、学部定員を大学院定員に振り替えて大学院定員を急激に増加させたため大学院生の質の低下を招いたとも言われる。また、就職先の増加がないままの、研究者の卵である博士課程学生定員の急激な増加は、大学院の博士課程(博士後期課程など)の修了者(課程博士)の余剰を加速させ、若手研究者に深刻な就職問題を引き起こした(余剰博士)。そのため、大学院重点化は上述の大学、特例としての医学系研究科などや例外的に若干の医学部等以外は、実施に移されないまま、国立大学の法人化がなされることになり、結果的に、文部科学省による一部有力国立大学の優遇策になっただけという批判もある。
[編集] 関連項目
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