新品
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新品(しんぴん)とは、生産者の手によって製造され、場合によっては梱包された状態のまま、まだ消費者等の第三者の手に触れられていない(販売された事の無い)工業製品(耐久消費財)を指す。反対語には中古がある。
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概要
これに属するとされる工業製品は、まだ消費者によって利用されたことの無い物である。工業製品のメーカーは、商品を出荷する際、それらの製品が輸送の際にキズ・汚れが付かないように梱包するなどして、消費者との仲介を行う商店に送り出すが、これら包装材に包まれたまま、消費者の手に渡るのが一般的である。
俗に「女房と畳は新しい方が良い」等と言う考えも在るが、一般的に新品の状態にある工業製品は、そうでない工業製品に比べ、消費者に好まれることから、日本のメーカーでは特にキズ・汚れ等が付かないよう、細心の注意が払われている。他方、機能に何等問題が無くとも、新品であるはずの工業製品にキズ・汚れ等を発見し、これにクレームを付ける消費者も、日本では度々見受けられる。
一部の国・地域では、そのようなキズ・汚れ等は製品の機能に差し障りが無いとして、メーカー自身にも余り気にされない場合もある。米国では1980年代までそのような風潮が見られ、日本向けの製品(自動車や家電製品)にも度々に製造上のキズも見られたため、輸入した商社に日本の消費者からクレームが入る例も見られたという。なおこれを改善した所、製造段階に於ける製品の扱いに対する注意が増し、不良品の発生率減少が起こったとされる。
新品の尊ばれる理由
新品の製品は、設計の上で最も性能が発揮できる状態に在ると考えられている。これは製品がまだ、磨耗や汚れなどによる性能上の問題を被らないためである。他方、消費者にとって新品は、まだ誰にも使用されて居ないものを初めて使う喜びがあるとされ、特に新品状態を好む消費者も見られる。
一部ではそれら新品の持つ「まだ微かに残る乾ききっていない塗料の臭い」や「保護に使われていた発泡スチロールなどの緩衝材の臭い」、または「キズ一つ無い表面」にフェティシズム的な喜びを憶える人もあるという。所謂「新品フェチ」は兎も角としても、他人の作った汚損などによって不快感を被る心配の無い新品は、消費者にとって一定の好ましいイメージを喚起するとされる。
これらは偏に「クリーニングしたてのシャツに袖を通す瞬間の喜び」等に見られる、清潔さへの欲求に近しい物があり、一部の病的に雑菌などを忌避する向きには、他人の手垢(穢れ)のないものとして、これら新品に対する熱烈な欲求も見られる。
やや忌憚の無い言い方をすれば、たとえメーカーが被せた梱包のビニールがあっても、食品でも無い限りはこれを梱包した労働者らが少なからず手を触れている筈なのだが、前出の清潔さを求める向きにあっては、この梱包の下の製品は無菌状態だと誤解しているケースまで見られ、これが偶々ホコリが付着していたり虫が入り込んでいた場合には、クレームとなって現れる場合も見られる。
新品の問題点
これら新品は、工場で生産された際に、一応の動作チェックも行われているが、精密機器の場合では、一定期間使用していないと発現しない欠陥がある場合も見られる。
一般にこれは家電製品やコンピュータ製品の場合、一ヶ月程度の日常的使用によって発生しうるとも言われているが、概ね製造後1年未満で発生する故障や動作不良は、製造上の問題に拠る所が大きいと言われている。このためメーカーでは製品に補償期間を設け、その期間は無償修理に応じる場合が多いとされる。
ただ消費者の手に渡ってから1年未満であるため、販売店の店頭で保証書が正しく記入されて居ない場合、この無償修理に応じられないケースもあり、特に量販店(ディスカウントショップなど)では稀に保証書への記入が省かれる場合もあるため、消費者にも注意が必要とされる。
他方では、新品の状態では設計段階における最大能力が発揮できない製品もある。自動車のエンジンなどがその最も顕著な例で、一定走行距離の間は、慣らし運転と呼ばれる、やや控えめの操作が求められている。これは内部装置の潤滑がまだ不完全であったり、一定期間動作させないと、部品の組み合わせが馴染まなかったり、また燃焼によって発生する酸化膜の形成などが性能を発揮するために不可欠であったりする場合である。
このような扱いをエイジングとも言うが、これをきちんと行った製品は、新品状態に比べ、焼き付きを起こし難い等の利点があるとされている。
関連項目
- 今日ではリサイクル活動の活発化により、製品的には新品でも、素材的には中古という物も見受けられ、これらはリサイクルに熱心な向きから、環境にやさしいと評価されている。
- 新品を尊ぶファッション様式である。