失神
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失神(しっしん、syncope;シンコピー)とは、脳の血流低下により、一過性に突然意識を失うことである。転倒して重大な外傷を負う危険が大きいが、ヒステリーの場合はほとんど外傷は生じないことが多い。
失神の発作による意識消失は、ごく短時間であり、後遺症が残ることはない。通常、失神が起こる前に、目の前が真っ暗になる感じや、めまい感、悪心などがあり、その後顔面蒼白となり、ついに意識が消失する。また、失神の発作は、立っている時に起こることが多い。
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[編集] 主な失神
- 血管迷走神経反射性失神 最も頻度が高く、健康人にも起こる。若年者に多い。強い痛みや精神的ショックや情緒的ストレスが誘引となり、交感神経の活動が亢進、頻脈が起こる一方、静脈床に血液が貯留する。このため静脈還流量が減少し、逆に副交感神経が優位となり、血管拡張・徐脈となり、脳血流が低下、失神が起こる。病歴・身体所見には異常を認めない。臥位ではまず起こらない。
- 心臓性失神 心拍出量の減少により脳血流が減って起こす失神。原因疾患は多く、洞不全症候群・房室ブロック・上室性頻拍・心室頻拍・心停止・大動脈弁狭窄・肥大型心筋症・急性心筋梗塞・ファロー四徴症・左房粘液腫などがある。
- 起立性低血圧 薬剤やニューロパチーなどによる自律神経異常があることが多いが、基礎疾患として糖尿病やパーキンソン病などがあることもある。
- 頚動脈洞性失神 頚動脈洞が過度に過敏な場合、頚部の刺激によって起こる。ネクタイを締めたり、後ろを振り向いたりするだけで起こることもある。50歳以上の男性に多い。頚動脈洞の圧受容器の圧迫によって、副交感神経が興奮し、房室ブロックや洞停止、血管拡張を起こすことによって失神する。
- 胸腔内圧上昇による失神 遷延する咳発作の持続中や直後にみられる咳失神は、基礎に慢性閉塞性肺疾患を持つ男性に多い。他に、前立腺肥大症や膀胱通過障害を持つ男性に多い、排尿中や排尿後に起こる排尿失神等がある。
- 過換気症候群 過換気による動脈血炭酸ガス分圧低下により脳血管の収縮がおこり、そのために脳血流が減少して起こる失神である。めまいを起こすが失神にまでは至らないことが多い。
- 脳血管系異常による失神 椎骨脳底動脈循環不全や、脳底動脈型片頭痛でも失神が起こることがある。脳底動脈型片頭痛では、脳幹障害症状や錯乱も見られ、思春期の女性にまれに起こる。
[編集] 失神を来す疾患
[編集] 頻度
失神患者は、救急室受診者の3%を占める。一般の市民を対象としたFramingham Studyによると、26年間に失神歴を有した人は、男性3.0%、女性3.5%であった。