ネクタイ
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ネクタイ (necktie) とは、首の回りに装飾として巻く布のことである。タイ (tie) とも通称され、俗称でスカーフ (scarf) とも呼ばれる。ビジネスマンの服装としてほぼ必須の装飾であり、父の日のプレゼントとしても良く用いられる。発祥の地はクロアチアとされる。なお、英語ではタイ(tie)と呼ぶことが多く、「ネクタイ」は一般的ではない。
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[編集] 歴史
一説によると、2世紀頃のローマ帝国では兵士が防寒を兼ねて羊毛の布を首の回りに巻き、また弁士はフォーカルと呼ばれる布をのどの保護のために巻いていたといわれている。
現在のネクタイの原型は、17世紀、フランスでルイ14世が、クロアチアの兵士がルイ13世を守るために来た際に、首に布を巻いていたことに興味を示し、側近の者に、首に巻いている布を指差し「あれは何だ?」と尋ねたところ、クロアチアの兵士について尋ねられたと勘違いした側近の者が、「クロアチア兵(クラバット)です」と答えた為、クラバット (cravat) と呼ばれた、という説があるが、14世紀にはすでにフランスでcravateという語は使われていたともいわれる。現在でもフランス語などではネクタイをcravateと呼ぶ。またこれから18世紀にかけて、クラバットに限らず首に布を巻くスタイルは兵装としても用いられ、一般に広まった。
この形のクラバットは第一次世界大戦頃までの一般的な男性の正装となる。
19世紀後半に、イギリスでクラバットの結び目のみを残したものが作られた。これが蝶ネクタイである。アスコットタイ、ダービー・タイがアスコット競馬場に集まる際の服装として生まれ、正装になったのもこのころである。
同時期に、現在の主流となるネクタイと同じ形である"フォア・イン・ハンド・タイ"が生まれる。プレーンノット(後述)を別名"フォア・イン・ハンド" (four-in-hand) というのはここから来ている。発祥については諸説あり、"フォア・イン・ハンド"とは4頭立ての馬車のことであるところから、御者の間でこのネクタイが使われたことから広まったという説や、オスカー・ワイルドがこのネクタイを考案したという説がある。
日本では、ジョン万次郎が米国から帰国した際の所持品にネクタイがあったことから、彼が日本で初めてネクタイをした者であるとされる。維新後の明治政府は洋装を積極的に推進し、官僚を中心にしてネクタイ着用が広まっていった。
[編集] ノット
ネクタイの結びを、ノット (knot) と呼ぶ。
結び目が小さくなるプレーンノットやスモールノットは太いネクタイに、また逆にウィンザーノットは細いネクタイに適しており、また体格によっても似合うノットは変わってくる。儀礼用のノットやくだけた場にふさわしいノットもある。
1990年代後半にケンブリッジ大学のキャヴェンディッシュ研究所の2人の研究員が、数学的にネクタイをモデル化し、85通りのノットが出来ると発表している。
また最近では、結ぶのが苦手な人の為、また警察官が相手から危害を加えられる(細い方を引くと締まる)のを防ぐ為に、既に結び目が出来ていて紐やフックでワイシャツに固定するワンタッチタイプ、ホックで止めるタイプもある(輪の部分はなく、引っ張ると外れる)。
[編集] 主なノット
- プレーンノット: 別名をフォア・イン・ハンド。この形のネクタイの呼び名から来ているが、ネクタイの結び目からの長さを手4つ分に、とのことでこう呼ぶと説明する者もいる。
- シェルビーノット (Shelby Knot,Pratt Knot)
- ウィンザーノット: ウィンザー公(エドワード8世)が流行させたとする風説が今でも根強いが、ウィンザー公自身が回想録「家族のアルバム」でこの説を否定。ボリュームのある結び目ができる。
- セミウィンザーノット:ウィンザーノットより少し小さい結び目ができる(結びを一回省く)。ハーフウインザーノット、あるいはエスカイアノット(esquire knot)とも呼ばれる。きれいな逆三角形の結び目となるため人気のあるノットである。
[編集] 種類
通常のフォア・イン・ハンド・タイの変形
- 角タイ
- カットタイ
- ツインタイ
細めのもの
- リボンタイ
- ループタイ
太目のもの
- ボヘミアンタイ
その他
- ボウタイ
ネクタイを掴まれた時、首を絞められるという危険性がある。このため警察官や軍人用向けのネクタイでは結び目は予めデザインとしてのみの役割を果たし、後ろでホックで止める様式がとられることが多い。
ネクタイの太さは年代によって異なり、1950~60年代は細目が、1970年代は太目が流行した。
[編集] 作り方
フォア・イン・ハンド・タイの主な構成要素は、表地、芯地、裏地からなる。通常は、そのほかに小剣通しという小さな長方形の布を用いる。これらのセットも販売されている。縫うために、穴糸という太い糸も用いる。 構造は、表地を筒状に縫い、両端を剣状にして裏地を張り、芯地を閉じ込めた形になっている。表地も芯地も平織りの生地から正バイアス(45°斜め)に採り、締めたときに伸びるようになっている。 少数生産の場合の表地は、長方形の生地を1つの対角線から少しずらして斜めに2等分してできた片方の台形を用いる。切断した側から順に、斜めに、大剣部、小剣部、中はぎ部を採る。
- 表地の大剣部、中はぎ部、小剣部をこの順にはぎ合わせて、直線状の表を作る。
- 芯地も同様に、大剣部、中はぎ部、小剣部をはぎ合わせる。
- 表の両端を剣の先端状に整形し、裏側に少し折り込んで、角を縫って止め、小さな裏地を付ける。
- 芯を表でくるみ、端から端まで1本の穴糸で縫い合わせる。
- 穴糸の両端付近に、別の穴糸で「かんぬき止め」をする。
- 大剣中央に小剣通しを付ける。
[編集] ノーネクタイ運動
関東以南の日本においては、夏の期間中は熱帯以上に暑いこともあるため、ネクタイに背広を着用して働くのは過剰冷房を招き、エネルギー浪費や健康を害するなどマイナス要因が強いとして、ノーネクタイ、上着なしで過ごそうという動きがある。その一環として2005年より小泉内閣の呼びかけでクール・ビズ運動が始まった。しかし、ネクタイ業界からは「ネクタイのイメージダウン、売り上げ減につながる」としてこれに反発する声もある。
[編集] ネクタイの日
10月1日。小山梅吉が1884年(明治18)のこの日に初めてネクタイを生産したことを記念して、日本ネクタイ組合連合会が1971(昭和46)年に制定した。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- ネクタイの結び方
- ネクタイの歴史
- ネクタイの結び方 ネクタイの結び方を漫画で紹介するサイト
- Tie-a-Tie.net ネクタイの結び方を図解するサイト(英語)
- ネクタイの総合百貨店多数のネクタイがおいてあるミュージアム的なサイト